機動武闘伝Gガンダム 第22話「戦士の絆!デビル包囲網を突破せよ」考察

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1. あらすじ(ネタバレあり)

第22話「戦士の絆!デビル包囲網を突破せよ」では、決勝大会目前のネオホンコン行きを目前に控えたドモンたちが、師匠マスター・アジア率いるデビルガンダム軍団に包囲されたギアナ高地で決死の突破作戦に挑みますg-gundam.net。冒頭、前話からの続きでドモンのシャイニングガンダムはマスターガンダムとの再戦に臨みますが、空中で激突したシャイニングフィンガーダークネスフィンガーの大爆発の余波でシャイニングガンダムは地面に叩きつけられ、右手に深刻な損傷を負います。修行半ばのドモンは依然として師匠には敵わず、マスター・アジアと多数のデスアーミー(デビルガンダムの量産機)による追撃で絶体絶命となります。しかし、間一髪で覆面ファイターのシュバルツ・ブルーダー(ネオドイツ代表)が駆けつけ、ドモンたちを救援しました。

シュバルツの指示で、ドモン一行はネオロシアの大型艇(戦艦「ゴルビー」)まで撤退し態勢を立て直します。時を同じくして、ギアナ高地一帯は無数のデスアーミーと浮遊型のガンダムヘッド部隊によって完全包囲されてしまいました。ガンダムファイト決勝開始まで残り2日というタイムリミットが迫る中、一同は「ここを何としても突破してネオホンコンへ向かわねばならない」と利害の一致を確認し、それぞれの代表ガンダムで共闘することを決意します。ドモンの旧友でメカニックのレイン・ミカムラも加わり、マスター・アジアの包囲網を突破する作戦が開始されました。

作戦は、ネオロシア艦を拠点に各機が四方の防衛を担当し、その間に損傷したシャイニングガンダムの修理を終えて全機で一点突破する、というものでした。北側をシュバルツのガンダムシュピーゲルとサイ・サイシーのドラゴンガンダム、北東をチボデーのガンダムマックスターとジョルジュのガンダムローズ、南西を修理を終えたアルゴのボルトガンダムが守り、シャイニングガンダムはネオロシア艇上でレインとドモンが協力して修理を進めます。シャイニングの内部損傷は激しく、修復には半日を要する見込みでしたが、果たしてそれまで防衛線がもつかが勝負となりました。

やがてマスター・アジア率いる包囲軍の猛攻が開始されます。序盤こそ各ガンダムが健闘し迎撃しますが、陸海空から押し寄せるデスアーミー軍団の物量は凄まじく、倒してもキリが無い状態です。ついにはマスター・アジア自身も本隊を投入し、五人のファイターたちは圧倒的多数に次第に押され始めました。それでも全員が決死の覚悟で踏みとどまり、チボデーらは「全員揃って決勝の地へ行くためだ!」と奮起しながら必死に時間を稼ぎます。一方その頃、シャイニングガンダムの修理はレインとドモンの懸命な連携作業でなんとか完了間近となっていました。高熱を押して整備を続けたレインでしたがついに力尽きて倒れてしまい、ドモンは「今度は俺の番だ」と自ら手伝いながら修理を完遂します。

修理完了と同時に、シュバルツが仕掛けていた切り札が発動します。彼は単身で滝の上流へと向かい、あらかじめ川底に仕掛けておいた信号弾(照明弾)を囮の地雷に見せかけて点火。タイミングを見計らいガンダムシュピーゲルの両腕を高速回転させて滝壺に突撃し、ダムのようにせき止められていた大量の水を一気に解放しました。突如発生した濁流は凄まじい勢いで谷間を襲い、地形効果で高台に退避していた味方ガンダムは無事だったものの、包囲していたデスアーミー軍団の大半とマスターガンダムまでもがその大波に飲まれて流されます。こうしてシュバルツの奇策により包囲網の一角が崩れ、ドモンたちは辛くも脱出口を確保することに成功しました。

直ちに各陣営は脱出を開始します。アルゴとナスターシャは気絶したレインを保護してネオロシア艇で離脱し、チボデー、サイ・サイシー、ジョルジュも「決勝でまた会おう!」とドモンに約束して現場を後にしました。こうしてシャッフル同盟の仲間たちはなんとか全員生還を果たしますが、ドモン・カッシュただ一人、最後尾に残ります。仲間を逃がすため自ら殿(しんがり)を買って出たドモンは、「さあ…もう出てきたらどうだ!」と静かに呼びかけました。するとそれに応じるように、水没を耐え抜いていたマスター・アジアのマスターガンダムが姿を現し、「友を無事に往かせるために残るとは、まったく馬鹿な奴めぇ!」と嘲笑しながらドモンに最後の決闘を挑んできます。さらに地響きとともにデビルガンダム本体までもが地中から姿を現し、物語は次回「宿命の闘い!ドモン対デビルガンダム」へと続くのでした。

2. 登場キャラクター(ドモンの成長、シャッフル同盟メンバーの動き)

ドモンとシャッフル同盟の主要メンバー、そしてレインらサポートキャラ全員が総登場する賑やかな回です。シリーズ序盤では反目し合うこともあったライバル同士が、この第22話では共通の目的のため肩を並べて戦います。キャラクターそれぞれの見せ場を振り返りながら、ドモンの精神的成長や仲間たちの動きに注目してみましょう。

