第20話「ジョルジュよ、悪夢を打ち砕け!」徹底解説

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1. あらすじ(ネタバレあり)

デビルガンダムとの新宿シティでの戦い(第16~17話)以来、ネオフランス代表ジョルジュ・ド・サンドは悪夢にうなされ続けています。高貴な騎士である彼の心を蝕むのは、過去に起きた**「マルセイユの悲劇」と呼ばれる事件です。第13回ガンダムファイト代表選考決勝で対戦したジャン=ピエール・ミラボー**の卑劣な行為により、観客席への誤射で多数の犠牲者が出てしまいja.wikipedia.org、ミラボーは国家反逆罪で終身刑に処されることになりました。この残酷な記憶を封じ込めようとしていたジョルジュでしたが、新宿で遭遇したデビルガンダムの恐怖がその傷を再び呼び起こしてしまったのです。

心に悪夢を抱えたまま、ジョルジュは執事のレイモンドと共に次なる決戦に備え辺境のギアナ高地で修行を積んでいました。しかし悪夢の影響で集中できず、レイモンドを相手にしたフェンシング訓練ですら満足にできない有様です。レイモンドはジョルジュを案じ、ネオジャパン代表ドモン・カッシュに協力を求めます。彼は密かにドモンの仲間であり医師でもあるレインに事情を話し、ドモンとのガンダムファイトで愛弟子を叩き直してほしいと懇願しました。しかしこの独断がジョルジュの誇りを傷つけてしまいます。**「私はネオフランスのファイター…サンド家の名において、レイモンド・ビショップ、貴方を解雇致します!」**と、怒りに震えるジョルジュは長年仕えてきた忠義の執事をその場で解雇してしまいました。

傷心のレイモンドはギアナ高地の酒場で(彼らしくコーヒーをあおりながら)嘆きます。一方、ドモンやレインたちは「ジョルジュのことは放っておけ」と突き放すドモンに対し、「彼は貴方(ドモン)を頼ってここに来た。他のチボデーやサイ・サイシー、アルゴも皆集まっているじゃない」とレインが諭し、ドモンも仲間としてジョルジュを気にかけ始めます。

そんな中、事件が動きます。終身刑に処されたはずのミラボーが何者かの手引きで刑務所を脱獄し、宇宙を離脱して地球へ降下してきたのです。彼は自国ネオフランスの軍用シャトルを強奪し、自らの愛機ミラージュガンダムを駆ってジョルジュへの復讐に乗り出しました。ミラボーの憎悪は激しく、「奪われた代表の座の恨み、今度こそ決着をつけようじゃねぇか!」と一年越しの再戦をジョルジュに迫ります。しかも地球降下の際に東方不敗マスター・アジアと遭遇したミラボーは、自らDG(デビルガンダム)細胞の感染を受け入れて戦闘力を強化するという狂気の手段に出ていましたja.wikipedia.org

ギアナ高地に飛来したミラボーは、悪夢に苛まれるジョルジュにとってまさに“悪夢の亡霊”そのものです。ジョルジュは当初、幻影に怯えてガンダムローズをまともに動かせず、防戦一方に陥ります。DG細胞に侵されたミラージュガンダムは底知れない火力でミサイルを次々と発射しジョルジュを追い詰めました。愛機を傷つけられ、なおも戦慄で硬直するジョルジュの前に現れたのは、なんとあのレイモンドです。彼は旧式の自家用モビルスーツ「バトラーベンスンマム」に乗り込み、主人の盾となって駆け付けました。しかしポンコツ同然の機体では力及ばず、ミラボーの猛攻からジョルジュを庇ったレイモンドは機体もろとも吹き飛ばされ重傷を負ってしまいます。

「レイモンドォォッ!」ジョルジュの中で何かが弾けました。大切な執事を傷つけられた怒りで、ついに彼は悪夢の呪縛を振り払い、ガンダムローズで立ち上がります。今度は恐怖ではなく激怒に我を忘れたジョルジュは、超高速でミサイルの雨を切り裂き、ミラージュガンダムを徹底的に叩き伏せました。頭部を踏み砕き腕をもぎ取るという苛烈な攻撃に、止めに入ったドモンが「ジョルジュ、やめろ!その戦い方ではお前もデビルガンダムのようになってしまうぞ!」と叫ぶほどです。それでも怒りに突き動かされるジョルジュは止まりません。業を煮やしたドモンはシャイニングガンダムをハイパーモード(スーパーモード)に発動させて強引にジョルジュを制止しました。

そこへ奇跡的に生存していたレイモンドの声が響きます。「どうか拳を収めください!討つべきはミラボーではありません、あなたの心に巣食う悪魔です!」――ハッと我に返るジョルジュ。見ると眼前には瀕死のミラボーが…彼を今このまま葬れば怒りは晴れるのか?いいや、「そうだ…忘れるところだった!ガンダムファイターたるもの、心で戦わねばならぬということを!」。ジョルジュは己に言い聞かせると、胸のシャッフル同盟のエンブレムを高らかに掲げました。「シャッフルの証よ!もし私にその資格があるのなら、ミラボーからデビルガンダムの呪いを消し去れぇ!!」。彼の祈りに呼応するようにエンブレムが輝き、DG細胞に侵食され狂気に染まっていたミラボーの身体から黒き呪いが洗い流されていきます。かくしてジョルジュは憎しみに打ち勝ち、悪夢の元凶たる“心の悪魔”を打ち砕いたのです。

デビルガンダムの幻影も吹き飛び、正気を取り戻したジョルジュは、生身で倒れたミラボーを機体から救出しました。戦いが終わり、ジョルジュとレイモンドは改めてお互いの絆を確かめ合います。45年仕えた執事を一時の怒りでクビにした非礼をジョルジュが詫びると、レイモンドも「この命に代えてもジョルジュ様にお仕えします」と涙ながらに答えるのでした。悪夢を振り払い心身ともに成長したバラの貴公子は、仲間たちと共にガンダムファイト決勝大会へ向けて歩み出します。

2. 登場キャラクター(ジョルジュの内面描写と変化)

