あらすじ(ネタバレあり)
第12話の舞台はデビルガンダムの目撃情報があった東京・新宿blog.goo.ne.jp。主人公ドモン・カッシュとパートナーのレインは謎の量産型モビルスーツ「デスアーミー(デスビースト)」の大群に襲撃され窮地に陥ります。そこに颯爽と現れたのが、ドモンの武術の師匠であり先代のキング・オブ・ハート(シャッフル同盟)の一員でもある伝説の男、東方不敗マスター・アジアでしたblog.goo.ne.jpmagmix.jp。新宿の都庁付近で合流した師弟は、避難民たちを守りながら共闘し、押し寄せるデスアーミー軍団に立ち向かいます。
マスター・アジアは生身で次々とデスアーミーを撃破する超人的な強さを披露blog.goo.ne.jp。ドモンのハチマキ(鉢巻)をムチのように伸ばして敵MSの首をへし折りblog.goo.ne.jp、放たれた銃弾を素手で受け止めて逆に銃口へとねじ込みmagmix.jp、さらにはMSごと瓦礫を持ち上げて投げ飛ばすなど規格外の戦闘力を見せつけますmagmix.jp。彼はなんとドモンのコアランダー(小型車)と同等の速度で走り抜けblog.goo.ne.jp、囲みくる敵を圧倒しました。その圧巻の強さに加え、デスアーミーを誘き寄せる“ハーメルンの笛吹き”の話を説明する際には自らの長い髪を笛に見立ててみせるユーモラスな一面も垣間見せますblog.goo.ne.jp。
デスアーミーの猛攻を退けた後、マスター・アジアはドモンに「共にデビルガンダムを追おう」と持ちかけますblog.goo.ne.jp。愛弟子との劇的な再会にドモンは感極まって膝から崩れ落ち、普段は見せない涙を流しましたnuryouguda.hatenablog.comblog.goo.ne.jp。師匠への絶大な信頼と慕情が伝わる名シーンであり、ドモンにとってマスター・アジアは実の親以上の存在だったことが伺えますblog.goo.ne.jp。こうして“新宿編”とも呼ばれる物語の新章が幕を開け、物語はここから連続したストーリーへと大きく動き出しますmagmix.jp。
しかし喜びも束の間、依然としてデビルガンダム本体やDG細胞(デビルガンダムが生み出す自己増殖細胞)の脅威は健在ですblog.goo.ne.jp。次回予告では、ドモンの良きライバルであったガンダムファイター達までもが謎の黒いガンダムに従いドモンを襲うという波乱の展開が示唆され、物語は一気に緊張感を増していきます。
登場キャラクター(マスター・アジア初登場演出とドモンとの関係性)
ドモン・カッシュ – 本作の主人公でネオジャパン代表ガンダムファイター。幼い頃からマスター・アジアに拳法を師事し、師弟というより親子同然の絆を結んだ間柄ですblog.goo.ne.jp。第12話では、行方不明だった最愛の師匠との再会に誰よりも心を動かされ、初めて人前で涙を見せるほど感情を露わにしましたnuryouguda.hatenablog.comblog.goo.ne.jp。それまで寡黙で不愛想だったドモンが、師匠の前では少年のように感情をあらわにする姿から、マスター・アジアの存在がドモンにとっていかに大きいかが伝わってきます。この出会いをきっかけに、ドモンは物語後半でさらに人間的な成長を遂げていくことになりますmagmix.jp。
レイン・ミカムラ – ドモンの幼馴染でパートナーの女性。第12話ではドモンと共に新宿に潜入し戦闘に巻き込まれます。マスター・アジアの強さとカリスマ性に圧倒されつつも、ドモンの身を案じてサポートしました。マスター・アジア初登場時には、突然現れた彼の実力と存在感に驚きつつも、ドモンが尊敬する師匠だと知り敬意を払います。レイン自身はファイターではありませんが、頭脳明晰でメカニックもこなす彼女の存在が、この新宿編以降ますます重要になっていきます。
マスター・アジア(東方不敗) – 本話の主役とも言える伝説の格闘家。ドモンの武術の師匠で、第12回ガンダムファイトの優勝者でもありますblog.goo.ne.jpja.wikipedia.org。年齢49歳にしてなお驚異的な身体能力を誇り、生身でモビルスーツを破壊する超人ぶりはファンの度肝を抜きました。初登場シーンでは、デスアーミーの群れを相手にたった一人で無双する圧巻の演出で、その強さと風格を強烈に印象付けますnuryouguda.hatenablog.commagmix.jp。彼はシャッフル同盟の前リーダーであり、「キング・オブ・ハート」の称号を持つ人物でもありますja.wikipedia.org(この称号は後にドモンに受け継がれます)。
