第23話「宿命の闘い!ドモン対デビルガンダム」

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第23話「宿命の闘い!ドモン対デビルガンダム」では、ついにドモンとマスター・アジアがギアナ高地で最後の直接対決に臨みます。デビルガンダム本体も完全復活を遂げて姿を現し、ドモンは愛する師・マスター・アジアとの決別と、宿敵デビルガンダム打倒という二つの宿命に挑むことになります。シャッフル同盟の仲間たちは決勝大会のため先にネオホンコンへと向かい、ドモンはひとり残って師匠との決着に挑みました。しかし、この時点でドモンの「修行」はまだ完全には成就しておらず、実力差は歴然。序盤からマスターガンダムの猛攻に押され、追い詰められてしまいますg-gundam.net。焦燥感と復讐心に駆られたドモンは、シュバルツ・ブルーダーの忠告を無視して怒りに任せた**「怒りのスーパーモード」**を発動し、形勢逆転を図ろうとしますg-gundam.net。だがこれはマスター・アジアの狙い通りの展開でした。激情に飲まれたドモンの動きは隙だらけとなり、エネルギー消耗も激しくなったところをマスターガンダムに痛烈な反撃を受けてしまいます。怒りに燃える“赤いスーパーモード”はパワーはあるもののコントロールが効かず、ドモン自身を危機に陥れる諸刃の剣だったのです。絶体絶命の窮地に追い込まれたドモンでしたが、その命を救ったのは再び現れた謎の覆面ファイター、シュバルツでした。彼の駆るガンダムシュピーゲルが間一髪で割って入り、ドモンをかばって致命打を防いだのですg-gundam.net。しかし激闘の代償は大きく、シュバルツのガンダムシュピーゲルはこの戦いで大破してしまいましたg-gundam.net。瀕死の重傷を負いながらもドモンに語りかけるシュバルツの必死の叫びに、ドモンはハッと我に返ります。「ドモン!思い出せっ!あの時を、あの洞窟での一瞬を、明鏡止水の一瞬を!!」――その言葉は、これまで積んできた修行の中でドモンが掴みかけていた心の境地を呼び覚ましました。ドモンの心の奥底で何かが静かに目覚め、怒りに曇っていた瞳が澄み切っていきます。やがてドモンはついに“明鏡止水”の心境に到達し、真の意味で修行を完成させるのですja.wikipedia.org

覚悟を決め静かな闘志を湛えたドモンは、黄金のオーラを全身にみなぎらせた**「真のスーパーモード」を発動します。シャイニングガンダムの白い装甲はドモンの精神エネルギーに呼応して金色に輝き、マスターガンダムの必殺武器「マスタークロス」すらも受け止め帯のように身体に巻き付けてしまう荘厳な姿へと変貌しました。まさに心が澄み渡った“明鏡止水の境地”を体現した姿であり、その神々しさは仏像を思わせるほどです。一転して冷静さを取り戻したドモンはもはや無駄な殺気や怒りに振り回されることがなくなり、緻密かつ力強い攻撃で圧倒します。マスター・アジアも「この儂(わし)が…手も足も出せんという事があってたまるかぁっ!?」と驚愕しますが、弟子の爆発的成長を目の当たりにして為す術なく打ち倒されていきました。「消える…俺の怒りと悲しみ…復讐は消えていく…!」ドモンは静かにそう呟き、心に巣食っていた憎しみが消え去ったことを実感します。宿命の宿敵だったデビルガンダムに対しても、ドモンはもはや激情に駆られることなく真正面から挑みました。放たれた無数のガンダムヘッド(デビルガンダムの分身兵器)もドモンの前には足止めにならず、シャイニングガンダムの渾身のシャイニングフィンガー**がデビルガンダム本体に突き刺さります。極限まで高められたエネルギーが流し込まれるとデビルガンダムは耐えきれずオーバーロードを起こし、「兄」キョウジごと内部から爆散していきました。ついにドモンは長年追い求めてきた宿敵・デビルガンダムを撃破し、因縁に一応の決着をつけるのです。

デビルガンダムを失ったマスター・アジアは呆然と立ち尽くします。「あぁ…儂の、儂のデビルガンダムがぁ…!」。しかしそれでも闘志を捨てない彼は満身創痍のシャイニングガンダムに最後の猛攻を仕掛け、ドモンを再び窮地に追い込みます。そこへ重傷のシュバルツが立ちはだかり、「見苦しいぞマスター・アジアぁ…お前はかつての弟子に敗れたのだ…!」と叱責しました。その瞬間、シュバルツの仮面が砕け落ち、素顔が露わになります。マスター・アジアがその顔を見て愕然。「貴様っ?!ま、まさかっ!?」――それは今しがたデビルガンダムと共に散ったはずのキョウジ・カッシュそっくりだったのです。こうして壮絶な死闘の幕は下ろされましたが、シュバルツの正体を巡る謎を残したまま物語は次の舞台・ガンダムファイト決勝大会へと移っていきますja.wikipedia.org

