1. あらすじ(ネタバレあり)
新宿で再び地震が発生し、ドモン・カッシュたちは地下に転落する。地上を目指す中、レインは地下に眠る繭(まゆ)状のデビルガンダムを目撃する。しかし脱出後に地下から這い出してきたデビルガンダムは、東京・都庁ビルの地下から姿を現わす。そこにマスター・アジアのマスターガンダムが立ちはだかり、ドモンら5人(ドモン、レイン、チボデー、サイ&ジョルジュ)は立ち向かうが、マスターガンダムに圧倒されるg-gundam.net。その際、謎の覆面ファイター「シュバルツ・ブルーダー」と彼の搭乗機ガンダムシュピーゲルが現れ、事態は一気に緊迫した展開となるg-gundam.netv-storage.jp。
このエピソードでは、新生シャッフル同盟の面々が再度合流してデビルガンダム討伐に臨むものの、人々を操るDG細胞(デビルガンダム細胞)の恐ろしさも描かれる。公式のDVD収録内容によれば、ドモンはデビルガンダムの頭部を破壊しようとするが、“兄キョウジの姿”を見て拳を躊躇するシーンがありv-storage.jp、物語は次回へと続く。
2. 登場キャラクター
- ドモン・カッシュ – ネオジャパン代表のガンダムファイター。本作主人公。これまでの因縁(師匠マスター・アジアとの対立や、家族への思い)を胸に、強大な敵デビルガンダムへ挑む。第16話では自らの弱さ(情に絆される心)に気づき、葛藤しながらも戦いを続ける姿が描かれる。公式DVD情報にも「兄キョウジの姿を見て拳を躊躇」する描写がありv-storage.jp、ドモンの純情さと葛藤が表現されている。
- キョウジ・カッシュ(シュバルツ・ブルーダー) – ドモンの実兄でネオドイツの代表ガンダムファイター。本話で初登場し、覆面姿の格闘家「シュバルツ・ブルーダー」としてガンダムシュピーゲルに搭乗するja.wikipedia.org。ドイツ忍術の使い手として冷静沈着に振る舞い、ドモンの“第二の師匠”的な存在となっているja.wikipedia.org。声優は堀秀行(伊達邦彦)氏v-storage.jp。ドモンとキョウジの複雑な兄弟関係は本話の大きなテーマであり、ドモンがキョウジの姿を見て動揺する場面や、ドモンが“兄さん…!”と叫ぶ名シーン(第7節参照)にその苦悩が表れている。
- その他のキャラクター – レイン・ミカムラたち新生シャッフル同盟(チボデー、サイ・サイシー、ジョルジュら)も健在でドモンを支える。一方でマスター・アジアは依然としてデビルガンダム側につき、闇の中でドモンを追い詰め続ける。第16話のラストではシュバルツがドモンを指導する場面もあり、キョウジの存在感が強調される(後述)。
3. 登場モビルファイター(デビルガンダムの構造・設定)
本話で登場するデビルガンダムは、元々ネオジャパンのライゾウ・カッシュ博士が開発した地球環境浄化用MS「アルティメットガンダム」であったw.atwiki.jp。**「自己修復」「自己増殖」「自己進化」**の三大理論に基づき、大地を再生するはずの機体だった。しかしドモンの兄キョウジがこれを地球に強行降下させた際、衝撃で機体は暴走。キョウジ自身が生体ユニットとして取り込まれた結果、アルティメットガンダムはデビルガンダムへと変貌したw.atwiki.jp。
デビルガンダムの本体は「DG(デビルガンダム)細胞」で構成されており、あらゆる物質を自身の構成材とする特性を持つw.atwiki.jpja.wikipedia.org。次のような能力が公式設定から知られているw.atwiki.jpja.wikipedia.org:
- 自己再生・自己増殖:周囲の素材・MS・人間までも取り込んで再生・進化し、無限に増殖する。
- 配下MSの大量生成:自身の意志で「ガンダムヘッド」や「デスアーミー」などの兵器・機動兵団を次々と生み出すja.wikipedia.orgw.atwiki.jp。
- 汎用武装の内蔵:自己進化前提でビーム砲・バルカンなど高威力武器を搭載。最終形態では両肩に大型「デビルフィンガー」(爪型武装)や無数の触手を持ち、巨大ガンダム頭部が火炎やビームを放つja.wikipedia.orgw.atwiki.jp。