  • ジョルジュ・ド・サンド – ネオフランス代表ガンダムファイター。由緒あるサンド家の子息で騎士道精神に溢れる貴公子です。幼い姫君マリアルイゼとの婚約者でもあり、常に礼節正しく優雅な振る舞いで知られています。しかし新宿でのデビルガンダム戦以降、彼は“悪夢”に取り憑かれ本来の冷静さを失っていました。過去の「マルセイユの悲劇」のトラウマが再燃し、試合中も鬼気迫る形相で敵を叩き潰すような荒々しい戦い方に陥っていたのです。第20話冒頭でも、訓練用MS相手の模擬戦中にデビルガンダムの幻影を見て錯乱してしまい、どれほど深く心が傷ついているかが描写されました。そんな彼がミラボーとの再戦を通じて徐々に自分を取り戻していく様子は本話の見どころです。最初は怯え、次に怒りに飲まれましたが、**「心で闘わねばならぬ」**という自身の信条を思い出し踏みとどまったことで、本来の高潔さと騎士の誇りを取り戻します。結果的にジョルジュはトラウマを克服し、再び優雅で堂々とした戦士へと成長を遂げましたja.wikipedia.org。この経験は彼にとって大きな糧となり、以降の戦いでは心の弱さに打ち勝った強さが感じられます。
  • レイモンド・ビショップ – ジョルジュに仕える老執事。執事歴45年という大ベテランで、幼少期のジョルジュのおむつを替えたことすらある人物です。若かりし頃は剣の指南役でもあり、ジョルジュにフルーレ(レイピア)の手ほどきをした師匠的存在でもあります。レイモンドは騎士としてあるまじきジョルジュの不甲斐ない姿を見かね、忠義心からドモン達に助力を仰ぎましたが、それが逆にジョルジュの怒りを買ってしまうという不運に見舞われます。解雇を言い渡された際も「ジョルジュ様に剣の手ほどきをして差し上げたのはこの私ですぞー!」と体を張って進言する熱いハートの持ち主で、解雇後のやさぐれシーンでも酒ではなく**「コーヒーお代わり!」と注文する徹底ぶりがコミカルです。その忠義と愛情の深さは、命がけでジョルジュを守ろうとした行動に現れています。旧式MSバトラーベンスンマムで盾となり、瀕死の重傷を負いながらもジョルジュに「討つべきはあなたの心の悪魔です!」**と最後の助言を与える姿は、本話屈指の名シーンです。彼の献身がなければジョルジュは正気を取り戻せなかったでしょう。戦闘後、ジョルジュから正式に謝罪と感謝を受け、主従の絆は以前にも増して固く結ばれました。
  • ジャン=ピエール・ミラボー – ネオフランスの元ガンダムファイター候補生。本話の敵役です。かつてジョルジュと代表の座を競った実力者ですが、その戦法は**「観客を盾にする」という極めて卑劣なものでしたdatenoba.exblog.jp。代表選考決勝では常に自分の背後に観客席を抱える位置取りをし、ジョルジュのローズガンダムに武器(ローゼスビットなど)を使わせないよう画策する狡猾さを見せていますdatenoba.exblog.jp。この品性下劣な戦いぶりに激怒したネオフランスの国家元首(おそらくマリアルイゼの父である国王)は、勝敗を待たずその場でミラボーを失格処分にし、ジョルジュを代表に指名しました。逆上したミラボーは報復としてミラージュガンダムのミサイルを貴賓席に撃ち込むという暴挙に出て、多くの犠牲者を出してしまいます(これが「マルセイユの悲劇」です)。命だけは助かったものの国家反逆罪で懲役1000年を言い渡され、特殊刑務所に幽閉されていました。しかし第20話で脱獄し、「長かったぜぇこの1年!」と叫ぶことから、わずか1年程度で脱走に成功した模様です。地球降下後たまたま出会ったマスター・アジアの誘いを受け、DG細胞の力を取り込んでまでジョルジュへの復讐心を燃やす狂気は凄まじいものがありますja.wikipedia.org。戦闘ではDG細胞でパワーアップしたミラージュガンダムを駆りジョルジュを苦しめますが、最後はジョルジュの猛反撃に圧倒され敗北しました。瀕死となった彼はジョルジュの手でDG細胞の呪いを浄化され、一命を取り留めています。ミラボーは本話限りの敵キャラですが、その存在はジョルジュの「過去の過ちへの贖罪」**というテーマを際立たせる重要な役割を果たしました。声を演じた小杉十郎太氏の怪演もあり、一度見たら忘れられない強烈な悪役と言えるでしょう。
  • ドモン・カッシュ – ネオジャパン代表で本作の主人公。ジョルジュとはライバルであり戦友です。第20話では自らの修行の傍ら、仲間たちの問題にも巻き込まれる“お人好し主人公”ぶりが描かれています。当初は「ジョルジュのことは放っておけ、俺には関係ない」と突き放す素振りを見せますが、レインに「皆があなたを頼って集まっている」と指摘され心境に変化が生まれます。ジョルジュとミラボーの戦いでは、暴走するジョルジュを止めるため自らシャイニングガンダムのハイパーモードを発動し仲裁に入りました。ジョルジュの修羅のごとき剣幕に「こいつ…!」と驚愕しつつも必死に呼びかけを行い、友の暴走を止めるその姿は熱い友情を感じさせます。最終的にジョルジュの奮闘やシャッフルの力でミラボーのDG細胞が浄化される様子を見届け、ドモン自身も**「心無き拳はただ破壊を生むのみ。しかし力も使い方次第では素晴らしいものになる」**という戦いの教訓を得たようです。これは後にドモンが真のハイパーモード(スーパーモード)を極める上で重要な示唆となっており、ジョルジュのエピソードが主人公ドモンの成長にも影響を与えている点が興味深いです。

3. 登場モビルファイター(ローズガンダムの戦闘演出)

  • ガンダムローズ – ネオフランスのモビルファイター(MF)。ジョルジュ・ド・サンドの搭乗機で、大会登録番号GF13-009NF。中世フランスの騎士をイメージした優雅なフォルムが特徴で、頭部はナポレオンの二角帽を模した意匠になっています。カラーリングはフランス国旗を彷彿とさせる青・白・赤のトリコロール。シュバリエ・サーベルと呼ばれる細身の実体剣(使用時に青く発光するビームサーベル状の剣)を主武装としておりgundam.wiki.cre.jp、ジョルジュのフェンシングスタイルに合わせた近接戦を得意とします。フットワークとセンサー性能に優れ、ヒット・アンド・アウェイ戦法で先手を取り主導権を握る戦いを基本としていました。モビルファイターとしては珍しく、オールレンジ攻撃を可能にする遠隔ビーム兵器**「ローゼス・ビット」を多数装備している点もガンダムローズの大きな特徴です。左肩から腕を覆うマント型シールドの裏側に複数の花弁状ビットを格納しており、必要時に四方八方へ展開・飛翔させて敵を攻撃します。各ビット先端には小型のビーム砲を1門内蔵し、ジョルジュの脳波コントロールで自在に操れるため、まるで舞い散る薔薇の花びらのように敵を惑乱できるのです。ビットは連携してビームネット(電磁檻)を形成することも可能で、敵機を結界内に閉じ込め追い詰める「ローゼス・スクリーマー」**が主な必殺技として知られています。