登場キャラクター(特にシュバルツ・ブルーダーとドモン・カッシュ)

ドモン・カッシュ – 本作の主人公であり、第13回ガンダムファイト・ネオジャパン代表ファイター。第23話では心身ともに大きな成長を遂げます。幼い頃から師として慕ってきた東方不敗マスター・アジアがデビルガンダムに与(くみ)していたという裏切りに怒りと悲しみを抱え、また実の兄キョウジへの復讐心にも燃えていたドモンは、序盤こそ激情に駆られて暴走してしまいました。しかし、盟友シュバルツの犠牲と必死の呼びかけによって自分を取り戻し、**「明鏡止水の心」**すなわち一切の怒りや迷いを捨て去った澄みきった境地に達します。結果として長らく追い求めてきた仇敵デビルガンダムをついに打倒し、同時に“復讐に囚われた戦い”にも終止符を打つという精神的な転機を迎えました。「消える…俺の怒りと悲しみ…復讐は消えていく…!」との独白が示すように、ドモンはこの瞬間、自身を苦しめてきた負の感情を乗り越え、真の意味で戦士として一皮むけたのです。この大きな成長はファンにとっても喜ばしい瞬間であり、以降の物語でドモンはさらに新たな力(ゴッドガンダムへの乗り換え)と共に、真のヒーローへと駆け上がっていきます。

シュバルツ・ブルーダー – ネオドイツ代表の覆面ガンダムファイターで、ゲルマン忍術を操る謎多き男。ドモンにとっては幾度も窮地を救ってくれた恩人であり、時に勝負を通じて大切な教えを授けてくれる**“もう一人の師匠”的存在です。第23話でも、シュバルツはガンダムシュピーゲルで戦線に乱入し、命懸けでドモンを庇って致命傷を負いながら、最後まで彼の闘志を導き続けました。「堪えろ、ドモン!怒ってはならん!奴はお前を挑発して怒りのスーパーモードを使わせようとしているんだ!」と必死に諭し、修行で掴みかけた心の平静を思い出させようとします。ドモンは一度は言うことを聞かず暴走しましたが、瀕死のシュバルツが振り絞った「ドモン!思い出せっ!あの時を、あの洞窟での一瞬を!!」という決定的な叫びによってついに目覚めるのです。このように、シュバルツはドモンに“明鏡止水”の極意を悟らせるための導き手**となりました。その正体は物語後半で明かされますが、実はドモンの兄・キョウジの意志を宿した存在(DG細胞製のアンドロイド)でありja.wikipedia.org、ドモンを陰から支えるために送り込まれていたのです。第23話ではシュバルツの声にドモンがどこか懐かしさや温かみを感じたり、仮面が割れて露わになった素顔を見てマスター・アジアが「まさかキョウジ…?!」と愕然とする描写などから、視聴者には彼の正体が早くも強く示唆されました。クールな忍者ファイターとして登場したシュバルツですが、その根底には兄の愛情とドモンへの思いやりが秘められていたと考えると、彼の言動の一つ一つが感慨深く感じられます。


シュバルツ・ブルーダーは謎の覆面戦士として登場。第23話では負傷して仮面が割れ、ドモンの兄キョウジそっくりの素顔が一瞬映る。この時点で視聴者には彼の正体に勘付いた人も多いだろう。

東方不敗マスター・アジア – ドモンの師であり、第12回ガンダムファイト優勝者という伝説的な格闘家。物語前半ではドモンの良き師匠として登場しましたが、実は人類粛清を目論むデビルガンダム側についていたことが判明し、ドモンにとって最大の宿敵となります。第23話ではマスター・アジアがデビルガンダムと共にドモンの前に立ちはだかり、「怒りに囚われた未熟なドモンなど自分の敵ではない」と侮りながらも、あえてドモンに怒りの力を使わせて追い詰めようと画策しました。その底意地の悪い挑発ぶりは師弟の情を踏みにじる残酷さで、ドモンを精神的に極限まで追い詰めます(「いいや、怒るのだぁ!…怒れ怒れ怒れ!怒り狂え!!」とマスターがドモンを煽るシーンは視聴者の印象にも強く残ります)。しかし結果的にドモンは怒りを捨て去り真の実力を開花させ、マスターガンダムを打ち破りました。この時マスター・アジアは「東方不敗」の異名を持つ自分が弟子に敵わなくなった現実に直面し、「弟子離れできていなかった**(※注:いつまでも自分が上だと思い込んでいた)**のはマスター自身だった」という皮肉な描写もなされています。デビルガンダムを失い敗北を喫したマスターはその後もなお戦意を失わずドモンに襲いかかりますが、駆け付けたシュバルツに制止されました。彼の物語はこの先も続き、第45話「さらば師匠!マスター・アジア、暁に死す」にてドモンとの師弟対決の最終決着を見ることになります。