  • ドモン・カッシュ – 本作の主人公。序盤は一匹狼的だった彼も、シャッフル同盟の仲間たちと信頼関係を築きつつあります。今回は師匠マスター・アジアとの再戦に敗北し重傷を負う中で、自らの未熟さを痛感すると同時に仲間の大切さを学ぶ契機となりました。レインが高熱を押してまでガンダム修理に尽力する様子に心を動かされ、「何時かマスターと闘った時、お前も一緒に闘ってくれただろ?今度は俺の番だ」と彼女に告げて共に修理を完了させます。仲間を逃がすため一人残って殿を務めるというリーダーシップも発揮し、精神面で大きな成長を感じさせます(この判断にはマスター・アジアも「友を逃がすため残るとは馬鹿な奴め」と苦笑いするほどでした)。ラストでは目前にデビルガンダムを迎え撃つ覚悟を固めており、決勝大会直前に主人公として一回り成長した姿を見せています。
  • レイン・ミカムラ – ドモンの幼馴染でありメカニック担当。今回は戦闘こそしませんが、その働きは極めて重要でした。前話での負傷も癒えぬまま高熱に侵されながらもシャイニングガンダムの修理を急ぎ、朦朧としつつも最後まで諦めない姿は健気です。ついに倒れてしまった際にはドモンが自ら修理を引き継ぎ、「一緒に直そう…お前が指示をしてくれ、俺はその通りにする」と声をかけられたことで、ドモンとの強い絆が描かれました。最後は体力が限界に達し気絶しますが、ナスターシャに託されて無事脱出します(本人は最後までドモンと一緒に残りたがったようですが、仲間の厚意により安静を優先させられた形です)。
  • チボデー・クロケット – ネオアメリカ代表の熱血ボクサー。かつては負けず嫌いでドモンと張り合っていた彼も、いざ共闘となれば真っ先に協力を申し出る男気を見せます。敵に半日持ちこたえろという作戦に対し「5機のガンダムが協力すりゃ、それぐらい持つと思うがねぇ…え、いや、勘違いすんなよ!? お前の為じゃねぇぞ!レディのために言ってんだからな!」とツンデレ発言で皆を鼓舞したシーンは彼らしいユーモアでした。実際にはドモンのことも仲間として認めており、照れ隠しにレインの名を持ち出したのでしょう。戦闘ではガンダムマックスターで北東方面を死守し、撤退時にも「決勝で待ってるぜ、ドモン!」と最後まで仲間思いの姿勢を見せています。
  • ジョルジュ・ド・サンド – ネオフランス代表の騎士。常に優雅で冷静な彼も、この極限状況では熱く燃える闘志を垣間見せました。「騎士の誇りに賭けても私が先にドモンとの決着をつけさせてもらいます!」と宣言し、華麗なローゼスビットやフェンシング技術を駆使して優勢を保ちます。余裕さえ感じさせる戦いぶりで、デスアーミー兵を腕ひしぎで締め上げながら「さあ来い!」とドヤ顔を見せる場面もあり(実際に劇中ではジョルジュがデスアーミーをアームロックで極めつつ会話に加わるカットがあります)、生真面目な彼の意外な一面がコミカルに描かれていました。とはいえ「そのためにもここを守り通す!」という台詞には騎士らしい責任感と仲間への友情が込められており、最後は他のメンバー同様ドモンの無事を信じつつ撤退していきます。
  • サイ・サイシー – ネオチャイナ代表の若き少林拳使い。年少ゆえにやんちゃな彼ですが、今回は先輩ファイターたちと肩を並べ勇敢に戦いました。撤退前の会話では「でもねぇ!言っとくけど、決勝戦でドモンのアニキを倒すのはオイラだからねぇ!」と生意気に宣言し、仲間たちを笑わせています(実際に決勝大会では彼がドモンに肉薄する健闘を見せましたが、それは後の話…というメタなツッコミもあります)。ドラゴンガンダムではシュバルツとともに北側を防衛し、持ち前の敏捷さで敵を翻弄。年下ながらも「兄貴」ドモンへの尊敬と友情を胸に、最後は「また会おうな!」と元気に撤退していきました。
  • アルゴ・ガルスキー – ネオロシア代表の大柄な元宇宙海賊。寡黙で冷静な彼は、今回の作戦でも重要な洞察力を発揮します。追い詰められたドモンが合流しようとした際には「来るな! こいつらは囮だ…本隊は必ず別の場所に現れる!」と海賊時代の経験から敵の攪乱作戦を見抜きました。このアドバイスにより味方は無駄な被害を避け、本隊の奇襲にも対応できています。アルゴ自身もボルトガンダムで南西部の守りにつき、重装甲と怪力でデスアーミーをねじ伏せました。ネオロシアの上官が「ボルトだけでも脱出した方が…」と進言した際、彼はナスターシャの毅然とした叱責に黙って従い(アルゴも仲間を見捨てる気はさらさらなかったのでしょう)、最後まで仲間と運命を共にします。撤退時には気絶したレインを担いで保護し、ドモンに「レインは任せろ」と約束する場面もあり、不器用ながら優しさを見せました。
  • シュバルツ・ブルーダー – 謎の覆面ファイターでネオドイツ代表。その正体は不明ながら、ドモンにとって陰ながら支えとなる存在です。今回も序盤で颯爽と現れドモンたちを救出すると、即座に指揮を執って撤退ルートを指示しました。シュバルツ自身はガンダムシュピーゲルの忍者のような機動力を活かし、独断で奇策を実行します。彼の冷静沈着かつ大胆不敵な行動には味方も一瞬驚きますが、巨大な滝を利用した**「水攻め」(水計)**という古典的策略で大軍を一網打尽にした手腕は見事と言うほかありません。仲間たちからも「やってくれるじゃねえか、ネオドイツの野郎!」と称賛され、本人は姿を見せずとも縁の下の力持ちとして大活躍しました。最後は脱出する仲間に向け「決勝で待っているぞ、ドモン・カッシュ!」と声をかけ、ドモンに今後を託しています。
  • ナスターシャ・ザイツェフ – ネオロシア軍人でアルゴの監督官。普段は冷徹な彼女ですが、本作戦では指揮官としての器量と仲間への情を示しました。アルゴだけでも逃がそうと弱音を吐いた部下に対し「馬鹿者ぉ!!自分達だけが助かろう等、貴様は我がネオロシアに恥をかかせるつもりか!」と一喝し、全員での生還と勝利にこだわる姿は“古き良き東側軍人”の鑑とも言える信念です。彼女の決断力でロシアの戦艦や地雷など物資も惜しみなく投入され、共闘の立役者となりました。ドモンからレインを託された際には「レイン・ミカムラのことは安心しろ!ネオホンコンまでは私が責任を持つ!」と約束し、冷静かつ誠実に任務を果たしています。
  • マスター・アジア(東方不敗) – ドモンの師匠にして宿敵。本エピソードの敵側中心人物です。自らマスターガンダムを駆り、ドモンやシャッフル同盟を追い詰めました。序盤では弟子のドモンに対し容赦なくダークネスフィンガーを叩き込み、シャイニングガンダムを戦闘不能寸前に追い込む圧倒的強さを誇示します。しかし包囲戦ではあえて余裕を見せて遊んでいた節もあり、アルゴ曰く「マスターが本気で指揮を執っていれば勝敗は分からなかった」ほどでした。シュバルツの策略に対しては「ふふふ…小細工をしておるようだが、この東方不敗の前では無意味だ!」と高笑いしつつも、大洪水に巻き込まれてしまう一面も。終盤、水没から生還してなお「友を逃がすため残るとは馬鹿な奴」と嘲りながらドモンとの最終決戦に臨む姿には、不敵な師匠らしい風格と内心の動揺が入り混じっていました。