本エピソードでは、悪夢に囚われたジョルジュの心理状態を反映するかのように、ガンダムローズの戦闘にもいつもの優雅さはありません。序盤、悪夢に動揺したジョルジュはビットもサーベルも活かせず防戦一方で、DG細胞に侵されたミラージュガンダムの猛攻を許してしまいます。やがてレイモンド負傷の怒りで覚醒すると、一転してすさまじい攻撃力を発揮しました。ミサイルの雨を躱しつつ全弾を斬り払い、倒れた敵機にとどめとばかりに踏みつけて腕を引きちぎるという、まさに**「力だけの破壊」を体現するような戦いぶりは、普段の華麗なジョルジュからは想像できない迫力です。これは演出的にも、ジョルジュの心に巣食った“悪魔”が乗り移ったかのような暴走状態を示しており、シャイニングガンダムのドモンが止めに入らねばならないほどでした。しかし最終的には騎士としての誇りを取り戻し、怒りを鎮めた後は本来の品格ある戦い方に戻っています。ジョルジュが心身ともに立ち直った証として、ラストはミラージュガンダムに対しビームサーベルを突きつけるも斬らず、シャッフル同盟の力でDG細胞のみを消滅させるという“慈悲”の幕引きが描かれました。この静と動のコントラストは、ローズガンダムという機体の持つ「両刃の剣」**的な二面性(優雅さと凶暴さ)を強調しており、非常に印象的な戦闘演出となっています。

なお、ガンダムローズはこのギアナ高地での修行を経て新たな必殺技**「ローゼス・ハリケーン」**を会得することになります。ローゼス・ハリケーンは複数のローゼスビットを竜巻のように高速回転させ、エネルギーの渦で敵を完全拘束したうえで一斉攻撃を浴びせる大技です。劇中では第36話でゴッドガンダム相手に初披露されますが、本エピソードの裏でジョルジュがこの技を編み出すまでの修行を積んでいたと考えると、彼が悪夢を断ち切ったことで心技両面で新境地に達したことが感じられます。

  • ミラージュガンダム – ミラボーが操縦するネオフランス製モビルファイター。元々は第13回大会のネオフランス代表候補機でしたが、上記の不祥事により正式な代表にはなれず大会登録番号も持たないまま封印されていた機体です。名前の“ミラージュ(蜃気楼)”から想像される通り、どことなくガンダムローズと似通った幻影のような存在と言えます。デザインもローズガンダムを踏襲した部分があり、例えば頭部に小さな仮面のような飾りを付けている点や、肩に薔薇のエンブレムが入っている点など「ローズの影」であることを意識させます(実際、脱走時にネオフランスの警備隊が使っていた量産MSもローズを意匠に取り入れており、本国のデザイナー山根公利氏による脇役メカの凝った造形が垣間見えます)。武装面では、ローズが近接主体なのに対しミラージュガンダムは多数のミサイル兵器を搭載しているのが最大の相違点です。劇中でも観客席めがけてミサイルを乱射し大惨事を引き起こしたように、ミラボーはこの火器を悪用しました。第20話の決闘でも、ミサイルの飽和攻撃によってジョルジュを苦しめています。さらにDG細胞の力で機体性能を強化しており、その弾数・火力は底無しとも思える猛威でした。しかしミラージュガンダム自体はガンダムローズに劣る旧式機で、DG細胞によるブーストがなければジョルジュの敵ではなかったでしょう。実際、ジョルジュが本来の実力を発揮すると瞬く間に翻弄され、最後は胴体を貫かれて大破しています(頭部と両腕も破壊されました)。なお、ミラージュガンダムという機体そのものはミラボー脱獄後に盗み出され地球に降下していますが、ミラボー撃破後はネオフランス側に回収されたのか、以降の物語には登場しません。ただ、その存在はジョルジュにとってまさしく“悪夢の象徴”であり、**「自分の過去と向き合うための影」**として演出的に非常に重要でした。名前の通り儚く散った幻影のガンダムですが、ファンの記憶には爪痕を残した機体と言えるでしょう。
  • バトラーベンスンマム – レイモンドが搭乗する自家用モビルスーツ。名前の由来は推理小説『殺人ゲーム』に登場する執事ベンソンマムから(監督の今川泰宏氏らしいユーモアです)とも言われます。形式番号NEL-75C。ネオフランス製ではなく、ネオイングランド製の教習用MSをサンド家が購入して使用している設定ですja.wikipedia.org。全高14.5mとMFより一回り小柄で、重量5.2tと非常に軽量なのが特徴。装甲材質はチタニウム合金セラミック複合材でやや旧式ですが、3本指のマニピュレーターや剥き出しの関節部など無骨な外見が「年季の入ったポンコツ感」を醸し出しています。機体デザインは燕尾服を着た執事のような姿を模しており、顔面には口ひげ風の意匠と蝶ネクタイ状のパーツがついているのがユニークです。武装は基本的になし(劇中でも丸腰)ですが、レイモンドの希望でオプションとして細身のサーベルを装備できるようになっていたようです。