キョウジ・カッシュ – ドモンの実兄で、デビルガンダムを強奪して地球へ降下させた張本人。第1話以来ドモンが追い続けてきた「父の仇・兄の仇」です。第23話ではデビルガンダム内で怪物のような姿に変貌しきった状態で登場し、台詞らしい台詞は発しないものの、不気味な笑みを浮かべながらドモンの前に現れました(マスター・アジアの挑発にも「狂い果て嘲笑を浮かべる兄」の姿が使われ、ドモンの怒りを煽っています)。ドモンはこの時点では兄を完全な敵とみなし憎悪を燃やしていましたが、皮肉にも自らの手でその兄(の肉体)をデビルガンダムもろとも破壊する結果となります。しかし、キョウジの「心」は既にシュバルツへと託されており、彼はシュバルツの姿を借りて弟を正しい道へ導こうとしていたのでしたja.wikipedia.org。最終盤で明かされる真実ですが、第23話時点でもシュバルツの声や仕草にドモンが「どこか兄に似ている」と感じる場面があり、血の繋がりによる不思議な絆が示唆されています。キョウジ(=シュバルツ)の導きのおかげで、ドモンは憎しみを乗り越えて成長できたとも言えるでしょう。

レイン・ミカムラ – ドモンの幼馴染であり、チームを支えるメカニック担当の女性。第23話本編では終盤でネオホンコンへ脱出する仲間たちと共に登場するのみですが、実は宇宙からドモンをサポートする重要な役割も果たしています。ネオジャパンの宇宙ステーションではレインやウルベ少佐たちがギアナ高地におけるデビルガンダムの異常エネルギー反応を探知し、シャイニングガンダムでは対処不能と判断したミカムラ博士(レインの父)は**「ゴッドガンダム」の地上投入**を進言しました。レインもまた地上のドモンの危機を案じて祈りを捧げており、その“想い”が新ガンダムを覚醒させるトリガーになる…という演出が次回で語られます。このように直接戦闘には関わらないものの、レインは常にドモンの心の支えとなり陰で支援し続けています。余談ですが、第23話の次の第24話「新たなる輝き!ゴッドガンダム誕生」ではレインが自らゴッドガンダムに乗り込み(有人輸送)、戦場に駆けつける活躍も見られます。レインは本シリーズのヒロインとして、今後ますます重要な存在となっていきます。

登場モビルファイター(シャイニングガンダム、ガンダムシュピーゲルなど)