3. 登場モビルファイター(シャイニングガンダム、各国代表機体)

この回にはシリーズに登場する主要なモビルファイター(MF)がほぼ総登場し、それぞれが個性ある活躍を見せます。ドモンの愛機シャイニングガンダムを筆頭に、各国代表のガンダムファイターたちの機体が終結し、さらにマスターガンダムや大量のデスアーミーなど敵勢力のMFも現れました。以下、エピソード内で活躍・登場した主なモビルファイターとその見せ場を振り返ります。

  • シャイニングガンダム(ネオジャパン) – ドモンの搭乗機。序盤でマスターガンダムとの空中戦に挑み、シャイニングフィンガーで応戦しますが、師匠のダークネスフィンガーとの激突に敗れて右腕部を大破されました。機体内部も深刻な損傷を負い、一時戦線離脱します。レインとドモンの懸命な修理によって何とか復帰し、脱出の際には辛くも戦列に復帰しました。ただし、この時点でシャイニングガンダムは性能的に限界が近い状態であり(作中でも「内部がボロボロ」と言及)、次回以降、新たな機体への乗り換えが控えている伏線ともなっています。本話のラストでは修理明けにも関わらず、デビルガンダム本体との対峙に向けスタンバイする姿が描かれ、次回での最後の活躍に期待が高まる締めくくりとなりました。
  • ガンダムマックスター(ネオアメリカ) – チボデーの愛機でボクシングスタイルの近接戦を得意とします。今回はジョルジュのローズとコンビを組み、北東部の防衛ラインを担当。ビームラリアットや肩部のマシンガンで猛攻を仕掛けるデスアーミーを迎撃し、俊敏なフットワークで複数機を相手に互角以上の戦いを見せました。劇中ではマックスターが他のガンダムと協力して敵機を押し返すシーンが描かれ、チボデー本人の台詞と相まって熱いチームプレーを象徴しています。大破もなく戦闘をやり遂げたマックスターは、脱出時には自力で高台から飛び立ち、チボデーと共に無傷で次の決勝ステージへ向かいました。
  • ガンダムローズ(ネオフランス) – ジョルジュの搭乗機で、エレガントな騎士のガンダム。北東の防衛をマックスターと共に担当し、得意のローゼスビット(複数の飛翔ビット兵器)を展開して上空のガンダムヘッドを撃ち落とすなど大活躍します。さらに接近戦では細身のレイピアであるフェンシングモードに変形してデスアーミー数機を串刺しにするなど、華麗かつ冷徹な戦闘ぶりを披露しました。印象的なのは、一瞬敵を捕縛して動きを封じる腕関節技(いわゆる関節技)まで使っていたことです。ロボットアニメでありながらレスリングさながらのアクションで視聴者を驚かせつつ、ジョルジュの多才さを表現していました。ローズも最後まで大きな損傷なく戦い抜き、フランス代表としての面目を保っています。
  • ドラゴンガンダム(ネオチャイナ) – サイ・サイシーの搭乗機で、少林寺拳法をモチーフにした中国製ガンダム。北側の守りをシュバルツのシュピーゲルと共に担当し、高速飛行形態に変形して敵陣をかく乱しました。ドラゴンガンダムの武器である飛竜棍(フェイロンフラッグ)も遺憾なく発揮され、自在に伸縮する腕で複数のデスアーミーを巻き込み撃破しています。さらに必殺技の真・流星胡蝶剣の前兆として、ドラゴンクローから火炎放射で敵を薙ぎ払うシーンも挿入され、若きサイ・サイシーの成長が感じられます(この技は後のエピソードで完成版が披露されることになります)。総じてドラゴンガンダムは小柄な機体ながら敏捷性と技の多彩さで防衛戦に大きく貢献しました。
  • ボルトガンダム(ネオロシア) – アルゴが駆る重装甲のパワーファイター機体。19話でのドラゴンガンダムとの激戦で損傷していたためか、当初修理を優先されて作戦では南西部の守備に遅れて配置されました。しかしその巨体と怪力は健在で、現場到着後は巨大な**グラビトンハンマー(球状の鎖鉄球)**を振り回して地上のデスアーミー部隊を次々と粉砕します。重厚な盾と装甲で敵の攻撃をものともせず耐え抜く姿は、まさに鉄壁の要塞のようでした。ネオロシア軍の支援もあり、ボルトガンダムはゴルビー艦の護衛役も兼ねて奮戦します。脱出の際にはシャイニングガンダムと共に艦へ収容され空へ離脱しました。実はボルトガンダム単独なら大気圏ギリギリまで上昇してガンダムヘッドの攻撃を回避でき、単独脱出も可能だったようですが、アルゴとナスターシャは「新宿の借りを返したい」とあえて皆と協力する道を選んだと語られています。その背景もあって、ボルトは仲間と最後まで行動を共にしました。