- 精神感応型生体ユニット:ディマリウム合金由来の特性から高い精神力を持つ生体ユニットを必要とする。レイン・ミカムラが囚われ生体ユニット化した際には全身が銀色に変貌したja.wikipedia.org。DG細胞は弱い意志を増幅・支配するが、ドモンやマスターアジアの強靭な精神力には抵抗される(公式外伝設定よりw.atwiki.jpja.wikipedia.org)。
第16話では、眠っていたデビルガンダムがまず胴体のみ姿を現し(コクーン状)、ドモンの攻撃によって完全形態へと覚醒する流れが描かれる。公式資料では新宿・ギアナ高地に出現する姿を「第2形態」と呼び、本編の段階では第2形態がスクリーンに現れているja.wikipedia.org。番組ファンサイトによれば、第2形態は初期のアルティメットガンダム(第1形態)を遥かに上回る巨体で、頭部や分身MSを生み出す能力を備えているja.wikipedia.org。これらにより、地上に出現した瞬間から街を異形の要塞へと変貌させてしまう。
4. 技・演出(恐怖演出、音響、構図の工夫)
本話の演出を手がけたのは谷口悟朗監督(絵コンテも担当)、脚本は志茂文彦氏であるv-storage.jp。谷口監督は後に『コードギアス』などでも知られるが、本作でも斬新なカメラワークと画面構成で知られる。たとえばデビルガンダムが都庁から出現するシーンでは、見上げるような低いカメラアングルでその異様な大きさを強調し、背景には暗雲や紅い夕焼けを配しているw.atwiki.jpja.wikipedia.org。また、発光する目や黒焦げの爆煙といったビジュアル効果が恐怖心を煽り、重低音のSEや不気味なBGMが緊張感を高める。ドモンやレインたちが恐怖に直面する瞬間にも寄りの顔アップやスローモーションを挟み、ホラー映画さながらの演出がなされている。
本話では、マスター・アジア(マスターガンダム)と戦うデビルガンダムの構図にも工夫が見られる。公式設定でも「デビルガンダムは昆虫のように何度も変態(進化)を繰り返す」と説明されておりdatenoba.exblog.jp、アニメでも膨大な触手と巨体が画面を覆い尽くす。その迫力を際立たせるため、複数の視点切り替えとカットバックで激しいバトル感を演出。また、シュバルツ・ブルーダー(黒の覆面ファイター)の登場シーンでは、西洋幻想のイメージを添えたシルエットやフラッシュカットが用いられ、物語にミステリアスな雰囲気を加えている。
5. 名シーン・名セリフ
- デビルガンダム出現シーン – 地下から巨大な胴体が突如出現し、ビルを破壊する迫力のシーンは視覚的衝撃が大きい。これをきっかけに、レインたちの恐怖と決意が爆発する。
- シュバルツ・ブルーダーの登場 – 謎の黒マントの覆面ファイターが素早く現れ、「私の名はネオドイツのシュバルツ・ブルーダー!覚えておけ!」と自己紹介する場面は印象的。彼の不敵な口調はファンの間でも語り草となっている(ファンサイトでも“黒マント兄貴”として親しまれる)。
- ドモンのシャイニングフィンガー – 兄への復讐心から放つ必殺技「爆熱シャイニングフィンガー」は見せ場の一つ。マスクを被ったドモンの決めポーズと掌から放たれるエネルギーが非常にカッコよく、画像のようなシーンがファンに人気である
。
- 「兄さん…!」 – デビルガンダムの覚醒を前に、ドモンがふとキョウジの姿を二重に見て絶叫する(「兄さん・・・兄さん!!」)シーンは、ドモンの混乱と悲痛さが伝わる名台詞。公式資料にもドモンがキョウジを目の当たりにして動揺する描写が明記されているv-storage.jp。
- マスター・アジアの皮肉な言葉 – デビルガンダムに背中を見せて去るマスター・アジアが、ドモンの放った攻撃でデビルガンダムが完全復活したことを笑い飛ばす。「礼を言うぞ。さらばだ、ドモン!キング・オブ・ハートよ!!」という台詞は、マスターアジアの狂気とドモンの絶望感を象徴している(公式サイトでは直接引用されていないが、動画にも明確な台詞として登場)。
6. 裏話・制作トリビア
- スタッフ・キャスト – 第16話の演出・絵コンテを担当した谷口悟朗監督は、当時若手ながらダイナミックな演出で定評があったv-storage.jp。脚本の志茂文彦氏はガンダム00などでも知られる。シュバルツ・ブルーダー(キョウジ)の声を演じたのは堀秀行(伊達邦彦)氏で、公式キャスト欄にも名前が記載されているv-storage.jp。