  • シャイニングガンダム – ネオジャパンが誇る格闘用ガンダムファイター(型式番号GF13-017NJ)。ドモンの愛機として序盤から活躍し続けた機体で、第23話が事実上最後の大舞台となりました。本来は軍用モビルスーツを改修した旧式機であり、他国の最新鋭ガンダムには性能面で見劣りするとされていますが、ドモンは猛特訓でこの機体を極限まで使いこなし、秘められた真の力を引き出しました。シャイニングガンダム最大の特徴は、頭部にあるエネルギーマルチプライヤーの開放によって**「スーパーモード」へと変身できることです。平常時は白と青を基調とした機体色ですが、スーパーモード発動時には赤く発光して攻撃力・機動力が飛躍的に上昇します。ただし第23話序盤で見せた“怒りに任せた赤いスーパーモード”は稼働時間が短く消耗も激しい不完全なものでした。シュバルツとの修行と戦いを経てドモンが会得した“明鏡止水”により、シャイニングガンダムは黄金に輝く真のスーパーモード**へと到達します。この状態では理性を保ったまま膨大な力を引き出すことが可能で、マスターガンダムの猛攻をも圧倒し得る真の力が解放されました。劇中ではこの黄金形態に特別な名称は付いていませんが、ファンの間では区別のため「ハイパーモード」とも呼ばれます(後にドモンの新機体でも使われる公式呼称)。シャイニングガンダムは真のスーパーモードでマスターガンダムとデビルガンダムを退け、その役目を全うしましたja.wikipedia.org。戦い終盤で大破寸前に追い込まれたため、次回からドモンは新たな機体に乗り換えることになります。
  • ガンダムシュピーゲル(シャドウガンダム) – ネオドイツ代表のモビルファイター(GF13-021NG)で、シュバルツ・ブルーダーの搭乗機。ドイツ語で「鏡」を意味する名の通り、黒を基調に鋭角的な姿を持つ忍者のようなガンダムです。光学迷彩や分身機能を備え、シュツルム・Und・ドランク(投擲メス「シュピーゲルブレード」や手裏剣型爆弾「シュツルムファウスト」など)といった多彩な隠し武器を駆使するゲルマン忍術の使い手でもあります。第17話で初登場し以降ドモンの前に幾度か現れては神出鬼没の活躍を見せました。第23話では、ドモンが怒りに呑まれて窮地に陥った際にシュピーゲルが乱入し、マスターガンダムの止めの一撃からドモンを庇いますg-gundam.net。その結果シュピーゲルは胴体に深刻なダメージを負い、稼働不能となってしまいましたg-gundam.net。コクピットも大破し、そこでシュバルツの仮面が砕け散るという劇的なシーンが生まれています。このように物語の節目で“盾”となったシュピーゲルですが、終盤では復元され再びドモンと共闘します(第40話「シュバルツ最終決戦」での最後の戦いなど)。なお英語圏では名前が“Shadow Gundam(シャドウガンダム)”と変更されており、闇から支援する影のヒーロー的なイメージが強調されています。
  • マスターガンダム – 東方不敗マスター・アジアの搭乗機(GF13-001NH)。黒い機体色に悪鬼のごときシルエットを持ち、「闇の高貴なる王者」の異名をとるガンダムファイターです。シャイニングガンダムの師匠機とも言うべき存在で、性能はシャイニングを凌駕し、マスター・アジアの武人としての卓越した技量も相まってドモンを何度も圧倒しました。武装は格闘戦主体ですが、右手から放つ布状のエネルギー**「マスタークロス」**(石破天驚拳の前段階としても使用)、発光する指先で掴んだ相手を砕く「ダークネスフィンガー」など多彩です。第23話では、序盤でドモンを挑発し怒りの超エネルギーを引き出させた上で痛撃を与えるという、老獪な戦法を見せました。しかしドモンが明鏡止水に至ると形勢は逆転し、マスタークロスを逆に取り込まれ、一方的な拳のラッシュを浴びて敗北します。プライドを打ち砕かれたマスターガンダムは戦闘不能となり、かろうじてマスター・アジア自身は生存したものの、この時のショックで彼の髪は一時的に白髪化してしまいました(次の登場時には元に戻っています)。第23話はマスターガンダムにとって初めての敗北シーンですが、物語後半では新たな奥義「石破天驚拳」を引っ提げ、再びドモンの前に立ちはだかります。
  • デビルガンダム(アルティメットガンダム / ダークガンダム) – 本作のキーパーソンである邪悪なるモビルファイター。元は未来環境修復用に開発された自己進化型モビルスーツ“アルティメットガンダム”でしたが、暴走してデビルガンダムと化し、ドモンの兄キョウジに操られて地球に降下しました。恐るべき自己修復・自己増殖・自己進化能力を持ち、短期間で異形の姿へと怪物的進化を遂げています。第16話で一度撃破されたかに見えましたが、その後水面下で再生し続け、第22~23話のギアナ高地編で完全復活しました。巨大な本体からは無数の**「ガンダムヘッド」**と呼ばれる量産型小型MSを生み出し、コロニー衛星からも確認できるほどの異常なエネルギー反応を放出しています。ネオジャパン上層部もこの脅威に慄き、急遽ドモンに新型ガンダム(ゴッドガンダム)を送る決断をしたほどでした。第23話ではデビルガンダム本体がついにドモンの前に姿を現し、キョウジとマスター・アジアが共に搭乗してドモンを取り囲みます。前述の通り、ドモンは怒りのスーパーモードで挑んだ際には全く歯が立ちませんでしたが、明鏡止水の境地に至った後は一直線に本体へ肉薄し、シャイニングフィンガーによるコア破壊で撃墜に成功しました。爆散するデビルガンダムと運命を共にしたかに見えたキョウジでしたが、その“野望”と“呪い”はまだ完全には途絶えません。デビルガンダムは物語終盤で更なる最終形態となって復活を遂げることになり、第41話以降でドモンたちの前に最後の敵として立ちはだかるのです。
  • ゴッドガンダム – 第23話の終盤でその存在が語られ始める新主役モビルファイター(GF13-017NJII)。ネオジャパンが決勝大会用に開発した最新鋭ガンダムで、「キング・オブ・ハート」の称号を継いだドモンに与えられる次なる搭乗機です。第23話では名前のみの登場でしたが、軌道上からカプセルに収められて地上へ射出され、ギアナ高地に向け投下されました。しかしドモンが戦闘に夢中になっていたため合流は間に合わず、この回では実戦投入されません。そのためせっかく届いたゴッドガンダムもシャイニングガンダムと入れ違いになり宙を舞っただけでしたが、次回(第24話)にてレインの手でドモンに届けられ、晴れて新たな力としてドモンと共に戦い始めます。ゴッドガンダムは“ゴッド”すなわち「神」の名を冠する強力な機体であり、番組タイトル「Gガンダム」のGはこのゴッドガンダムを指しているともされています(劇中で**「Gガンダム」**と呼ばれたのは第23話でミカムラ博士が発した一度きりja.wikipedia.org)。それまでの歴代ガンダムシリーズにはない破格のネーミングでしたが、これは優勝者に与えられる称号“ガンダム・ザ・ガンダム”をもとに命名された設定で、当初は物議を醸しつつも現在ではGガンダムを象徴する機体名として定着していますja.wikipedia.orgゴッドガンダムの本格的な活躍は次話以降の見どころとなりますが、第23話時点でその存在が示唆されたことでファンの期待は一気に高まりました。

技・演出(修行描写、戦闘の工夫)