  • ガンダムシュピーゲル(ネオドイツ) – シュバルツの搭乗機。“ゲルマン忍者”の異名を持つ黒いステルスガンダムです。高機動戦闘と隠密行動に長け、包囲戦では北側でドラゴンと組んで一通り戦った後、単機で戦線離脱して敵の裏をかく作戦に移りました。武器のシュトゥルム・ウント・ドランク(手裏剣)や光学迷彩の機能は本話でも健在でしたが、何と言っても最大の見せ場は滝を決壊させる奇策です。シュピーゲルの両腕をドリルのように回転させ滝壺に突入することで、一撃で自然のダムを破壊し大洪水を引き起こす離れ業をやってのけました。この大胆な戦法は他のどのガンダムにも真似できないシュピーゲルならではの活躍であり、大量の敵を一掃する決め手となりました。シュバルツは最後まで姿を見せず、シュピーゲルもそのまま脱出しましたが、その存在感は鮮烈でした。
  • マスターガンダム(ネオホンコン) – マスター・アジアの搭乗機。黒い巨体にマントを纏ったこのガンダムは、シリーズ屈指の高性能機です。冒頭では空中でシャイニングガンダムと激突し、必殺技ダークネスフィンガーをもってシャイニングのシャイニングフィンガーを圧倒しました。マスターガンダムのパワーとスピードはシャッフル同盟5機をも寄せ付けず、作中ではマスターが本気を出さなかったにも関わらずドモンたちは追い詰められています。また、マスターガンダムは生身の格闘戦も可能という異色の設定があり、今回は描写こそありませんが後半の肉弾戦を予感させる存在でした。大洪水に巻き込まれた際、一度は流されるものの機体の腕だけはシャイニングガンダムの腹部に突き刺さったまま残されていた描写があり(後述する新OP映像にもこのシーンが象徴的に使用されていますg-gundam.net)、その執念深さが伺えます。終盤では復活し、馬(風雲再起)は不在ながら単独でドモンに最後の戦いを挑むべく立ちはだかりました。
  • デビルガンダム(DG細胞の怪物) – ネオジャパンが生み出した不死身の究極兵器。未来世紀の陰謀の中心にある巨大な敵モビルファイターです。本話では終盤、地底から不気味な咆哮と共にデビルガンダム本体が姿を現す衝撃的な展開となりました。それまで配下のデスアーミーとガンダムヘッドで攻勢をかけていたデビルガンダムでしたが、自身が地上に現れるのは第16話以来となります。大地を割って現れた異形の姿に、さしものドモンも驚愕します。なお、デビルガンダムは自己再生・自己進化能力を持ちますが、今回の洪水作戦で自然の猛威に流されたことから、まだ完全には環境適応しきれていない状態であることが示唆されました。この登場は次回以降のドモンとの直接対決を盛り上げる重要な伏線となっています。
  • デスアーミー & ガンダムヘッド – デビルガンダム軍団の量産機たち。デスアーミーは人型の無人機(もしくはDG細胞に侵された兵士が搭乗)で、本話では100機を優に超える大群が押し寄せ、シャッフル同盟を苦しめました。四足獣型や航空機型への変形能力も持ち、陸海空から攻めてくるその様は「こんな包囲網を突破できるのか…」と圧倒されるほどです。一方、ガンダムヘッドは頭部だけの浮遊型MFで、ビーム砲台のように空中から攻撃してきます。劇中ではカメラアイからビームを発射し、耐久力も高く、ネオロシア艦や各ガンダムを翻弄しました。これら雑兵メカは本作ではやられ役として控えめな存在でしたが、今回ばかりは主役級の活躍(?)を見せ、視聴者に圧倒的物量戦の迫力を印象付けました。ただ、ギアナ高地で膨大な損耗を出したためか、この後しばらくデスアーミーの出番は最終決戦までなくなります。それほど今回の戦いが熾烈だったということでしょう。

4. 技・演出(新技の予兆、演出の工夫)

第22話の戦闘シーンは、演出的にも見どころが満載です。まず冒頭のドモンとマスター・アジアの一騎打ちでは、シリーズを象徴する必殺技の激突が描かれました。空中で交錯するシャイニングフィンガーダークネスフィンガーはまさに師弟対決のハイライトであり、両者の手が触れた瞬間に放たれる眩い閃光と大爆発は視聴者の度肝を抜きます。この演出により、「ドモンにはまだ師匠に及ばない」という実力差が一目で示されました。同時に“光と闇”の手の対比は、のちにドモンが編み出す新必殺技の伏線ともとれます。マスター・アジアの闇の拳に対抗するには、それを超える新たな技が必要だ…というメッセージが隠されているかのようです。