ガンダムファイトのモビルトレースシステムは搭載されておらず、操縦方式は自動車のハンドルとレバーという旧世代スタイルですが、レイモンドの熟練した腕前により意外な健闘を見せました。劇中では飛来するミラージュガンダムのミサイルを素手で掴み取って投げ捨てる離れ業まで披露し、観ている者を驚かせます。これは本人の操縦テクニックもさることながら、本機が5.2tという軽量ゆえに敏捷性が高かったことも一因でしょう。もっともDG細胞で凶暴化したミラージュガンダム相手では荷が重く、奮戦むなしく片腕を切断され撃墜されてしまいました。レイモンドはこの機体ごと吹き飛ばされ重傷を負いますが、結果としてジョルジュ覚醒の引き金を引いた功労者とも言えます。バトラーベンスンマムはその後終盤の第45話でもひっそり再登場し、ミカムラ博士(レインの父)の手で宇宙漂流していたドモンの父の冷凍カプセルを回収するという裏ミッションに活躍しています。地味ながら物語の陰で大事な役割を果たした機体であり、「縁の下の力持ち」的な渋いMSです。本編終了後、なんと21世紀のビルドシリーズ(『ガンダムビルドファイターズ』第5話)にガンプラとしてカメオ出演を果たすなど、スタッフにも愛されている隠れキャラ的メカと言えるでしょう。

4. 技・演出(ビームローズ等の演出、戦闘スタイル)

ビームローズ(シュバリエ・サーベル) – ガンダムローズの主武装である細身のサーベルは、抜刀時に青白いビームの刃を形成することからファンの間で「ビームローズ」などとも呼ばれます(正式名称はシュバリエ・サーベルです)。フェンシングのレイピアを模したエレガントな実体剣で、切っ先が薔薇のつぼみのような形状をしていますgundam.wiki.cre.jp。普段は左腰の鞘に収められており、ジョルジュが構えると刀身が発光してビームサーベルとして機能する仕組みですgundam.wiki.cre.jp。設定上は薄い実体刃にビームを纏わせて貫通力・斬撃力を高めているとされ、刺突だけでなく斬撃にも使えるため、中盤以降のジョルジュは敵を両断する場面も多くなります。第20話でも、ジョルジュは怒りのままにこのサーベルでミラージュガンダムの装甲を何度も斬り裂き、最後はコクピットハッチを突き破るほどの威力を見せました。なお、クライマックスでジョルジュが放った**「シャッフルの証よ!」の場面では、サーベルの切っ先に彼のジャック・イン・ダイヤ(クラブエース)のエンブレム**が浮かび上がり光を放つ演出がなされています。これはコミックボンボン版漫画に登場した必殺技「シャッフルサーベル」のオマージュとも取れ、アニメでは言及されない細かな演出ですがファンには胸熱いシーンでした。

ローゼス・ビット – ローズガンダムの象徴的な武装。薔薇の花びら型のビット兵器で、左肩のマント型シールド裏に多数が格納されています。ジョルジュの脳波で制御され、自律飛行しながら内蔵ビーム砲で敵を四方から攻撃します。使用時にはマントの前後4枚が展開し、一斉にビットが飛び散る様はまさに薔薇吹雪のごとき華麗さです。第20話では、序盤にレイモンドが「ジョルジュ様の相手はミラボー…観客を背負い武器を封じる策を使ったのです」と語るシーンがあります。ここでいう「武器」とは主にローゼス・ビットのことで、過去の代表選考時にミラボーがビットを使わせないよう立ち回ったと説明されています。実際、本エピソードの決闘でもジョルジュは序盤ビットを展開できず苦戦しました。しかし終盤、怒りに燃えて反撃に転じた際には怒涛のビット攻撃を見せています。ミサイルの弾幕をビット射撃で相殺し、複数のビットを同時操作してミラージュガンダムの武装を次々と破壊する様子は痛快でした。最終的に、ジョルジュが悪魔の心を振り払った後はビットでミラボーを包囲するものの、直接攻撃はせず**「ビットから発生させた光(シャッフルの紋章の力)」**でDG細胞だけを除去するという離れ業をやってのけます。この演出には驚かされましたが、シャッフル同盟の証にはDG細胞に打ち克つ力があることが示唆されました。ビットを攻撃ではなく治癒のような目的に使った珍しい例と言えるでしょう。いずれにせよ、ローゼス・ビットの全方位攻撃とトリッキーな使い方はローズガンダムの華であり、本話でもその魅力が存分に発揮されました。

戦闘スタイルと演出 – 第20話の戦闘シーンは、ジョルジュの内面に呼応してダイナミックに変化する演出が光ります。序盤のジョルジュは怯えから動きが硬く、防戦シーンでは背景に過去の悲劇やデビルガンダムのフラッシュバック映像が挿入され、彼の恐怖心が視覚化されていました。対するミラボー側は邪悪さを強調するためか、ミラージュガンダムのモノアイがDG細胞で不気味に脈動し、笑い声と共に画面いっぱいにミサイルを乱射するという派手な演出が取られています。特に森の中でローズガンダムが無数のミサイルに包囲されるカットは緊張感抜群で、ミサイルの光跡がまるで悪夢から伸びる触手のように見える工夫がされています。

中盤、レイモンドの負傷によりジョルジュの感情が恐怖から憤怒へ振り切れると、演出も一変します。ローズガンダムが黄金色にオーラを輝かせ(一瞬ハイパーモードかと見まごう程)、バーニアを全開にして敵に突進するカットは鳥肌ものです。ジョルジュの叫び声に合わせて画面が揺れ、ローズガンダムが猛烈なスピードでミサイル群をすり抜けつつ次々と撃ち落としていくシーンは、本作の他エピソード以上に熱量が感じられます。これは作画担当の佐久間信一氏の気合いの入ったカットで、まさに**“怒れる薔薇の貴公子”**の異名に相応しい迫力です。怒りに任せ敵機を破壊する様子には、劇伴も通常の優雅な曲ではなく不穏なスローテンポのBGMが流れ、ジョルジュの危うい心境を表現していました。

そして極め付けがドモンによる制止からのクライマックスです。ドモンのシャイニングガンダムが金色に輝きジョルジュの拳を受け止める場面で、一瞬映るドモンの表情は驚きと必死さが入り混じっており、主人公がここまで必死になるのはシリーズでも珍しいカットです。静止した二人のガンダムを挟み、地面に横たわるレイモンドとミラボーが映し出され、「正気に戻れ!」と叫ぶドモンと「お気を確かに!」と涙声のレイモンドの声が重なる演出は鳥肌もの。そこからジョルジュがハッと目を見開き、カメラが彼の瞳にズームインすると瞳の中に自らのシャッフルの紋章(クラブエース)が浮かび上がる…という演出で彼の内なる決意を描写しています。紋章を掲げるジョルジュのカットは彼の決意表明の名シーンであり、ここで一気にBGMが希望に満ちた調べへ切り替わるのも感動的です。そしてビットを展開しながら紋章の力でDG細胞を浄化するくだりでは、画面に薔薇の花びらが舞い散るようなエフェクトが施され、彼の心が解放されたことを象徴していました。