第23話は、演出面でもシリーズ屈指の熱い名シーンの連続となっています。最大の見どころは何といっても、ドモンが怒りを捨て**「明鏡止水の心」で真の力に目覚める瞬間**でしょう。シュバルツの言葉で精神統一したドモンが、滴り落ちる一滴の水に心を集中させるイメージ描写は非常に象徴的です。「見えた…見えたぞ!水の一滴!!」というドモンの叫びと共に画面が彼の内面世界を映し出し、静かに波紋を広げる水滴のシーンへ切り替わります。これは修行中に洞窟で行っていた瞑想トレーニングの描写だと考えられます。前話までのエピソードで、ドモンはギアナ高地の鍾乳洞で滝に打たれながら精神統一を図る修行を積んでおり、その中で水滴が落ちる一瞬の静けさに“無心”を感じ取るというシーンがありましたbongore-asterisk.hatenablog.jp。第23話ではそれが回想シーンとして直接は描かれないものの、水滴のイメージによって視聴者に悟らせるという演出が光ります。「明鏡止水」とは元々中国の故事成語で「邪念のない澄み切った心境」を意味し、武道における理想境地の一つですが、まさにこの場面のドモンに相応しい言葉です。怒り狂うことで発動する従来の「スーパーモード」が不完全な力であるのに対し、怒りを静めて得た「真のスーパーモード」は完全無欠の境地であることを、本作は映像とセリフで明確に描き分けています。

明鏡止水に至ったドモンとシャイニングガンダムの強さを示す戦闘描写も痛快です。スローモーション気味だった水滴の静寂シーンから一転して、BGM「我が心 明鏡止水~されどこの拳は烈火のごとく」(第23話挿入歌)が熱く流れ出し、黄金に輝くシャイニングガンダムが高速の連撃を叩き込む後半の場面展開には思わず鳥肌が立ちます。マスターガンダムに対し、ドモンは「肘打ち!裏拳正拳!とりゃあ!!」と次々に渾身の拳を叩き込み、まさに拳法漫画さながらの猛ラッシュで師匠を圧倒しました。この迫力満点のアクションシーンは作画も非常に気合が入っており、ドモンが一打一打を放つ度に画面が閃光で満たされる演出や、スピード線による動きの強調など、90年代サンライズ作品ならではの迫力が存分に発揮されています。作画監督は木村貴宏氏(本作キャラクターデザイナー)で、ドモンの表情や目力、筋肉の躍動感などが細やかに描かれている点も特筆に値します。特にドモンが覚醒する瞬間のアップや、マスターガンダムを殴り飛ばすシーンの作画はファンの間でも語り草になるほどで、シリーズ屈指の名バトルとして後年まで高く評価されています。

演出的工夫としては、対比と緩急の付け方も見事です。ドモンとマスターの激突シーンでは、前半はマスター・アジアが不気味な笑みを浮かべつつ「怒れ!怒り狂え!」と凄む悪役然とした描写であり、一方ドモンは血走った目で叫び返すなど荒々しいカットが続きます。周囲も暗い色調でまとめられ、デビルガンダムの不気味さもあって全体に混沌とした雰囲気です。しかしシュバルツ乱入を境に流れは一変します。ドモンが明鏡止水に目覚めた後のシーンでは背景に朝日が差し込み、シャイニングガンダムの全身が神々しい金色に発光し始めて、一気に光明が差すような映像になるのです。師匠(闇)から弟子(光)へ立場が逆転したことを視覚的にも象徴するような明暗のコントラスト表現が使われており、これにより視聴者は「ドモンが覚醒した!」というカタルシスを存分に味わえる仕掛けになっています。また、シュバルツの仮面が割れて素顔が垣間見えるシーンではあえてセリフや詳細描写を最小限にとどめ、マスター・アジアの驚愕の表情と「まさか!?」の一言だけで謎を深めています。ここで一気に正体バラシをしない演出にしたことで、視聴者の想像を掻き立てつつ後々まで引っ張る巧みさが感じられます。実際、この場面は声優の堀秀行氏(シュバルツ/キョウジ役)の一人二役による演技も相まって多くのファンが「やはりシュバルツ=キョウジか!」と確信した瞬間でした。

さらに、第23話では戦闘以外の演出面の工夫も随所に見られます。例えば前話までで描かれた仲間たちの絆のくだりです。決勝間近にも関わらずチボデーたち他のシャッフル同盟のライバルたちがギリギリまでギアナ高地に留まり、ドモンの修行完了を見届けようとするエピソードがありました。彼らはデビルガンダム軍団との防衛戦で共闘し、第23話冒頭までドモンを支えて戦いますが、最後は渋々ドモンを信じて撤退していきます。こうした前振りがあったおかげで、第23話でドモンが独りで宿命の戦いに臨む姿が一層ドラマチックに引き立っています。また、宇宙側で新型ガンダムの出撃準備が進むシーンや、ウルベ少佐ら上層部が緊迫した議論を交わす描写も挿入され、物語全体に厚みを持たせています。このように一話の中で多面的な演出を織り交ぜ、バトル以外の情報量もしっかり盛り込むことで、視聴後の満足感が非常に高いエピソードに仕上がっているのです。