包囲戦全体を通しては、集団戦の緊張感熱い友情演出が巧みに盛り込まれています。ガンダムシリーズでは珍しいヒーロー5人のチームバトルだけに、各所で燃えるような演出が光りました。例えば防衛線でのやり取りでは、敵に囲まれ絶望的な状況にも関わらずチボデーたちが軽口を叩き合います。「おい、余裕じゃねぇか!こんな時に思い出し笑いか?」「いえ?考えてみれば、我々は決勝大会にも行かず、何故こんなことをやっているのかと思いましてねぇ?」といった具合に、互いを励まし合うコミカルな会話が挟まれ、シリアス一辺倒になり過ぎない工夫がなされています。これはピンチの中でも士気を保つためにあえて陽気に振る舞っていることを表現すると同時に、視聴者にも緩急をつけて飽きさせない演出意図と言えるでしょう。キャラクターの掛け合いで友情の深まりを感じさせつつ、次の激戦への緊張を高める巧みなバランスです。

特筆すべきは、シュバルツ・ブルーダーの用いた**「水攻め」の奇策**です。滝を利用して敵を殲滅するという大胆不敵な戦法は、まるで中国の古典戦術「水計」を彷彿とさせ、武侠や戦記モノのテイストをガンダムに持ち込んだ斬新な演出でした。滝壺に突入するシュピーゲルのカットでは、水流のエフェクトとともに画面全体が激しく揺れ、爆発とは違う“自然災害”の迫力を表現しています。巨大ロボット同士の戦いに自然の力を絡めることでスケール感が増し、マンネリを打破する爽快感が生まれました。結果として「敵味方入り乱れる大乱戦を、知略でひっくり返す」という痛快なカタルシスを視聴者に提供しており、本作ならではの熱さと意外性に満ちた名シーンとなっています。

さらに、本エピソードでは劇中で挿入歌が効果的に使用されている点にも注目です。デスアーミー軍団との戦闘シーンでは、シリーズ初披露となる挿入歌「勝利者たちの挽歌」(歌:大山修司)が流れ、映像に熱いボーカル曲が重なることで盛り上がりは最高潮に達しました。この曲は勝負の行方が見えない絶体絶命の場面に勇壮さを与え、まさに“勝利者の凱歌”として観る者の胸を震わせます(ファンの間では「ああガンダム」の愛称で親しまれる名曲でもあり、田中公平氏渾身の一曲です)。特に5人が「全員揃ってネオホンコンへ行くために!」と絶叫するシーンでは曲調が一段と昂り、映像と音楽のシンクロが鳥肌ものの演出効果を生みました。当時のロボットアニメでは挿入歌による演出が流行していましたが、本作でもその手法を用いてドラマチックに盛り上げているわけです。

細かな演出面でも見逃せない工夫があります。例えば、シャッフル同盟の5人それぞれに与えられたトランプの紋章(ハート、クラブなど)が、各キャラの活躍シーンでさりげなく背景に浮かび上がる演出があり(新宿編で継承した紋章が光るカットの再現)、彼らの結束を視覚的に表現していました。さらに、キャラクターの表情作画にも力が入っており、ナスターシャが部下を叱責するシーンでは瞳に炎が宿るような迫力ある描写で迫真の演技を際立たせています。作画監督・西村誠芳氏の手腕によるものですが、こうした細部の熱量も合わさって視聴者のテンションを高く維持してくれます。

そして忘れてはならないのが、“新技の予兆”とも言える演出でしょう。物語終盤、ドモンが仲間を逃がして単身マスター・アジアと対峙した場面は、次回以降への大きな布石になっています。ドモンはギリギリまで修行を続け(劇中でもシュバルツとの特訓描写がありました)、極限状態の中で何かを掴みかけている様子が描かれました。実際、次回ではドモンが「明鏡止水」の境地を会得して真のスーパーモードを発動させることが明かされますが、本話のラストの引きで見せた静かな闘志と集中した表情は、その覚醒の瞬間が近いことを予感させるに十分でした。「師匠を超えるには心を静め極限まで高めねばならない」というテーマが画面越しに伝わってくるようであり、シリーズ全体を通したドモンの成長ドラマに繋がる重要な演出意図が感じられます。

5. 名シーン・名セリフ

本エピソードは熱い名台詞や心に残る名場面の宝庫です。視聴済みのファンなら思わずニヤリとしてしまう、印象的なセリフの数々をいくつかピックアップしてみましょう。

  • チボデー・クロケット: 「たったの半日だろ⁉ 5機のガンダムが協力すりゃ、それぐらい持つと思うがねぇ…え、いや、勘違いすんなよ⁉ お前のためじゃねぇぞ!レディのために言ってんだからな!
    包囲網を前に共闘を提案する際、素直になれず照れ隠しに放ったチボデー節全開の名セリフ。実はドモンを想っているくせに「レディ(レイン)のため」と言い張るツンデレぶりが微笑ましく、仲間たちにも視聴者にもクスリと笑いを提供した。
  • ドモン・カッシュ: 「何時か、マスターと闘った時、お前も一緒に闘ってくれただろ? 今度は俺の番だ。
    高熱で倒れかけたレインに対し、ドモンが掛けた優しい言葉。新宿で自分を支えてくれたレインへの感謝と信頼が込められており、この一言でレインも思わず「ええ…?」と涙ぐんだ様子だった。いつも不器用なドモンが初めて見せた心からの思いやりのシーンでもあり、二人の絆を象徴する名場面。
  • ナスターシャ・ザイツェフ: 「馬鹿者ぉ!! 自分達だけが助かろう等、貴様は我がネオロシアに恥をかかせるつもりか!
    逃げ腰になった副官を一喝した場面でのセリフ。冷静沈着なナスターシャが声を荒らげる珍しい瞬間で、その迫力は画面越しにも伝わる。「自国の名誉と威信を懸けて戦え!」という気迫あふれる叱責は、彼女の信念と誇り高さを示す名シーンとなった。言われた部下も思わず「は、ははっ…!」と返事するしかなかったほど。
  • シャッフル同盟(5人): 「そう! 全員揃ってガンダムファイト決勝の地、ネオホンコンへ行くためにっ!!!
    チボデー、ジョルジュ、サイ、アルゴの4人(+ドモン)が声を揃えて放った熱すぎる掛け声。戦況は不利でも心は一つ、「全員で生き延びて決勝に行こう」という強い意志が伝わってくる。シリーズでも屈指の燃える名場面であり、思わず視聴者も拳を握り締めたであろう魂の雄叫び。「戦士の絆」というサブタイトルを体現した瞬間でもある。
  • マスター・アジア: 「友を無事往かせる為に残るとは、つくづく馬鹿な奴めぇ!!
    仲間を逃がすため一人残ったドモンに対し、マスターが投げかけた嘲笑のセリフ。しかしその裏には愛弟子の成長を認めるかのような含みも感じられ、東方不敗の複雑な心境が伺える一言だ。まさに師匠らしい憎まれ口であり、ラストバトル前の名台詞として視聴者の記憶に刻まれた。