マスター・アジアとドモンの関係性は単なる師弟以上で、ドモンにとって彼は精神的な父親でしたblog.goo.ne.jp。8歳の頃に出会ったドモンを拳法の道に導き、その人格形成にも大きな影響を与えていますja.wikipedia.org。第12話での再会シーンでは、マスター・アジアは涙を流すドモンに「何を泣いているのだ」と優しく語りかけ(※セリフは描写からの推測)、不器用ながらも弟子を想う師匠の愛情が垣間見えました。師匠の懐に飛び込み号泣するドモンをそっと受け止める姿は、多くのファンにとって忘れられない名場面ですnuryouguda.hatenablog.com。
しかし物語上、マスター・アジアはこの先ドモンの宿命のライバルへと転じていく重要人物でもありますja.wikipedia.org。序盤は共に行動しつつ、その裏で不穏な行動を取る謎めいた存在として描かれ、徐々に真意が明かされていく展開は視聴者を惹きつけましたmagmix.jp。師匠が味方から敵へと立ちはだかるドラマはドモンの成長物語の大きな軸となり、マスター・アジア自身も「Gガンダム」の影の主人公とも称される存在感を放っていますmagmix.jp。
登場モビルファイター(クーロンガンダムのデザイン・武装など)
GF13-001NH クーロンガンダム – マスター・アジアが搭乗するネオホンコン製モビルファイター。第12回ガンダムファイトで彼が優勝した際の機体であり、本エピソードでも新宿で共闘する場面に登場しますgundam.wiki.cre.jp。外観は重厚で恰幅の良い巨漢の武将のようなデザインで、全身に中華風の意匠や「九龍」を象徴する龍のエンブレム(胸部の赤い意匠)を備えていますdatenoba.exblog.jp。その名の通り香港の「九龍」を冠した機体で、中国武術の達人であるマスター・アジアのイメージに相応しい風格を湛えています。
デザイン面で特筆すべきは、重装甲と高可動域の両立です。クーロンガンダムは外見こそ古代中国の武将を模した重厚な体躯ですが、内部フレームは人体の骨格を精密に模倣して設計されており、非常にしなやかな格闘動作を可能にしていますgundam.wiki.cre.jpdatenoba.exblog.jp。その運動性能はマスター・アジアの武術の動きを完全トレースすることを主眼に作られており、実際に第13回大会でもほぼ無改修でエントリーされたほど完成度が高い機体でしたgundam.wiki.cre.jp。重量7.2tと比較的軽量ながら頭頂高16.7mの巨体を自在に操るその姿は、さながら格闘戦に特化した武人ガンダムといえますdatenoba.exblog.jp。
武装面では射撃兵器は最低限に抑えられています。両肩に内蔵されたマシンキャノン(機関砲)が固定武装としてありますが、マスター・アジア本人が「拳ひとつで十分」という主義のためほとんど使用されませんgundam.wiki.cre.jp。代わりに特徴的なのがクーロンクロスとも呼ばれる布状のビーム兵器ですgundam.wiki.cre.jp。これは機体の手首部からビームで生成される布帯のような武器で、マスター・アジアが得意とする布術を再現したものです。彼の愛用する腰布(マント)と連動して発生するこのビーム布は、自在に伸縮して敵機を絡め取ったり、時にはビームサーベルのように対象を両断することも可能な優れものですgundam.fandom.comgundam.fandom.com。劇中でもマスターは生身でハチマキを操るように、このクーロンクロスを巧みに扱い敵MSを翻弄しました。
なお、クーロンガンダムの操縦方式は他のモビルファイター同様モビルトレースシステムによりますが、マスター・アジアは専用パイロットスーツを着用していない点が特異ですblog.goo.ne.jp。通常ガンダムファイターはファイティングスーツと呼ばれる特殊スーツを着て操作しますが、マスターは初期ガンダムファイトで用いられた古い技術を活用し、自身の普段着にその機能を組み込んで戦っていますgundam.fandom.com。彼の道着風の服そのものが戦闘スーツ代わりとなっており、それでも動きに一切の遅れがないのは驚異的です。