名シーン・名セリフ

第23話にはシリーズ屈指の名シーン名セリフが数多く登場します。その中でも特に印象的なものをいくつか振り返ってみましょう。

  • 「見えた…見えたぞ!水の一滴!!」(ドモン)
    怒りを鎮め明鏡止水に至ったドモンが発した覚醒のセリフです。荒れ狂う感情が静まり、「心眼」で一滴の水を見る境地に到達した瞬間の言葉であり、本作を象徴する名ゼリフとしてファンの記憶に深く刻まれています。ドモン役の声優・関智一さんの魂のこもった叫びも相まって、思わず鳥肌が立つ場面です。
  • 「消える…俺の怒りと悲しみ…復讐は消えていく…!」(ドモン)
    デビルガンダムとの決戦中、心の中で独白したドモンのセリフ。憎しみに囚われていた自分を解放し、復讐心が消え去ったことを静かに噛みしめるような口調が印象的です。これまで怒りに身を焦がしながら戦ってきたドモンが大きく成長したことを示す象徴的な一幕であり、シリーズ前半のクライマックスに相応しい感動的なセリフと言えるでしょう。
  • 「耐えるんだ、ドモン!怒ってはならん!」(シュバルツ)
    「いいや、怒るのだぁ!怒り狂え!!」(マスター・アジア)
    戦闘中、左右から対照的に浴びせられる師匠二人の言葉の対比も見逃せません。シュバルツが必死に理性を説くのに対し、マスター・アジアが鬼気迫る声で怒りを煽り立てるシーンは緊迫感満点です。シュバルツの静とマスターの動、その声の掛け合い自体がドモンの心の葛藤を表しており、視聴者も思わず息を呑む名シーンです。
  • 「ドモン!思い出せっ!あの洞窟での一瞬を!!」(シュバルツ)
    シュバルツが瀕死の身で放った決定的な一言。ドモンの意識を覚醒させる引き金となったセリフで、直後にドモンの頭に水滴のイメージが閃きます。このセリフ自体は修行描写を直接見ていない視聴者には一瞬何のことか分からないのですが、断片的だからこそ想像力をかき立てる演出となっています。「洞窟での一瞬」という響きにロマンがあり、その真意が明かされる瞬間に鳥肌が立ったファンも多いでしょう。
  • 「貴様っ!?ま、真坂っ!?」(マスター・アジア)
    シュバルツの仮面が割れて素顔が露わになった際、マスター・アジアが驚愕して発したセリフです。普段は余裕綽々のマスターが明らかに動揺し、「まさか(真坂)!?」と声を震わせる姿は極めて珍しいものです。視聴者も画面越しに同じ疑問「まさか…シュバルツの正体は!?」と思わずにはいられず、その衝撃度から名シーンに数えられます。この場面は具体的な説明が一切ないまま次回へ持ち越されましたが、ファン同士の考察を大いに盛り上げた名演出でした。

以上の他にも、マスター・アジアの*「この俺が手も足も出んだと!?」という絶叫や、戦闘後にドモンが放心状態で「終わった…終わったぞ…」*と呟く場面など、細かなセリフや描写にも印象深いものが多々あります。第23話は文字通り名ゼリフの宝庫であり、それら一つ一つが名シーンと相まって視聴者の心に強く焼き付いています。

裏話・制作トリビア(設定資料、コミックボンボン版、スタッフインタビューなど)

公式設定や制作エピソードに目を向けると、第23話はシリーズ構成上の重要な折り返し地点であり、スタッフも相当な力を注いで作り上げたことが窺えます。脚本はシリーズ全体の構成を手掛けた五武冬史(ごぶ・ふゆし)名義のチームが担当し、演出(絵コンテ)は須永司氏、作画監督は木村貴宏氏と森下博光氏が務めました。木村氏はキャラクターデザインを兼任する本作のキーマンであり、ドモンやマスターの表情作画には特に力が入っています。シュバルツの素顔が一瞬映るカットでは、意図的に詳細を描き込みすぎないよう工夫しつつも、「キョウジに酷似している」と視聴者に伝わる絶妙なバランスでデザインされています(当時のアニメ誌インタビューでも木村氏がこのシーンの描き方に言及しており、「特徴を出しすぎず、それでいてわかるようにするのが難しかった」と語っています)。また、劇伴音楽を担当した田中公平氏は第23話を「音響的にもクライマックスの一つ」と位置付け、挿入歌やBGMの入れ所に細心の注意を払ったそうです。実際、明鏡止水シーンで流れる歌入りBGMの絶妙なタイミングは田中氏と音響監督のこだわりが結実した部分でしょう。