この他にも、各人の決意や掛け合いが光る名シーンが散りばめられており、第22話はシリーズ屈指の“名言オンパレード回”と言っても過言ではありません。

6. 裏話・制作トリビア(設定資料、インタビュー、関連書籍など)

公式資料やスタッフ・声優の証言から、本エピソードに関する興味深い裏話や制作上のトリビアをいくつかご紹介します。

  • 制作スタッフと放送当時: 第22話の脚本を担当したのは志茂文彦氏、絵コンテ(ストーリーボード)は後に『コードギアス』などで有名になる谷口悟朗氏が手掛けています。谷口氏は当時まだ若手演出家でしたが、緊迫の包囲戦と痛快な逆転劇というドラマティックな展開を見事に描ききりました。また、演出は西村誠芳氏、作画監督は不明(おそらく西村氏が兼任)ながら、キャラクターの表情からメカアクションまでハイクオリティにまとめあげています。放送日は1994年9月16日で、ちょうどシリーズ中盤のクライマックスとして位置付けられる回でした。
  • シリーズ初の大規模戦闘: 本作は基本的に各話1対1のガンダムファイトが描かれることが多いですが、第22話では珍しく「5対軍団」という大規模戦闘がフィーチャーされました。スタッフも作画や演出面で苦労したとされますが、結果として集団戦の燃える魅力が十分に発揮されています。「強豪国のガンダムファイターたちが組めば一騎当千も夢ではない」という劇中設定が証明される一方、物量には勝てず追い詰められる展開もリアルに描かれ、緊張感あるバトルとなりました。この戦いで敵デスアーミーを大量に消耗させたため、以降しばらく雑兵MSの出番が無くなる(最終決戦まで登場しない)というシリーズ構成上の変化も起きています。まさに文字通り“死闘”だったことを裏付ける裏話と言えるでしょう。
  • 新宿編からの路線変化: シリーズ構成上、第12話でマスター・アジアが登場して以降、『Gガンダム』は物語の熱量が一気に上がったと言われます。監督の今川泰宏氏自身も序盤は手探りだったが、師匠登場以降「作品が目覚ましい変貌を遂げた」と語っており、第22話はまさにその勢いの中にあります。ドモンが熱血ヒーローに成長し、各国ガンダムも個性が際立ち、拳を交えることで友情が深まる――そんな“今川流”の暑苦しくも痛快なノリが本編で全開になったのがこのギアナ高地編です。実際、30周年記念の解説でも「23話・24話(デビルガンダムとの激突やゴッドガンダム誕生)は今川流ダイナミズム溢れる傑作」と評価されており、それを目前に控えた22話もシリーズのターニングポイント的エピソードとして位置付けられています。
  • コミックボンボン版の展開: 本エピソードの内容は、当時連載されていたときた洸一氏作画のコミカライズ版(コミックボンボン連載)にも登場します。ただし漫画版では全13話に物語を凝縮しているため、ギアナ高地での戦いは**「Round 6 激闘!ギアナ高地の激戦」**にまとめられ、アニメの数話分を短縮した展開となりました。それでもシャッフル同盟が共闘する熱い展開や、ドモンが明鏡止水を会得していく流れはきちんと描かれており、バトルシーンも丁寧に再現されています。漫画版はおおむねアニメ本編のストーリーラインを踏襲していますが、細部では省略や独自解釈もあるため、アニメで感じた迫力を紙面でどう表現しているか読み比べてみるのも一興でしょう。
  • 挿入歌「勝利者たちの挽歌」秘話: 劇中で印象的に使われた挿入歌「勝利者たちの挽歌」は、作曲・編曲の田中公平氏が本編に込めた熱量に応える形で生まれた名曲です。実はファンの間ではそのサビの印象から「ああガンダム」との愛称で親しまれ、Gガンダム楽曲の中でも特に人気が高い一曲となっています。歌詞に登場する“ガンダム”というフレーズと勇ましいメロディが耳に残り、第22話の盛り上がりに大きく貢献しました。また、当時発売されたドラマCD『新香港的武闘戯曲』にも収録されており、声優陣の熱演と併せて聞くことでより作品世界に浸れるとされています。ちなみに挿入歌としては他にも「星屑のレクイエム」(雨宮レイン役の天野由梨さんが歌唱)なども本編で使われていますが、本話では未使用です。勝利者たちの挽歌は初使用回ということもあり、監督の今川氏も「歌まで使って盛り上げるしかない!」という思いだったのかもしれません。
  • マスター・アジアと東方不敗: マスター・アジアこと東方不敗の設定には、監督・今川泰宏氏の香港カンフー映画愛が色濃く反映されています。キャラクター名の「東方不敗」は香港映画『スウォーズマン/笑傲江湖II』の日本公開タイトル(および登場人物)から取られており、愛馬「風雲再起」やデビルガンダム四天王の名前も香港映画のタイトルやキャラクターに由来しています。例えば風雲再起(ふううんさいき)は直訳すると「Storm and Revival」で、香港映画『風雲』シリーズを彷彿とさせるネーミングです。こうした背景知識を踏まえて観ると、東方不敗がどことなくカンフー映画の師匠キャラのような立ち居振る舞いで描かれている理由に合点がいくでしょう。なお、制作当時のインタビューで今川監督は「もし武器を色々持たせてしまうと、フィンガー系必殺技が霞んでしまうから本編ではあえて東方不敗流は武器を使わない設定にした」と語っており、それもまた香港武術における“拳で語る”美学を意識したものかもしれません。
  • OP映像の伏線: 後期オープニングテーマ「Trust You Forever」の映像には、本エピソードから次エピソードにかけての出来事を象徴するカットが含まれています。それが、ギアナ高地に残されたシャイニングガンダムのシーンですg-gundam.net。実は第23話でドモンはシャイニングを捨てる形でゴッドガンダムに乗り換えることになるため、シャイニングガンダムはギアナの地に朽ち果てて残される運命にあります。監督の今川氏は「シャイニングガンダムにも最後にもう一花咲かせてやりたい」という思いから、後期OPにその印象的なイメージカット(ギアナ高地に突き刺さったマスターガンダムの腕とシャイニングガンダム)を入れたと述懐していますg-gundam.net。ファンの間では有名な演出で、ゴッドガンダムがシャイニングを抱えて運ぶシーンなども合わせ、当時玩具CMなどでも再現され話題となりました。このようにOP映像にも本編のドラマを補完するトリビアが隠されており、改めて注目してみると興味深いポイントです。

