1. あらすじ(ネタバレあり)
前話で新宿決戦を終えたドモンたち。仲間となったシャッフル同盟の面々(チボデー、サイ・サイシー、ジョルジュ、アルゴ)はそれぞれ戦意を失い、散り散りになってしまう。だが主人公ドモン・カッシュはただ一人、デビルガンダムを追い続けることを選んだ。
追跡の途中でドモンは、師匠マスター・アジアの愛機マスターガンダムに酷似した謎の機体「デスマスター」に奇襲される。デスアーミーの派生型であるデスマスターは外見こそ師匠の機体だが、性能は劣る囮機体。3機がかりでシャイニングガンダムを絡め取り、ドモンは大ピンチに陥る。
そこへ現れたのが、ネオドイツ代表を名乗る謎の覆面ファイター シュバルツ・ブルーダー。彼の愛機 ガンダムシュピーゲルが疾風のごとく乱入し、ドモンを救出する。忍者のような身軽さでデスマスター部隊を瞬く間に撃破したシュバルツは、ドモンに冷ややかな忠告を投げかけた。
礼もそこそこに、ドモンはシュバルツへガンダムファイトを挑む。こうして シャイニングガンダム vs ガンダムシュピーゲル の異色対決が勃発。だがドモンは序盤から翻弄され、必殺のシャイニングフィンガーも通じず、シュピーゲルの必殺「シュツルム・ウント・ドランク」によって完敗を喫する。
勝負後、シュバルツは止めを刺さずに一本の錆びついた刀をドモンに投げ与える。そしてその刀で大木を両断してみせ、「己の腕がどれほどのものか、この刀に訊ねるがいい」と言い残して去っていく。直後、伏兵のデスアーミーが襲撃してくるが、ドモンの怒りに呼応するかのようにシャイニングガンダムがスーパーモードを発動、シャイニングフィンガーで敵を殲滅する。
だがドモンは悟る。「なぜ必要な時には発動せず、求めぬ時に勝手に発動するのか?」――。彼は己の未熟さを痛感し、修行の必要性を改めて思い知らされるのだった。
2. 登場キャラクター
ドモン・カッシュ
新宿での敗北を経てなお、執念でデビルガンダムを追う主人公。だがこのエピソードでは、猪突猛進な性格が仇となり、シュバルツとの戦いで手痛い敗北を喫する。彼が口にする「俺にはスーパーモードがある!」という叫びは、自信というより未熟さの裏返し。ドモンはこの戦いを通じて、自分がまだ“力に振り回される段階”にあることを学ぶ。
シュバルツ・ブルーダー
ネオドイツ代表の覆面ファイターとして初登場。黒い仮面に風のような俊敏さ、忍術を思わせる戦法で視聴者を驚かせた。言葉少なながら核心を突く叱責を与える姿は、まさにドモンを導く“もう一人の師匠”。彼の正体が後に大きなドラマを生むことを、この時点でうすうす視聴者に予感させる存在感があった。
3. 登場モビルファイター
シャイニングガンダム
ドモンの愛機で物語前半の主役MS。スーパーモードを発動するも、シュピーゲル戦では制御不能のまま敗北。力を誇るだけでは勝てないことを痛感させられる。
ガンダムシュピーゲル
ネオドイツ代表MS。忍者的な設計で高い隠密性と機動力を誇る。両腕の シュピーゲルブレード、必殺技 シュツルム・ウント・ドランク はシャイニングを圧倒する。黒いボディと仮面を模したデザインは、登場時から強烈なインパクトを残した。
4. 技・演出
- 森の中での忍術戦 – 木々を利用した高速移動と奇襲。画面に残像だけを残す描写でスピード感を強調。
- 錆びた刀で大木を両断 – あえて刃が入る瞬間を映さず、結果だけ見せることで超人的技を演出。
- 必殺技のコントラスト – ドモンのシャイニングフィンガーは失敗、対してシュピーゲルのシュツルム・ウント・ドランクは一瞬で決まる。力と技の差を鮮やかに描いた。
- スーパーモードの皮肉 – 必要な時に発動せず、無駄な時に暴走する。この描写は「未熟さ」の象徴。
5. 名シーン・名セリフ
- 「嘘だぁ!俺はまだ負けていない!」(ドモン)
敗北を認められない若さと焦りが滲む台詞。 - 「己の腕がどれほどのものか、この刀に訊ねるがいい!」(シュバルツ)
錆びた刀で大木を両断した後の一言。ドモンへの試練であり、彼の哲学を象徴する名台詞。 - 「出た…俺のスーパーモード…でも何故っ!!」(ドモン)
力を制御できない苛立ちを露わにするシーン。成長への布石。
6. 裏話・制作トリビア
- ガンダムシュピーゲルのデザインは大河原邦男による。忍者モチーフとドイツを結びつける「ゲルマン忍術」という奇抜な発想は、監督・今川泰宏のアイデア。
- シュバルツ初登場回として、キャラ人気を一気に高めたエピソード。放送当時から「実はドモンの兄キョウジでは?」という憶測が飛び交った。
- コミックボンボン版では戦闘描写が大幅に簡略化され、シュバルツの哲学的台詞がより直接的に描かれていた。
7. 解説・考察
ドモンとシュバルツの戦いの意義
この戦いは単なるガンダムファイトではなく、ドモンが「己を映す鏡」としての相手に出会った瞬間である。シュバルツはドモンの未熟さを突き、敗北を与えることで成長を促した。
シャイニングガンダムの戦闘描写
ドモンは「力押し」に固執し、必殺のシャイニングフィンガーも通じない。演出上も、シャイニングの動きは直線的で重く、シュピーゲルは軽快かつ流麗。この対比で力量差を際立たせた。
師弟関係のモチーフ
シュバルツの立ち位置は、かつての師匠マスター・アジアに代わる“導き手”。彼は力ではなく技と心を重視し、ドモンに新たな成長の方向性を示す。「錆びた刀」の試練は、心の在り方次第で朽ちた武器も真価を発揮するという寓話的演出だった。
8. 筆者コメント(あとがき)
第17話は、Gガンダム中盤の大転換点であり、シュバルツという人気キャラクターの鮮烈なデビュー回。ドモンが初めて真正面から敗北し、自らの未熟さを思い知らされる姿は視聴者にも強い印象を残した。個人的には、錆びた刀のシーンが象徴的で「力に頼るな、心を磨け」という教訓が今でも心に響く。
9. 次回予告
次回、第18話「撃て!必殺の石破天驚拳」。
シュバルツの残した試練を胸に、ドモンは新たな奥義修得へ挑む。ついにシャイニングガンダムが真の力を解放する!?師匠マスター・アジアとの再戦に向け、ドモンの修行編が幕を開ける――。
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