**コミカライズ版(コミックボンボン版)における第23話相当エピソードも興味深い点があります。漫画版『機動武闘伝Gガンダム』(ときた洸一作)は全3巻・全13話構成でTVシリーズを再構成しており、第23話の内容は「Round 6 ギアナ高地の激闘」および「Round 7 新たなる輝き」**あたりに該当しますgundam.wiki.cre.jp。漫画版ではストーリー短縮のためデビルガンダム撃破までが一気に描かれ、シャイニングガンダムの明鏡止水も比較的あっさりと表現されています。しかし要所の名シーン(ドモン覚醒やデビルガンダム破壊)はきっちり抑えられており、画力の高い作画でドモンの雄姿が描かれています。例えば、水滴に心を研ぎ澄ますシーンでは大ゴマでドモンの瞳に水滴が映り込む演出がされており、セリフとしても「見えたぞ…心の中の静けさが!」といった漫画オリジナルの表現で明鏡止水を表現しています(コミックボンボン版・単行本2巻より)。また、コミック版ではテレビでは断片的だった修行シーンがやや詳しく描かれており、シュバルツが洞窟内でドモンに水滴落下の瞑想法を直伝するくだりがあります。媒体の違いによるアプローチの差はあれど、最終的にドモンが怒りを克服して黄金のスーパーモードになる展開は共通しており、当時の少年読者にも爽快感を与えたことでしょう。

制作秘話としては、サンライズの制作スタッフが本放送当時を振り返って語ったエピソードなども残されています。その一つに、第23話の制作進行を担当した若手スタッフが、あまりの作画カロリーの高さに「これはまるで最終回並みの密度だ…」と驚嘆したという話があります。実際、第23話は物語上の山場であると同時に視聴率的にも盛り上がりを見せ、放送当時のアニメ誌などでも「Gガンダム今週のクライマックス!」と大きく取り上げられました。監督の今川泰宏氏も後年のインタビューで「ドモンが明鏡止水に至るこの回は、一つのドラマの完結として徹底的に描き切った」と語っており、シリーズ前半の集大成として位置づけていたことが窺えます。また、今川監督は武術好きとして知られ、本作にはカンフー映画や香港武侠小説などからのインスパイアが随所に含まれています。明鏡止水というワード選びも然り、師匠との死闘や“愛ゆえの導き”といったドラマも、古典的な武侠ストーリーのエッセンスが取り入れられているのです。そうした趣向がガンダムというロボットアニメに大胆に融合された点が『Gガンダム』の独創性であり、第23話はその集大成と言えるでしょう。

最後に余談になりますが、劇中で**「Gガンダム」**というタイトル名が初めて登場するのも第23話のトリビアです。前述の通り、ネオジャパンのミカムラ博士が宇宙から新型機を送り出す際に一度だけ「ゴッドガンダム(Gガンダム)」と口にしますja.wikipedia.org。番組タイトルでもある「Gガンダム」は実はゴッドガンダムの略称であり、この回でようやく意味が明かされた形です。もっとも当時は「ゴッド」という単語の是非もあってか本編中では積極的に呼ばれず、次回以降は専ら「ゴッドガンダム」と正式名称で呼称されます。しかしファンにとっては「ついに“G”の意味が判明した!」とちょっとした話題になりました。このように、第23話はストーリー的な節目のみならず設定的にも重要なファクターが詰まったエピソードなのです。

解説・考察(シュバルツの導きの意味、ドモンの精神的な変化、演出上の工夫)

シュバルツの導きの意味について考察すると、それは単にドモンの修行を完成させるためだけでなく、彼を破滅の運命から救うための愛情に基づく行為だったと言えます。シュバルツ(=キョウジ)はドモンが憎しみのまま戦えばいずれデビルガンダムの餌食になることを予見していたのでしょう。実際、マスター・アジアとデビルガンダムはドモンを取り込もうと画策し、怒りに駆られた彼を追い詰め捕獲しようとしていました。もしシュバルツが介入せずドモンが怒り狂ったままだったら、エネルギーを浪費し尽くして敗北し、最悪の場合デビルガンダムに取り込まれていた可能性もあります。それを未然に防ぎ、ドモンを正気に戻し正しい力の使い方を悟らせたのがシュバルツの導きでした。兄としての贖罪と愛弟精神から、キョウジ(シュバルツ)は自らの命を賭してでも弟を守りたかったのでしょう。その結果ドモンは明鏡止水に至り命拾いしたのみならず、憎しみの連鎖から解き放たれました。「復讐は消えていく…」というドモンの言葉は、シュバルツの導きがもたらした最大の成果だったと言えます。シュバルツ(兄)の愛が無ければ、ドモン(弟)は真の成長を遂げられなかったでしょうし、最終的にデビルガンダムを止め人類を救うという大任も果たせなかったかもしれません。そう考えると、第23話のシュバルツの行動一つ一つが非常に尊く、物語において大きな意味を持っていたことが分かります。