劇中、第12話でドモンのシャイニングガンダムとクーロンガンダムは協力して新宿を蹂躙するデスアーミーの群れと戦いましたgundam.wiki.cre.jp。都庁を防衛すべく並び立つ両機の姿は圧巻で、シャイニングガンダムとの合体技(後述)も披露されます。しかし物語が進むと、クーロンガンダムにはある秘密が隠されていたことが明らかになります。それは第13回大会時、マスター・アジアが新たに駆る真の愛機マスターガンダムがクーロンガンダムに偽装していたという事実ですgundam.wiki.cre.jp。新宿での戦いの最中、マスターの悪事の発覚とともにクーロンガンダムの外装が割れ、その下から漆黒のマスターガンダムが姿を現す展開は衝撃的でしたgundam.wiki.cre.jp。クーロンガンダムはいわば彼の旧機体の姿を模した“殻”であり、マスター・アジアはその陰で新型機を用意していたのです。この偽装は師匠が隠していた真の目的とも関わっており、物語のキーポイントとなりました。
技・演出
本エピソードでは、シリーズ屈指のド派手な技と演出が次々と繰り出されます。まず観客を驚かせたのは、マスター・アジアの徒手空拳でのMS撃破シーンでしょう。彼は冒頭からデスアーミー相手に常識破りの戦闘を展開します。以下にマスター・アジアが披露した主な離れ業をまとめます。
- ハチマキ首狩り:ドモンの頭に巻いていた鉢巻きをするりと抜き取り、それを何十メートルも自在に伸ばしてデスアーミーの首(頭部)に巻き付け、一瞬でねじ切りましたblog.goo.ne.jp。布切れ一つでMSの装甲を紙のように引き裂く離れ業に、ドモンはおろか視聴者も度肝を抜かれます。
- 超人的スピードと怪力:マスターは地上を走り抜け、その速度はドモンのコアランダーに匹敵するほどblog.goo.ne.jp。さらに被弾して倒れたデスアーミーが乗った巨大な瓦礫を両腕で持ち上げて放り投げるパワーまで見せましたmagmix.jp。50トン近いMSを物ともせず投げ飛ばす様は、もはや人智を超えたスーパーヒーローの如き演出です。
- 手刀で銃弾キャッチ&リターン:猛攻を仕掛けてくるデスアーミーの放った大型機関砲の弾丸を、マスター・アジアは素手の手刀で受け止めましたmagmix.jp。しかもその弾丸を握り潰すどころか、そのまま相手の銃口へと押し戻して暴発させる離れ業!ミサイルすら掴んで投げ返しかねない彼の怪腕にはただ唖然とするばかりです。
- 謎の発火現象:敵MSから這い出したDG細胞に侵されたパイロット(ゾンビ兵)に向け、マスター・アジアが手を一閃すると、なんと相手の身体が業火に包まれて燃え上がりましたblog.goo.ne.jp。直接触れていないのに相手を発火させるこの現象は、彼の気功のような能力とも示唆され、東方不敗の奥義の神髄を感じさせます(直後にマスター自ら「亡骸は焼いておくか…」といった様子で火を放ったとも取れますが、詳細は劇中描写のみで明言はありません)。
極めつけは、ドモンとマスター・アジアが師弟タッグで繰り出した究極の合体技です。劇中後半、あまりの敵の多さに「一機一機に構っていては拉致があかん!」と判断した師匠は、「あれをやるかぁ!」とドモンに声をかけますdatenoba.exblog.jp。ドモンも即座に「はいっ!」と応じ、ここで発動されたのが有名な**「超級覇王電影弾(ちょうきゅうはおうでんえいだん)」でした。マスター・アジアが「流派!東方不敗は!」と号令するとドモンが「超級!」、マスターが「覇王!」と掛け声を繋ぎ、両者揃って「電影弾!!」と絶叫datenoba.exblog.jp。シャイニングガンダムとクーロンガンダムが一体となったその必殺技は、自らを巨大な弾丸**に見立てて敵陣へ突撃するという破天荒極まりないものですdatenoba.exblog.jp。ドモンのシャイニングガンダムが弾丸役となり、マスター・アジアがそれを後押しする形で超高速回転させて撃ち出したとも解釈でき、周囲のデスアーミーはまとめて吹き飛ばされました(映像上は稲妻を纏ったエネルギー弾が発射され、その中に師匠の顔が浮かび上がるという衝撃的な演出で表現されていますblog.goo.ne.jp)。一度見たら忘れられないド派手な必殺技であり、これには作中アナウンサーも「見よ!東方は赤く燃えている!!」と興奮気味に叫んでいました(詳細は次章の名台詞で解説)。