以上のように、第20話の戦闘シーンはメカアクションの爽快さのみならず、キャラクターの心理を巧みにシンクロさせた演出が随所に盛り込まれています。フェンシングの優雅さ激情のバトルという二面性が同居する構成は、「人の心と力の両面性」をテーマにした本作らしい見せ場でした。

5. 名シーン・名セリフ

本エピソードには、ファンの心に残る名シーンや名セリフが数多くあります。いくつかピックアップして振り返ってみましょう。

  • 「ジョルジュ様に剣の手解きをして差し上げたのは!このレイモンドである事をお忘れなく、おりゃー!!」
    冒頭、悪夢に苛まれ修行に身が入らないジョルジュに活を入れるため、レイモンドが叫ぶセリフです。年老いた執事が木刀を振るって主人に立ち向かうという構図がユーモラスで微笑ましいですが、声は真剣そのもの。**「おりゃー!!」**という気合いの掛け声も相まって、思わず笑いながらもレイモンドの熱意に胸を打たれる名シーンです。
  • 「執事生活45年、ジョルジュ様のおしめを取り替えた事すらあるこの私が、クビ…親父!コーヒーおかわり!」
    レイモンド解雇シーン後の酒場にて。傷心のレイモンドが自嘲気味に長年の奉公を振り返りつつ、コーヒーをがぶ飲みしているコミカルなシーンです。普通ならやけ酒をあおるところをコーヒーで酔ったフリをするあたり、品格を崩さない執事の鑑とも言えます。**「おかわり!」**と震える声で注文する姿に笑いつつも、この後彼が命を張る展開を思うと涙ぐんでしまうファンも多いのではないでしょうか。
  • 「ミラボー!貴様のその悪逆非道な闘いぶり、見るに堪えん!」
    回想シーンで登場するネオフランス元首(国王)の叱責の言葉です。観客を盾にしたミラボーの戦法に激怒し、彼を失格とする裁定を下す場面で発せられました。普段は優雅なGガンダム世界において珍しく上品なフランス語訛り(?)の口調で怒鳴るため強い印象を残します。観客を守ろうとする王の姿勢と、ミラボーの悪党ぶりが端的に示された痛快なセリフでした。
  • 「ジョルジュ様、ジョルジュ様?!お願いです、お気を確かに!ジョルジュ様ぁぁ!」
    デビルガンダムの幻影を見て錯乱するジョルジュに、レイモンドが必死で呼びかける場面のセリフ。執事の悲痛な叫び声が、ジョルジュの心の異常事態を視聴者にも伝えます。レイモンド役の声優・藤本譲さんの熱演が光るシーンで、「ジョルジュ様ぁぁ!」という魂の咆哮は耳に焼き付いて離れません。
  • 「長かったぜぇこの1年!貴様に代表の座を奪われたこの恨み!」
    ミラボーがギアナ高地に現れ、シャトルから高笑いと共に叫ぶセリフです。歪んだ憎悪が滲み出た口調で、一年間復讐の鬼と化していた執念が感じられます。声を演じた小杉十郎太さんのドスの利いた台詞回しが非常に迫力があり、ミラボーという男の凶悪性を端的に表しています。続けて**「さあ今度こそどっちがファイターの資格があるか決着をつけようじゃねぇか!なあ、お坊ちゃん!」**と嘲るように言い放つのも印象的で、品位を重んじるジョルジュとの対比が鮮烈です。
  • 「止めろジョルジュぅ!既に勝負はついている!貴様に騎士としての誇りが残っているのなら、無益な戦いは止めろぉ!!」
    ドモンがブチ切れ状態のジョルジュを止めようと必死に訴える場面のセリフです。いつも強気なドモンが、友の暴走を前に**「ジョルジュぅ!」と叫び声を上げる姿は非常に珍しく、その懸命さが伝わってきます。「騎士としての誇りが残っているのなら!」**という言葉はジョルジュの良心に訴えるもので、直後にドモンはハイパーモードを発動してまで仲裁に入ります。親友でもある相手に心からぶつけるこのセリフは、シリーズ屈指の熱量を感じる名シーンでした。
  • 「討つべきはミラボーではありません!貴方の心に巣食う、悪魔です!」
    レイモンドが命がけで放った渾身の一言。本エピソードのテーマを集約したような名セリフであり、暴走するジョルジュの心に突き刺さりました。レイモンドの静止がなければジョルジュは本当にミラボーを手にかけていたかもしれず、まさに土壇場で彼を正道へ引き戻した言葉でした。視聴者にも**「本当の敵は己の中の悪だ」という教訓**を強く印象付ける、シリーズ屈指の名ゼリフだと思います。
  • 「そう、忘れるところでした!ガンダムファイターたるもの、心で闘わねばならぬという事を!」
    正気に返ったジョルジュが発する決意のセリフ。自らの未熟を恥じ、初心に立ち返るこの独白は、彼の騎士道精神が完全に蘇ったことを示しています。BGMが静まり、ジョルジュの声だけが響く演出も相まって非常に感動的なシーンです。続けて**「シャッフルの証よ!もし私にその資格があるのなら、ミラボーからデビルガンダムの呪いを…消し去れぇ!!」**という絶叫に繋がり、薔薇の光が降り注ぐフィナーレは何度見ても胸が熱くなります。
  • 「よく見ておけドモン…心の無い拳は唯破壊を生むのみ…だがその力も使い方次第では、素晴らしいものになる…」
    戦いが終わった後、ジョルジュ(もしくは師匠のマスター・アジアの声のイメージとしても取れます)がドモンに語りかけたように挿入された言葉です。明確に誰のセリフかは描写されませんが、直前の出来事を受けてドモンが得た教訓として心に響きます。**「絶大なるパワーは二つの顔を持つ、いわば諸刃の剣!お前は何方を選ぶ?」**という問いかけで締めくくられ、これからクライマックスに向かうドモンの成長を示唆するような深い一節でした。まさに本話全体のテーマ「想い(心)と力の両立」を象徴する名フレーズであり、ガンダムシリーズ全体にも通じる教えとしてファンの心に刻まれています。