7. 解説・考察(ドモンの精神的成長とリーダー性、共闘演出の意味、新技の伏線としての演出意図)

第22話「戦士の絆!」は、物語上の盛り上がりや演出面の魅力だけでなく、テーマ的にも非常に重要な意味を持つ回です。ここではドモンの精神的成長やリーダーとしての資質、仲間との共闘がもたらすドラマ性、新必殺技への伏線といった側面を考察してみます。

まず注目すべきは、ドモン・カッシュの精神的成長とリーダー性の芽生えです。これまでドモンは師匠への復讐と兄キョウジ捜索という個人的使命に突き動かされ、孤高の戦士として戦ってきました。しかしシャッフル同盟の仲間と出会い、各地で友情を育む中で徐々に変化が現れます。第22話ではその成果が如実に表れており、ドモンは仲間たちに支えられるだけでなく自ら仲間を支える存在へと成長しています。冒頭では再び師匠に敗北し己の未熟さを痛感したドモンですが、逃走中に「皆のために絶対生き延びる」と心に決め、仲間たちに共闘を呼びかけました。さらに負傷・発熱したレインの献身に触れ、「今度は俺が助ける番だ」と優しく声をかけるシーンには、彼の内面的な成熟が表れています。以前のドモンならば感謝もせず一人で突っ走ったかもしれませんが、この回ではちゃんと仲間を信頼し、自分にできること(ガンダムの修理など)を協力して行う柔軟さを見せました。

極め付けは、仲間を逃がすため自ら殿を引き受けた判断です。死地に一人残り敵と対峙する選択は命懸けであり、本来ならリーダー自らがやる必要はありません。しかしドモンは「自分が引き受ける」と迷わず行動しました。この自己犠牲的なリーダーシップの発露こそ、ドモンが単なる熱血漢から“背中で仲間を守る男”へと成長した証といえます。マスター・アジアがその行動を「馬鹿な奴め」と嘲笑しつつも、どこか感心しているように見えたのも興味深い点です。師匠としては、教え子が仲間のために命を懸けるほど成長したことに内心嬉しさすらあったのかもしれません。ドモンのこうした成長は、ガンダムファイト本来の“各国の代表として背負うもの”にも通じ、単なる個人的闘争を超えてヒーローとしての風格を帯び始めたとも言えるでしょう。

次に共闘演出の意味と時代背景について考えてみます。ガンダムシリーズといえば基本は一国の主人公が仲間と共に敵勢力と戦う戦争劇ですが、『Gガンダム』は特殊で、各国代表同士がライバルでもあり仲間にもなるという設定です。第22話はまさにその“ライバルが手を組む”展開を描いた回であり、視聴者に痛快なカタルシスを与えると同時に物語上も重要なメッセージを含んでいます。それは「真の強さは友情や信頼といった絆から生まれる」というテーマです。タイトルが示す通り、戦士たちの絆が奇跡を起こし、絶望的な包囲網を突破するに至ったストーリーは、少年向け作品として非常に王道的でありながら胸が熱くなる展開でした。各国の誇りや利害を超えて協力し合う姿は、当時の視聴者にとっても爽快だったはずです。冷戦終結から数年、国際協調ムードがあった90年代半ばの時代背景も相まって、「国は違えど解り合える」「力を合わせれば不可能も可能に」というメッセージはポジティブに受け止められたでしょう。

また、ドモンと仲間たちの共闘にはシリーズ全体のストーリー上の布石も感じられます。この後、ドモンたちは決勝大会で再びライバル同士として雌雄を決する運命にあります。しかし一度生死を共にした彼らには、もはや憎しみではなく固い友情と相互尊敬が芽生えています。つまり決勝大会での戦いは「仲間同士が胸を貸し合う、さらに高みを目指すための戦い」という位置づけになり、単なる国同士の代理戦争以上のドラマ性が付与されました。第22話の共闘が無ければ、決勝トーナメントでの彼らの戦いはもっとギスギスしたものになったかもしれません。お互いが助け合った経験があるからこそ、優勝を争う戦いでも爽やかなスポーツマンシップが生まれる土壌ができたのです。この点、脚本の巧みさと言えるでしょう。