演出面では他にも、マスター・アジアが不意に敵の策略を見抜いた際「策を弄しおって…!」と静かに怒りを滲ませる表情や、新宿の夜空に一瞬映し出されたデビルガンダムの幻影を睨みつけるシーンなど緊迫感溢れるカットが盛り込まれ、物語の転機に相応しいドラマチックな演出が光りますdatenoba.exblog.jpdatenoba.exblog.jp。第12話は作画面でも非常に評価が高く、当時若手だった木村貴宏氏(後に『ガオガイガー』『コードギアス』等のキャラデザインで有名)がテレビ初の作画監督を担当し、ファンも納得のクオリティを実現しましたmagmix.jp。徒手でMSと戦うという前代未聞のシーンに説得力を持たせた作画と演出陣の手腕も見逃せません。
名シーン・名セリフ
第12話「その名は東方不敗!マスター・アジア見参」は、シリーズの中でも屈指の名シーンと名セリフの宝庫です。中でも多くのファンの脳裏に焼き付いているのが、やはりマスター・アジアとドモンが初めて揃って放ったあの掛け声でしょう。
流派!東方不敗は… 王者の風よ!
全新系列!天破侠乱!!
見よ、東方は赤く燃えている!!magmix.jp
この一連の口上はマスター・アジアが創始した拳法流派「流派・東方不敗」の信条を示すもので、まさに彼の代名詞ともいえる名ゼリフです。師匠とドモンが声を揃えて叫ぶことで気合を高め、究極技「超級覇王電影弾」を繰り出す際の儀式のようなものですが、そのインパクトは絶大でした。視聴者も思わず画面の前で一緒に唱和したくなる熱さで、30年経った今でも「師匠といえばこの掛け声」と言われるほどですmagmix.jp。特に最後のフレーズ「見よ、東方は赤く燃えている!!」は、マスター・アジアの強さと信念を象徴する決めゼリフとして広く知られています。
もう一つの名シーンは、先述したドモンの号泣でしょう。新宿の廃墟でデスアーミーを殲滅した後、ドモンは感極まって「師匠…!」と叫びながらマスター・アジアの胸に飛び込み涙を流しますnuryouguda.hatenablog.com。普段は強がりで泣き言一つ言わないドモンが、この瞬間だけは完全に年相応の青年の姿に戻り、師匠の存在の大きさを物語りました。マスター・アジアも黙ってそれを受け止め、しばし肩を貸すシーンは感動的で、「ドモンにとって本当の父親のような存在だったのだな…」と視聴者に深い印象を残しましたblog.goo.ne.jp。
また、マスター・アジアが避難民の少年に語りかける場面での台詞も印象に残ります。敵の襲来に怯える子供に対し、「怖がることはない。このマスター・アジアがいる限り、お前たちに指一本触れさせはせん!」(※意訳)と力強く宣言するシーンは、彼の頼もしさが際立つ名台詞です。結果的にはこの“頼れる英雄”像が後の裏切り展開との対比で視聴者を驚愕させるのですが、初見では疑いようもなく「世界最強の味方が来てくれた」と胸が熱くなったものですnuryouguda.hatenablog.com。
さらに、第12話エンディング直前に挿入された次回予告ナレーションも忘れられません。これは次章で詳述しますが、「皆さん驚きです!」という煽り文句から始まる軽妙かつ緊迫した語り口で、視聴後の余韻をさらに盛り上げましたdatenoba.exblog.jp。このナレーションも実はマスター・アジア役の秋元羊介さん自身が“ストーカー”(語り部)として兼任しており、その意味でもファンにはたまらない演出でした。
総じて、第12話には**「Gガンダム」を象徴する名言**が凝縮されています。東方不敗の名乗り口上はもちろん、「お前がいて初めて成功した…」とドモンを讃えるマスターの言葉や、デビルガンダムの脅威に立ち向かう決意を示すドモンの叫びなど、熱いセリフが次々と飛び出しました。なかでも冒頭の掛け声と師弟の再会シーンは、シリーズ全体を通してもトップクラスに語り継がれる名場面です。