これらのセリフ・シーン以外にも、第20話には細かい見どころが満載です。例えば、ラスト近くジョルジュが朝日に照らされながらレイモンドと語り合う場面で呟く**「夜明けの光がこんなに美しいとは…」というような台詞(※詩人ジョルジュらしいロマンチックな一面が垣間見えます)や、ドモンに諭された際のレインの「ふふん…」**という含み笑いなど、キャラクター性が表れた細部にも注目です。全話視聴済みのファンであれば、こうした何気ないシーンにもキャラの成長や関係性を感じ取れて、改めて深い味わいが得られるでしょう。

6. 裏話・制作トリビア

公式設定や逸話を通じて、第20話「ジョルジュよ、悪夢を打ち砕け!」の裏側を探ってみます。

  • 「マルセイユの悲劇」命名の由来: 劇中ジョルジュのトラウマとなった観客虐殺事件は「マルセイユの悲劇」と呼ばれています。フランス南部の都市マルセイユが名前に冠されているのは、フランスを舞台にした大事件というイメージからでしょう。実在の出来事との直接的関連はありませんが、サッカー等の「○○の悲劇」という言い回しを連想させ、耳に残る呼称になっています。なお、一部のファンサイトでは「ヴェルサイユの悲劇」と表記されている例も見られますが、公式表記はマルセイユです。ネオフランス代表選考会がマルセイユで開催されたのかどうかは明示されていませんが、少なくともネオフランスの国内で起きた悲劇であることを強調する演出といえます。
  • ジョルジュ・ド・サンドの名前: 主人公ドモン・カッシュを始め、Gガンダムの主要キャラはどこかで聞いたことのある名前が多いですが、ジョルジュの名前の由来は19世紀フランスの女性作家ジョルジュ・サンドだと言われています(ジョルジュ・ド・サンドはフルネームに“ド”が入っていますが、明らかに元ネタを想起させます)。マリアルイゼ姫とのロマンスや詩的な物言いなど、彼のキャラクターにはロマン主義的な香りがあり、文豪ジョルジュ・サンドのイメージが投影されているのかもしれません。なお、ジョルジュの声を担当した天野由梨さんは、本作収録当時まだ新人ながらフランス語の発音が非常に美しく、第4話での自己紹介**「ボンジュール、モナミ(こんにちは、僕の友)!」**のセリフは視聴者の印象に強く残りました。スタッフも彼女の演技力を評価しており、ジョルジュの気品ある雰囲気づくりに大きく貢献しています。
  • レイモンドのモデルと小ネタ: 執事のレイモンドは絵に描いたような英国風老執事ですが、キャラクターデザイン協力を務めた島本和彦氏の趣味もあってか、どことなくマンガ『名探偵ホームズ』シリーズに出てきそうな風貌です。劇中、レイモンドが発した**「執事生活45年…」という嘆きのセリフは、実は昭和のギャグアニメ『ど根性ガエル』で主人公の担任教師が言った台詞「教師生活○○年…」へのオマージュではないかとの説があります。確かにあまりにも具体的な年数なので、制作スタッフがお遊びで紛れ込ませたネタかもしれません。また、レイモンドの乗機バトラーベンスンマムは、デザインに口ひげ蝶ネクタイ**といった執事記号を散りばめたユーモラスなものですが、実は当初スタッフのある一人(ネット上の本人談によれば制作進行の方)のラフデザインが存在したものの「契約デザイナー以外メカデザイン不可」というお約束で不採用になり、そのアイデアの一部(頭のひげパーツなど)のみ正式デザインに取り入れられたという裏話があります。この機体デザインは最終的にメカデザイナーの山根公利氏が担当しましたが、従来のリアルロボットにはないユーモア満載の造形となり、監督・今川泰宏氏の世界観を体現する名脇役メカとなりました。
  • ミラボー役の声優・小杉十郎太氏: 渋い低音ボイスで有名な小杉十郎太さんは、本作ではミラボーの他にネオフランスのワイン博士ことハンス・ゴッホ(第5話登場)も演じています。ミラボーでは狂気に満ちた悪役を怪演し、特に笑い声や絶叫シーンの迫力は圧巻でした。当時のアフレコ現場でも、小杉さんの鬼気迫る演技に他のキャストが一瞬引くほどだったというエピソードが伝わっています。また、ミラボーがDG細胞に冒された状態から正気に戻った際の演じ分けも見事で、浄化後の「…う、うぅ…」と呟く弱々しい声は、それまでの豪快さとのギャップで印象に残ります。ミラボーはこの1話限りの登場ですが、その存在感は小杉さんの熱演によりより強烈なものとなりました。
  • コミックボンボン版での改変: 本作の漫画版(島本和彦作画のコミカライズ版『超級!機動武闘伝Gガンダム』)では、アニメとは異なる展開や設定が見られることがあります。ジョルジュ絡みでは、コミック版オリジナルの必殺技として**「シャッフルサーベル」**なる技が登場しました。これはジョルジュがシュバリエサーベルを突き出し突進する捨て身の技で、その際サーベルの先端に彼のジャック・イン・ダイヤ(クラブエース)の紋章が浮かぶという演出がなされました。第20話のアニメ本編でジョルジュがエンブレムを掲げた場面は、この漫画版シャッフルサーベルを連想させるもので、ファンサービス的な要素かもしれません。また、漫画版では「マルセイユの悲劇」の経緯も多少異なり、島本和彦先生らしい熱血展開に改変されています(観客を守るためジョルジュが自ら大技を放ち、その余波で悲劇が起きてしまった…などの設定)。メディアの違いによるアレンジとして、興味のある方はコミック版のジョルジュ編もぜひチェックしてみてください。
  • 当時の放送と視聴者反響: 第20話は1994年9月2日に放送されました。当時の玩具情報誌などではジョルジュの新必殺技「ローゼスハリケーン」の存在が先行して紹介されており、本編に先駆けてファンの間で噂になっていたようです。しかし蓋を開けてみれば今回その技は未使用で、「修行中に会得した」という設定のみ残されました。視聴者の反響として、この回は**「主人公以外のドラマがしっかり描かれていて熱い!」と好評でした。他シリーズのガンダム作品では主人公視点で物語が進みがちですが、Gガンダムではサブキャラにも各々ドラマがあり、しかも1話できれいにまとまるのが痛快だという声が当時のアニメ誌の読者欄などでも散見されました。一方で「さすがに都合よく友情・根性で解決しすぎでは?」という意見も一部にありましたが、そこはスーパーロボット路線を鮮明にした本作ならではの良さと言えるでしょう。他のガンダムシリーズではなかなか見られない爽快な人間ドラマの決着**が、Gガンファンにはむしろたまらない魅力として映ったのです。
  • 次回予告の小ネタ: Gガンダムの次回予告は、謎の覆面アナウンサー「ストーカー」による寸劇風ナレーションがおなじみです。本話と第19話あたりの予告ではストーカーが各国ファイターにインタビューを敢行するというコミカルな寸劇が展開されました(**「というわけで、ストーカーが各ガンダムファイターにインタビューを敢行しました」**というノリの語りが入る)。第20話予告でもストーカーが「ジョルジュさん、悪夢と聞いてどう思われますか?」と質問し、ジョルジュ役の天野由梨さんがジョルジュ口調で「お恥ずかしい話ですが…(略)」と答える一幕がありました(実際に放送された予告編より)。こうした遊び心満点の予告演出は当時視聴者に好評で、重厚な本編とのギャップもまたGガンダムの魅力でした。