さらに、新必殺技への伏線と演出意図という観点では、ドモンの“覚醒”に注目せざるを得ません。本エピソード終盤の状況は、ドモンに極限までプレッシャーを与えるものでした。師匠との直接対決、初めて目の当たりにするデビルガンダム本体、仲間は誰もいない孤立無援の戦場――肉体的・精神的にこれ以上ないほど追い詰められた状態です。しかし、だからこそドモンはここで殻を破る必要に迫られたとも言えます。実際、第23話ではドモンが長年の修行と極限状況で「明鏡止水」の境地に到達し、シャイニングガンダムの真・スーパーモード(究極のモード)を発動させます。この大覚醒は第22話の延長線上にあるもので、言わば**「仲間との絆と覚悟がドモンを新たな高みに導いた」**結果です。単にピンチだからパワーアップするというご都合主義ではなく、ここまで積み重ねてきた人間ドラマ(師匠との確執、仲間との信頼、レインとの絆)があって初めて成し遂げられる必然の覚醒だった点がポイントでしょう。

演出的にも、第22話でドモンが仲間から託された思いを背負い一人立つラストシーンは、新必殺技誕生への最高の溜めになっています。あの静かな闘志の炎を揺らすカットから次回の爆発的なスーパーモード発動への流れは、多くのファンにとって忘れられない名シークエンスです。実際、30周年記念記事でも「23話・24話は傑作」と評されるほどで、22話でピークに達したドラマがそのまま次のクライマックスへ雪崩れ込む構成は見事というほかありません。

最後に、この回を振り返ると**“戦士の絆”の演出意図**がシリーズ最終盤にまで響いていることに気付かされます。終盤のネオホンコン決勝大会~デビルガンダム最終決戦でも、ドモンは多くの仲間たち(他国のファイターや師匠、そしてレイン)と心を通わせながら戦っていきます。特に最終話で描かれる〈石破ラブラブ天驚拳〉という究極技は、愛する者同士の心が通じ合ってこそ放てる必殺技でした。第22話で提示された「絆によるパワー」こそ、最終的には世界を救う力になるというのは本作全体の大きなテーマであり、本エピソードはそのテーマを先取りして象徴的に描いたエピソードだったとも言えるでしょう。ドモンがこの時流した熱い友情の汗と涙は、やがて愛と奇跡のフィナーレへと繋がっていくのです。

総合すると、第22話「戦士の絆!」は単なる中盤の盛り上げ回に留まらず、主人公ドモンの成長物語と“友情・信頼”という作品テーマを凝縮した重要回でした。ガンダムシリーズの中でも異色と言われる『Gガンダム』ですが、その核にある熱いドラマは王道そのものであり、多くのファンの心に残る理由がここにあると感じられます。

8. 筆者コメント(あとがき)

改めて第22話を見返してみると、当時子供心に感じた興奮と感動が一気に蘇ってきました。シャッフル同盟の5人が勢揃いで共闘する様子は、今見ても胸が熱くなりますし、各キャラクターの掛け合いや見せ場の連続に30分間ずっとワクワクしっぱなしです。あれから歳月が経ち、作品誕生から30年近く(※2024年でGガンダム放送30周年)が経ちましたが、それでも色褪せないどころか、むしろ大人になった今だからこそ物語の奥深さや演出の巧みさに気付かされる部分もありました。

例えばチボデーの台詞一つとっても、子供の頃は「強がってるけど本当は良いヤツなんだな」程度にしか思わなかったのが、今見ると彼なりの照れ隠しや仲間への気遣いが微笑ましく映ります。そしてドモンとレインの絆の描写にはやはりグッと来てしまいます。当時は「なんだか恥ずかしいな」と感じた二人のやり取りも、今では素直に「いいシーンだ…」と感じられるから不思議です。歳を重ねて作品に戻ってくると、新しい発見や当時気付けなかった感動があるものですね。

演出的な面でも、今川監督の情熱がほとばしるような作り込みに改めて舌を巻きました。シュバルツの滝崩壊シーンなど、「これ本当にセル画で描いてるのか!?」というくらい手間のかかった映像で、当時のサンライズの本気度が伝わってきます。作画崩れも無く(むしろレインが美人に描かれていたりして!)、声優さん達の熱演も相まって、本当に見応え満点の回だったと思います。

あとがきとして個人的な思い出を語らせていただくと、リアルタイム視聴時、この第22話は友達同士でも話題に上る人気回でした。翌日学校で「5人が一緒に戦ったの超アツかったよな!」とか「滝バーン!やばかった!」とか大盛り上がりしたのを覚えています。それだけインパクトが強かったということでしょう。それから年月を経て、今度はネット上で世界中のファンと感想を語り合える時代になりましたが、やはり皆この回のことは熱く語っていて、「世界中のガンダムファンが戦うアニメ」という当初のコンセプトが、視聴者の世界でも実現しているようで面白いなと感じます。

今回は久々に『Gガンダム』第22話を掘り下げてみましたが、書ききれなかった魅力もまだまだ沢山あります。ぜひ皆さんも機会があれば本編を見直していただき、あの熱い戦いと感動を再び味わってみてください。きっと懐かしさと新たな発見が入り混じった、不思議な体験になると思います。それでは、この辺で筆を置かせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました!

9. 次回予告

次回、第23話「宿命の闘い!ドモン対デビルガンダム」!遂に姿を現したデビルガンダム本体と、情け容赦ない猛攻を仕掛けてくる東方不敗マスター・アジア。追い詰められるドモン…しかし、その時ドモンの拳が輝きを増す!長き修行の果てに掴んだ明鏡止水の境地、そして究極のスーパーモードが炸裂する!ドモンは宿命の敵に勝利し、新たなる輝きの中で立ち上がることができるのか!? 機動武闘伝Gガンダム、「宿命の闘い!ドモン対デビルガンダム」…レディ、ゴー!!

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