裏話・制作トリビア
● 名前の由来と初登場シーンの元ネタ: マスター・アジアの異名「東方不敗(とうほうふはい)」は中国の武侠小説『秘曲 笑傲江湖』の登場人物「東方不敗」に由来していますja.wikipedia.org。直訳すると「東方(=東の方角)は負け知らず」、すなわち「東洋無敗の男」という意味合いで、東洋人で最強の武人である彼に相応しい異名です。また企画段階からの仮称でもあったようで、作中では正式名の「マスター・アジア」と併用される形で定着しましたja.wikipedia.org。さらに第12話でのマスター・アジア初登場シーンは、香港映画『スウォーズマン/女神伝説の章』におけるブリジット・リン演じる東方不敗の登場シチュエーションをオマージュしていますja.wikipedia.org。黒装束の達人が圧倒的な武功で敵を蹴散らすあのシーンの再現は、当時の視聴者にはピンと来なかったかもしれませんが、監督の今川泰宏氏が仕込んだ粋な遊び心でした。
● 「流派東方不敗」の秘話: 作中で度々唱和される「流派!東方不敗は!王者の風よ!」から始まる決めゼリフですが、実は制作当時このフレーズは即興で生まれた経緯があります。今川監督のインタビューによれば、本来参考にしようと思っていた中国武術の奥義書「葵花宝典(きかほうてん)」の名前を失念してしまい、収録直前になって急遽それらしい漢字の羅列を考え出したのだとかtanpoko.s500.xrea.com。こうして生まれたのが「全新系列 天破侠乱」という耳慣れない言葉ですが、結果的に作品世界の雰囲気にマッチし、ファンの間では深い意味はわからずとも「なんか凄そうだ」と好評を博しました。「見よ、東方は赤く燃えている!」というフレーズも含め、勢いとノリで作ったとは思えない完成度で、まさに流派東方不敗=臨機応変のアドリブ重視という監督自身の演出スタイルが反映された裏話といえますtanpoko.s500.xrea.com。
● ヤマトガンダムからクーロンガンダムへ: マスター・アジアは元々ネオジャパン所属の日本人ファイターであり、第7回ガンダムファイトにGF7-013NJ ヤマトガンダムで出場したという設定がありますja.wikipedia.org(「ヤマト」は古称“大和”で日本を指す)。当時のリングネーム(本名)は「シュウジ・クロス」ja.wikipedia.org。ヤマトガンダムはシャイニングガンダムに似た外見で、ハートの紋章(キング・オブ・ハート以前の“シャッフル・ハート”)を持つ機体だったとされ、必殺技はハートフルフィンガーなる拳法奥義を使っていたとも伝えられますja.wikipedia.org。しかし大会中にDr.カオスという人物の陰謀を知り、それを阻止するため奔走した結果、決勝戦を放棄せざるを得なくなりましたja.wikipedia.org。そのためネオジャパンから失格・追放処分を受け、行き場を失った彼が流れ着いた先こそがネオホンコン(ネオ香港)だったのですja.wikipedia.org。ネオホンコンは才能ある彼を迎え入れ、第12回大会には自国代表としてマスター・アジア(東方不敗)を送り込むことになりましたja.wikipedia.org。つまり**「ヤマトガンダムからクーロンガンダムへ」**という機体と所属の変遷には、マスター・アジア自身の信念と闘いの軌跡が色濃く反映されているのです。このエピソードは公式外伝漫画『機動武闘外伝 ガンダムファイト7th』などで語られており、彼がなぜ祖国を離れネオ香港のファイターとなったのか、その背景に触れることができますja.wikipedia.org。祖国・日本の名を冠したヤマトガンダムを捨て、新天地・香港の九龍の名を背負ったことは、マスター・アジアにとっても苦渋の決断だったのでしょう。
● 監督や声優陣の裏エピソード: 総監督の今川泰宏氏は、マスター・アジアというキャラクターの存在が「Gガンダム」の成功を大きく支えたと述懐しています。実際、今川監督はレーザーディスク収録のインタビューで「マスターのおかげでGガンは成功した」と語っておりdaisanhinanjo.nobody.jp、シリーズ中盤での東方不敗登場が作品の人気を決定づけたことが窺えます。事実、第12話までのドモンは寡黙で尖った性格でしたが、師匠という強烈な存在が現れたことで感情豊かになりキャラクターとしての魅力が引き出されていったと分析する評者もいますmagmix.jp。