7. 解説・考察(ジョルジュのトラウマと贖罪意識、成長と責任)

第20話は、ジョルジュ・ド・サンドというキャラクターの内面ドラマに深く踏み込んだ重要回です。ここではジョルジュの抱えるトラウマ贖罪の意識、そしてシャッフル同盟の一員としての成長と責任について考察してみます。

まず、ジョルジュのトラウマである「マルセイユの悲劇」について。彼は元来、生真面目で高潔な騎士であり、正々堂々とした戦いを信条としていました。しかし代表選考会でミラボーの卑劣な策により不本意にも多数の観客を死なせてしまった事実は、ジョルジュにとって**“自分も加害者になってしまった”**という深い心の傷となりました。たとえ直接の原因はミラボーでも、結果的に自分の戦いが惨劇を招いたことへの後悔と罪悪感は計り知れません。その証拠に、ミラボーが失格となった後にジョルジュが正式代表に選ばれた際、彼は素直に勝利を喜べなかった描写がありました(劇中語られませんが、そう推察できます)。本来なら「国の誇り」を胸にファイトへ臨むところ、過去の過ちを引きずったまま大会に出場していたわけです。この精神的重荷が、新宿でのデビルガンダム襲来という極限状況で再燃し、ジョルジュの心を蝕んでしまいました。

ジョルジュは過去の過ちへの贖罪として、より一層国や姫君に尽くそうと自分を律していたはずです。しかし心の奥底では**「自分は騎士道を汚してしまったのではないか」という自己嫌悪がくすぶり続け、その自己否定感が悪夢となって表れていました。悪夢の中で彼はおそらく何度も観客の悲鳴や爆発の光景を見て、自分を責め続けていたのでしょう。そのせいで実戦でも思い切った攻撃ができなくなり、持ち味の優雅な戦い方とは程遠い荒々しい力任せの戦闘**に陥っていたわけです。これはつまり、贖罪のつもりが逆に彼から騎士らしさを奪ってしまった皮肉な状況でした。

物語序盤でレイモンドがドモンに助けを求めたのも、このままではジョルジュが騎士としても人間としても壊れてしまうと感じたからでしょう。ドモンとの戦いで奮起させようという作戦は結果的に裏目に出ましたが、この試み自体、ジョルジュを思う執事の愛情から出たものでした。ジョルジュが怒ったのも、「他人に弱みを見せたくないプライド」と「過去を蒸し返されたくない恐怖」からであり、その意味では彼もまた追い詰められていたのです。

こうしたジョルジュの内面葛藤は、ミラボーという**“過去の亡霊”を再び目の前に現すことで最高潮に達します。ミラボーはジョルジュにとって憎むべき犯罪者ですが、同時に「自分の弱さを暴き出す存在」**でもあります。ミラボーがいる限りジョルジュは過去から逃れられない──それが悪夢に怯えるジョルジュの心理でした。その彼がミラボー本人と対峙することになったのはある意味必然であり、自分の過去と向き合うチャンスでもありました。

戦闘序盤、ジョルジュは恐怖で動けず一方的に攻撃を受けました。この展開は彼の内心そのものでしょう。ミラボーの嘲りの声は「お前は俺に勝てなかった」「観客を死なせた敗北者だ」というジョルジュ自身の内なる声でもあったはずです。しかし、レイモンドという現在の大切な存在が傷つけられた瞬間、ジョルジュの中で何かが弾けました。それは**「守りたいものを守れなかった後悔を二度と繰り返したくない」**という強烈な想いです。かつて守れなかった観客たち…その象徴のようなレイモンドを守るため、ジョルジュは恐怖を怒りに変換しました。この怒りの爆発は一見危険ですが、彼にとっては必要なプロセスだったのでしょう。怯えから来る萎縮状態を打破するには、感情を振り切るほどのエネルギーが要ったのだと思います。

しかし怒りに身を任せた彼の姿は、ドモンが言ったように**「デビルガンダムのよう」でもありました。つまり憎しみに駆られるままでは、ジョルジュ自身もまた悪に染まってしまう可能性があったのです。実際、ミラージュガンダムを徹底的に破壊し尽くす姿は、かつてのジョルジュからは想像できないほど残忍でした。ここに至ってジョルジュはもう一つの選択を迫られます。それは「このまま憎しみのままに仇を討つか」、それとも「憎しみを断ち切り騎士の誇りを貫くか」です。まさに心の中の悪魔との戦い**です。この内面の戦いを制する鍵となったのが、レイモンドの言葉とドモンの存在でした。愛する執事の必死の叫び、そしてライバルであり友でもあるドモンの拳(ハイパーモードで受け止めてくれた)によって、ジョルジュは踏みとどまることができたのです。

ジョルジュが最後に見せた行動、すなわち仇敵ミラボーを許し救済したことは、彼の贖罪の物語におけるひとつの決着でした。憎き相手を斬り倒すのではなく、DG細胞から解放し命を助けたのは、自分自身の騎士道を貫くと同時に、過去の悲劇への一つの償いでもあったと思います。自分が戦いで傷つけてしまった人々をもう戻すことはできませんが、目の前の一人の命を救うことはできる。ジョルジュはそうすることで**「自分は悪魔にはならない」**と証明し、過去の自責の念からも解放されたのではないでしょうか。それゆえ、DG細胞浄化後の彼の表情には晴れやかさすら感じ取れました。