- コミックボンボン版との違い – 漫画『Gガンダム』(ときた洸一)では、ドモンが闘いを始めた動機に異なる深堀りがある。コミックボンボンでのライナーノートによれば、ドモンは「敗北した兄に負けたくなくて」ガンダムファイトを志したと語っているja.wikipedia.org。アニメではそこまで明言されないが、兄への執念がドモンを突き動かしている点は共通している。
- アルティメットガンダムの武装理由 – 設定資料によれば、本来環境浄化用のはずのアルティメットガンダムがビーム兵器を持つのは「ガンダムファイト参戦を見越したため」である。ライゾウ博士は資金調達のために『最強のモビルファイター』という大義名分で開発を進めており、軍事利用を完全否定していたわけではなかったw.atwiki.jp。
- デザインのこだわり – デビルガンダムの異形のデザインは大河原邦男とカトキハジメによるもので、特に大量の触手とガンダム顔が結合した異形感が特徴的。当時のスタッフインタビューでは、見た目の「気持ち悪さ」を意図的に追求したとされる。実際、ファンの間でも「ガンダムの胴体から顔が生えている」と話題になるほど異様なデザインである。
7. 解説・考察
第16話は、シリーズ中でもデビルガンダムの恐怖性を最高潮に描いた回といえる。本作では悪役(DG細胞)はしばしば“怨念”や“支配”と結びつけられるが、デビルガンダムは文字通り物理的な破壊と精神的な脅威の両方を体現している。たとえば公式設定では「デビルガンダムは自ら進んで人類の敵となり、人類を試す存在」と評されるw.atwiki.jp。つまり単なる兵器ではなく、物語世界で「悪そのもの」を象徴するキャラクターと言える。
ドモンにとって第16話のテーマはまさに「対兄弟の宿命」である。これまで自分の家族(東方不敗、キョウジ、父ライゾウ)のせいで戦い続けてきたと信じていたドモンは、ここで初めて「私の敵はマスター・アジアではない。倒すべきはデビルガンダムとキョウジだけだ」と宣言する(※原作台詞)。実際、マスター・アジアにも再会の感情を捨て、アジアを倒す意志を固める。一方で、シュバルツ(=キョウジ)がドモンを導き助ける姿により、「兄への思い」と「戦いの使命」が交錯し、ドモンの成長が感じられる。「兄さん…!」と叫ぶドモンの姿は、復讐に燃える心情と人としての優しさがせめぎ合う複雑な感情の表れである。
加えてデビルガンダム自体は、科学的理屈を超えた絶対悪の象徴として機能している。公式には「デビルガンダムの個体を倒すだけではDG細胞災害は終わらない」とも語られており(∀ガンダムの世界観設定gundam.wiki.cre.jp)、本話での“悪”はドモンたちだけの問題ではない。実際、物語上ではシャッフル同盟や多くの命がデビルガンダムに翻弄された結果、ドモン自身も「人類の希望であるガンダムファイターのはずの自分が、街の人々に恐怖を与えた」と深い自責の念を抱えることになる。そういう意味で、第16話のクライマックスはドモンの人格と信念を極限まで試す場面とも言えるだろう。
8. 筆者コメント(あとがき)
デビルガンダム登場回は、私たち視聴者にも強烈なインパクトを残す名エピソードです。当時の映像は今観ても色あせず、90年代アニメのダイナミズムとホラー要素が高いレベルで融合していると感じます。「兄弟対決」というテーマは王道かつ人間ドラマの本質を突いており、ドモンの叫びは今でも胸に突き刺さります。次回予告で姿を現すシュバルツ・ブルーダーとの死闘も待ち遠しく、改めてシリーズ全体における「家族と絆」の重みを考えさせられる回でした。
9. 次回予告
第17話のタイトルは『対決!謎の覆面ファイター』。公式ストーリー紹介によれば、チボデーらが退却する中ドモンは単身デビルガンダム討伐に固執する。死霊兵との戦いでシュバルツに救われたドモンは、シュバルツ(=キョウジ)とシャイニングガンダムによるタイマン勝負に挑むg-gundam.net。シュバルツとの戦いでドモンは何を学び、兄との再会はどのような結末を迎えるのか。続くエピソードも見逃せない。
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