声優面では、マスター・アジア役の秋元羊介さんの熱演が特筆されます。秋元さん自身、「ストレスの残らない役者冥利に尽きるいい役で、楽しんで演じることができた」とマスター役について語っており、同時に担当したナレーション(ストーカー役)との二役も「しんどいと思ったことはなかった」と振り返っていますja.wikipedia.org。彼は最終決戦でマスター・アジアが力尽きる場面についても「彼なりによくやりきった、東方不敗をまっとうしたのではないか」とキャラクターの生き様に太鼓判を押していますja.wikipedia.org。
また、第45話「さらば師匠!マスター・アジア暁に死す」でマスター・アジアの最期が描かれた際、今川監督は感極まってしまったのか、絵コンテのラストシーンにまだ最終回でもないのに思わず「完」の文字を書いてしまったという逸話も有名ですja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。後で本人も「東方不敗の呪いかな(笑)」と冗談めかしていましたが、それほどまでにスタッフにとってもマスター・アジアは特別な存在だったのでしょうja.wikipedia.org。
● 制作時代の背景: 本作は1994年放送当時、ガンダムシリーズの中でも異色のスーパーロボット路線として賛否を呼びました。しかしマスター・アジアの登場によって「リアル志向が常識のガンダムシリーズに風穴を開けた」と高く評価されていますmagmix.jpmagmix.jp。素手でMSを倒すという規格外の演出は「ガンダムの固定概念をぶち壊した象徴」として語られ、以降もゲーム作品などでネタ的に再現されるなど、その影響は作品の枠を超えて広がりましたmagmix.jp。東方不敗マスター・アジアというキャラクターは、日本のみならず海外のファンにも強烈な印象を与え、現在でも“師匠”といえば彼を思い浮かべる人がいるほどですmagmix.jp。
解説・考察
「東方不敗」という異名の意味
マスター・アジアの異名「東方不敗」は先述の通り中国由来ですが、その意味を改めて考えると、彼のキャラクター性と深く結びついています。直訳では「東の方角に不敗なし」、転じて「東洋無敗」「東の最強」といったニュアンスになります。作中では“東方不敗”は彼が編み出した拳法の流派名でもあり、自らのリングネーム(異名)でもありますmagmix.jp。つまり彼は流派そのものの象徴であり、「東洋(地球側)の文明が生んだ最強の武人」であることを誇示しているわけです。マスター・アジア=東方不敗という図式は、ガンダムファイトという世界大会において「東洋vs西洋」の図式をも内包しており、実際に第12回大会では西洋代表とも言えるネオイングランド(ガンダムローズのジョルジュ)らの火器重視戦法に真っ向から異を唱え、己の拳で天下を取ってみせましたgundam.wiki.cre.jpdatenoba.exblog.jp。これは「武術の本場・東洋の力を示す」という意味合いもあったのかもしれません。加えて“東方不敗”は元ネタの小説では敵役の名前ですが、そのカリスマ的人気から映画では主役級の扱いを受けるキャラでした。マスター・アジアも物語上は一度悪役に転じる立場ではありますが、最終的にはドモンとの師弟愛に満ちたドラマが描かれ、ファンからはヒーローにも匹敵する人気キャラとして愛されています。文字通り“最後まで負けない(不敗)”生き様を見せた東方不敗マスター・アジアは、その名に違わぬ伝説的存在といえましょう。
クーロンガンダムの造形背景