このようにジョルジュは自身のトラウマを乗り越え、シャッフル同盟の一員としてふさわしい精神的強さを身につけましたja.wikipedia.org。元々エースの称号(クラブエース)を受け継ぐ実力者でしたが、精神面での脆さが克服されたことで、真にシャッフル同盟の一角として頼もしい存在になったと言えます。彼はこの後、決勝大会でドモンたちと共闘しデビルガンダム四天王に立ち向かうなど、地球を救う戦いに大きく貢献していきます。ジョルジュ自身、第20話の経験で**「友情と信頼」**の大切さも学んだことでしょう。レイモンドやドモンたち仲間への感謝と信頼を胸に、より強く優しい騎士へと成長した姿が終盤戦では見られます。

さらに、本話はジョルジュ個人の成長物語であると同時に、主人公ドモンへの示唆も含んでいました。先述の通り、**「心なき拳はただ破壊を生むのみ」というテーマはドモン自身にも突き付けられています。ドモンもまた怒りや憎しみに駆られて暴走する危うさを持つキャラですが(兄キョウジへの復讐心など)、ジョルジュの一件を通じて「力と心のバランス」に気づかされた面があります。実際、ドモンはこの後の物語で感情を制御した上でハイパーモードを発動させ、新必殺技を完成させるなど、一段と精神的に成長していきます。ジョルジュの物語はドモンに“鏡”**を見せる役割も果たしたと言えるでしょう。シャッフル同盟は互いに切磋琢磨し合う仲間ですから、ジョルジュが克服した姿はきっと他のメンバー(チボデーやサイ・サイシーたち)の励みにもなったはずです。

最後に、「責任」の点について触れます。ジョルジュは本エピソードで、自身の過去と向き合い責任を取る姿勢を示しました。それはすなわち**「過去から逃げない」**ということです。ミラボーを前にしたとき、恐怖に竦んだ彼はある意味逃げ腰でした。しかしレイモンドが傷ついたことで逃げる選択肢は消え、真正面から過去(ミラボー)と対峙せざるを得なくなった。そして結果的に彼は逃げずに戦い抜き、自らの手で決着をつけました。これは、シャッフル同盟の一員として地球を守る使命に向き合う覚悟とも重なります。ジョルジュは今回の件で、自分には背負うべきもの(祖国の誇り、姫や執事との絆、そして地球と仲間たちの未来)があることを再認識したでしょう。だからこそ次回以降、彼は決勝大会で誰よりも冷静に、そして熱く戦う騎士として輝きを増していきます。過去の清算を経て真の責任を全うする強さを得たジョルジュ・ド・サンド——第20話はその転機となったエピソードだったと言えるでしょう。

8. 筆者コメント(あとがき)

本記事では『機動武闘伝Gガンダム』第20話「ジョルジュよ、悪夢を打ち砕け!」について、ストーリーの詳細から演出意図、製作裏話や考察までたっぷり掘り下げてみました。ファンの皆様にとって懐かしさと新たな発見を感じていただける内容になっていれば幸いです。

個人的にこの第20話は、Gガンダムの中でも特に**“アツい魂”を感じる大好きなエピソードです。初めて視聴した当時、主人公ドモン以外のファイターがこんなにドラマチックに描かれることに驚き、同時に胸が熱くなったのを覚えています。ジョルジュというキャラクターはそれまでクールで近寄りがたい貴公子という印象でしたが、この回を経て一気に人間味が増し、大好きになりました。怯え、怒り、葛藤し、最後には誇りを取り戻す——その姿は王道的な熱血ロボットアニメの醍醐味に溢れており、「ああ、これぞGガンだ!」**と唸ったものです。

また、本話はGガンダムのテーマである**「愛と友情と根性!」**(筆者勝手に命名)を端的に示していると思います。レイモンドの深い愛情、仲間たちの友情、そしてジョルジュ自身の根性と騎士道——ベタと言えばベタですが、その直球勝負こそが本作の魅力ですよね。他シリーズのガンダムにはない熱量と爽快感は、何年経っても色褪せません。改めて見直してみると、当時は気づかなかった細やかな演出やセリフの意味にも気づき、新鮮な感動がありました。

筆者個人として印象深いのは、ジョルジュがシャッフル同盟のエンブレムを掲げるシーンです。あの瞬間、ジョルジュの背後に初代クラブエース(旧シャッフル同盟の面々)の幻影が見えた気がしました。「お前は負けるな」と先代から背中を押されているような…勝手な想像ですが、それくらい熱く胸が震えました。Gガンダムはこうした受け継がれる意志の描写も上手いですよね。ドモンにとっての東方不敗、ジョルジュにとっての先代クラブエース(実際に劇中登場した人物ではありませんが)など、魂が脈々と繋がっていく感じがたまりません。

そして忘れてはならないのがレイモンドの存在。今回、執事という縁の下のキャラにスポットライトが当たったのも嬉しかったです。**「45年執事をやってりゃ、モビルスーツくらい乗りこなしてみせる!」**という無言の気概を背中で語るレイモンド…最高にカッコイイおじさまです。Gガンダムは往年のスーパーロボットアニメのオマージュも多いですが、年長者が若者を鼓舞し支える構図も王道でニヤリとさせられます。

さて、語り出すとキリがありませんが、この辺であとがきを締めたいと思います。第20話は単発エピソードでありながらシリーズ全体のテーマに繋がる重要回でした。再視聴してみると新たな発見があるでしょうし、未見の方には是非観てもらいたい名作回だと思います。ジョルジュのファンでなくとも心に響くものがあるはずです。この記事で興味を持った方は、ぜひブルーレイや配信などで実際の映像を楽しんでみてください。

それでは最後に、いつものあの言葉で締めましょう…レディー・ゴー!!

9. 次回予告

「皆さんお待ちかね!ガンダムファイトの決勝大会が目前に迫りました。未だ修行を完了できないドモン! さらに、チボデー達の元へもデビルガンダム軍団=デスアーミーが攻めてきたではありませんか!」

果たしてドモン達シャッフル同盟は無事に香港の決勝会場へ辿り着けるのか?タイムリミットは残り3日、最後の試練が彼らを襲う!

次回 『決勝迫る!タイムリミット3日前』
シャッフルの絆で突破せよ…レディ、ゴー!!

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