クーロンガンダムのデザインは、メカデザイナー大河原邦男氏が中国武術の達人が操るガンダムというコンセプトのもと生み出したものですgundam.wiki.cre.jp。そのため三国志の武将や少林寺拳法僧を思わせる重厚なシルエットになっており、全身の緑と金のカラーリングや装飾も中華風のテイストが盛り込まれています。胸部の赤い模様は炎のようにも龍のようにも見え、まさに「東方は赤く燃えている!」を体現したデザインです。また“九龍”の名は香港を象徴する地名であり、作中でネオホンコン(香港)代表であることを強調しています。重装甲で一見鈍重そうに見えるのは、ネオイングランド勢の重火器ガンダム(ガンダムローズなど)へのカウンターとしての意図もあるでしょうgundam.wiki.cre.jp。「大きく重く見せておいて、実は俊敏に格闘戦をこなす」というギャップが、見る者に驚きとインパクトを与える狙いだったと考えられます。
前述のように、内部フレームは人体骨格を模しているという設定から、当時隆盛だったモーションキャプチャ的発想も垣間見えます(ファイターの動きを忠実にガンダムがトレースするという「モビルトレースシステム」の体現)gundam.wiki.cre.jp。実際、作中のクーロンガンダムの動きは他の機体にはない独特の“しなやかさ”が強調されて描かれており、人馬一体ならぬ人機一体の極致を感じさせます。
また、クーロンガンダムには第13回大会で新型マスターガンダムに取って代わられる運命がありましたが、その偽装の仕掛けも考察に値します。第12話〜第13話で、クーロンガンダムからマスターガンダムへ脱皮するように姿を現す展開は、実はマスター・アジアの思想ともリンクしています。すなわち「古い殻(人類の正義)を捨て、新しい力(デビルガンダムの力)に生まれ変わる」という彼の極端な思想が、旧ガンダムから新ガンダムへの換装になぞらえられているのです。クーロン(九龍)は9つの龍=多頭多面の象徴でもあり、一筋縄ではいかない彼の本心や策謀の暗喩とも捉えられます。デザイン的にはマスターガンダムとクーロンガンダムは全く異なる姿ですが、劇中では一瞬で入れ替わるように描かれたため多くのファンを驚かせました。制作サイドはおもちゃ販売の都合上、新ガンダムを登場させる必要がありつつ、物語上のサプライズも狙ってこのような趣向にしたのでしょう。結果として視聴者には「師匠は最初から黒いガンダム(マスターガンダム)に乗っていたのでは?」というミステリアスな印象を与え、以降の展開への興味を大いに掻き立てることになりましたgundam.wiki.cre.jp。
ヤマトガンダムからの変遷・ネオジャパン→ネオホンコンへの立場変化の理由
マスター・アジアことシュウジ・クロスの過去について掘り下げると、彼がなぜネオジャパンを離れネオホンコンの戦士となったのか、その理由が見えてきます。前述の通り、第7回大会でネオジャパン代表となった若き日の彼は、祖国の期待を背負い戦う中で世界の闇に触れましたja.wikipedia.org。Dr.カオス(ドクター・カオス)という人物の企みを知ってしまった彼は、それを阻止しようと正義感から行動します。しかしその結果、自らの勝利よりも世界の危機を優先したため大会を棄権し、ネオジャパン政府からは規律違反として見做され追放処分となってしまいましたja.wikipedia.org。信頼していた祖国に切り捨てられた彼の心境は察するに余りあります。その後流れ着いたネオホンコンで、彼はかつての自分と似た境遇の戦士達(シャッフル同盟)と出会い、武闘家としての理想を追い求める道を選びます。ネオホンコン首相のウォン・ユンファは彼の実力を高く買い、第12回大会で自国代表ファイターとして迎え入れましたja.wikipedia.org。
ネオホンコンへの“鞍替え”は一見裏切りのようにも映りますが、彼自身の語るところによれば「第12回大会当時、ガンダムファイトは銃火器偏重の方向に堕落していた。それを正すために拳で勝利してみせる必要があった」という信念があったようですgundam.wiki.cre.jp。すなわち、自分を追放したネオジャパンのためではなく、ガンダムファイトそのものの本質(拳による正々堂々の格闘)を取り戻すために、あえて仇敵のネオホンコンに与してでも闘い抜いたという解釈ができます。その証拠に彼は第12回大会で優勝し、見事に格闘戦の価値を世界に示してみせましたja.wikipedia.org。しかし皮肉にも、その過程で地球各地に甚大な被害が及び、人々の生活は荒廃してしまった…。この矛盾と罪悪感が、マスター・アジアをして「ガンダムファイトこそ人類を滅亡へ導く悪」と極論に走らせ、デビルガンダムの思想に傾倒させる一因となったのですja.wikipedia.org。ネオホンコンで彼が得た立場と権力は、後にウォン首相と結託してデビルガンダム復活を企む原動力にもなりましたja.wikipedia.org。
つまり、ヤマトガンダムからクーロンガンダムへ、ネオジャパンからネオホンコンへという変遷は、単なる所属変更に留まらずマスター・アジアの思想的転換の象徴でもあります。祖国のために戦った若き日の純粋な武人シュウジ・クロスが、世界の現実に絶望し、祖国を捨ててでも己の理想(あるいは野望)を遂げようとする東方不敗マスター・アジアへと変貌していった――その過程が機体や肩書きの変化に投影されているのです。裏設定を踏まえて本編を見直すと、師匠の言動一つ一つに重みが増し、また彼の葛藤や悲哀にも思いを馳せてしまいます。
筆者コメント(あとがき)
第12話「その名は東方不敗!マスター・アジア見参」は、リアルタイムで視聴した当時から筆者にとって特別な一本でした。子供心に「ガンダムで人がMSを素手で壊してる!?」という衝撃は凄まじく、まさにテレビの前でひっくり返ったものです。【素手でMS撃破】なんて他のガンダム作品ではまずお目にかかれませんから、そのインパクトたるや計り知れません。このエピソードを境に物語が一気に面白くなっていき、毎週の放送が待ち遠しくて仕方なかったのを覚えています。
改めて見返すと、演出や作画の熱量もさることながら、マスター・アジアというキャラクターの完成度に感服します。秋元羊介さんの重厚かつキレのある声の演技、堂々たる風格と時折コミカルな仕草のギャップ、そして“師匠”と慕われるに足る包容力と強さ…。彼が登場して以降、ドモンも作品自体も一段と輝きを増したのは間違いありません。今川監督が「マスターのおかげで成功した」と言った気持ちがよく分かりますdaisanhinanjo.nobody.jp。東方不敗の名台詞は今でも空で言えるくらい焼き付いていますし、あの掛け声を聞くだけで当時の興奮が蘇るほどです。
制作裏話を調べてみると、当時のスタッフの遊び心や情熱が随所に感じられてニヤリとしました。例えば、初登場シーンの香港映画オマージュや、セリフを急造したエピソードtanpoko.s500.xrea.comなど、知るともっと第12話が味わい深くなります。木村貴宏さんがこの回で作監デビューだったと知った時は「あの名シーンを手掛けていたのか!」と驚きましたmagmix.jp。まさに人も作品もスター誕生の回だったのですね。
筆者としては、本エピソードは**「これぞGガンダム!」**という魅力が凝縮された神回だと思っています。ヒーローの師匠が実は闇を抱えているという展開は王道ですが、マスター・アジアほど“敵になっても人気が落ちない”キャラも珍しいです。むしろ敵対してからも魅力が増す一方でした。ドモンとの最終決戦(第45話)は今なお伝説ですが、そのカタルシスを生むためのターニングポイントがこの第12話だったのでしょう。久々に視聴して、当時の熱い気持ちを思い出すと同時に、大人になった今は師匠の抱えた苦悩にも共感してしまい、また違った感動がありました。
これからも折に触れて「見よ、東方は赤く燃えている!!」と叫びたくなったら第12話を見返したいと思います。東方不敗マスター・アジアは永遠に不滅です。その雄姿と魂は、ファンの心にずっと生き続けるでしょう。
次回予告
〈皆さん驚きです!〉デビルガンダムの魔手はついにドモンのライバル達にも及ぶ!ネオアメリカのチボデー、ネオチャイナのサイ・サイシー、ネオフランスのジョルジュ、ネオロシアのアルゴ──恐るべきパワーを身につけた4人のガンダムファイター達が、なんと謎の黒いガンダムと共にドモンを襲ってきたではありませんか!datenoba.exblog.jp師匠・マスター・アジアの手中に陥りかけているドモンに、さらなる大ピンチ到来。しかも彼らは揃ってDG細胞に侵され、漆黒の機体マスターガンダムに傅いている始末datenoba.exblog.jp。一体何が起こったのか?ドモンに反撃の暇は与えられないのか?!
次回『大ピンチ!敵は5大ガンダム』!!レディー・ゴー!!
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