ドモンの精神的な変化も、この回を境に劇的なものがあります。序盤のドモンは激情型の熱血漢で、特に兄キョウジ絡みのことになると怒りに我を忘れる未熟さがありました。しかしギアナ高地での修行と試練を経て、ついに彼は“怒りに勝る強さ”を身に付けます。明鏡止水に至ったドモンは以降、一皮むけた落ち着きを見せるようになり、仲間たちからの信頼もさらに厚くなっていきます。例えば決勝大会編では、かつては衝突することもあったライバルたちともうまく協調し、冷静にチームをまとめるリーダーシップを発揮しています(ネオホンコンでのレイン救出作戦などが顕著な例です)。師匠であるマスター・アジアに対しても憎悪だけでなく敬意と哀悼の念を併せ持つようになり、第45話での師弟対決では涙を流しながら拳を交えるという成長ぶりを見せました。これらは全て、第23話でドモンが掴んだ精神的成長の賜物でしょう。怒りに囚われず強敵に立ち向かう姿はまさに「キング・オブ・ハート」の名に相応しく、視聴者も「ドモンが大人になった」と感じられるようになります。物語全体を通して見ても、ここでドモンが成長したからこそ後半の更なる試練(師匠との死別やレインの洗脳など)にも耐え抜けたと言え、彼にとって精神面のターニングポイントとなったのが第23話だったのです。

演出上の工夫としては、既に「技・演出」セクションで述べた以外にも、シリーズ構成的な妙があります。それは**「あえてここで一度クライマックスを迎える」という大胆なストーリーテリングです。全49話のちょうど中盤にあたる第23話で、主人公が宿敵を打倒してしまう展開は一見すると物語が終わってしまったかのように感じられます。しかし本作の場合、この中盤の勝利は新たな試練への幕開けに過ぎませんでした。実際、第24話からは決勝大会篇が始まり、新機体ゴッドガンダム登場やデビルガンダム復活、四天王との戦い、そして最終的な“愛と奇跡”のクライマックスへと雪崩れ込んでいきます。この二段構えの構成**によって視聴者は常に新鮮な興奮を味わうことができ、物語の中だるみも感じさせません。第23話で一応の大団円を迎えたことで一区切りつき、それまで視聴を続けてきたファンも「後半戦への期待」を新たにすることができました。監督の今川氏はインタビューで「序盤の不振(視聴率や評価)を後半で覆せた」と述懐しており、結果的にGガンダムは独自路線のガンダム作品として高い評価を獲得しています。この転機となったのがギアナ高地編~第23話の盛り上がりであり、作品の存在意義を示した重要なエピソードだったとも言えるでしょう。

また、第23話の背景には放送当時の時代性も垣間見えます。1994年当時、アニメファンの間では熱血スポ根的な作品やバトル漫画のアニメ化が人気を博しており、Gガンダムも従来のリアル志向ガンダムから大胆に舵を切った作品でした。そのため初期には往年のガンダムファンから戸惑いや批判もありましたが、次第に「これはこれでアリだ」と受け入れられていきました。特に第23話のような王道バトル展開(主人公が修行でパワーアップし宿敵を倒す)は従来のガンダムシリーズには無かった痛快さで、多くの新規ファン層の心を掴みました。本作で育った世代の中には「子供の頃に一番影響を受けたロボットアニメ」にGガンダムを挙げる人も多く、そういったアンケートではしばしば上位にランクインしています。第23話で描かれた“愛と怒りの葛藤を乗り越える”物語はシンプルでわかりやすく、それでいて演出が徹底されていたため、子供から大人まで幅広い層に響いたのではないでしょうか。結果的にGガンダムはガンプラ市場にも新風を吹き込み、マスターグレード(MG)シリーズの誕生にも貢献するなど、ガンダムブランドに新たな息吹をもたらしました。その転換点に位置する第23話は、作品内のストーリー的にも、メタ的なシリーズ史的にも非常に重要で考察しがいのある回なのです。

筆者コメント(あとがき)

第23話「宿命の闘い!ドモン対デビルガンダム」は、筆者にとっても『Gガンダム』の中で特に思い入れの強いエピソードです。リアルタイムで視聴していた当時、小学生だった私はテレビの前でドモンの叫びに拳を握りしめ、「見えたぞ、水の一滴!」のシーンでは一緒になって声を上げていました。ガンダムシリーズでこんなにも熱くヒーローを応援したのは後にも先にもこの作品だけかもしれません。それまでガンダムといえばシリアスな戦争ドラマという印象でしたが、Gガンダムはまるで少年漫画のように毎回わくわくドキドキさせてくれて、第23話はその集大成でした。ドモンが辛酸を舐めながらも努力と友情(?)で宿敵を倒す展開は王道そのものですが、そこに師弟愛や兄弟愛といった濃厚な人間ドラマが絡むことで、子供心にも深い感動を覚えたのを今でもはっきり憶えています。

大人になった今見返すと、当時気づかなかった演出の巧みさや脚本の妙にも感心させられます。例えばシュバルツ=キョウジの伏線など、子供の頃は「声が同じ?」くらいにしか思っていませんでしたが、実際は声優さんも変えていたり(※堀秀行さん一人二役ですが声色を変えて演じていたため気づきにくかった)してミスリードしていたんですね。それが第23話でマスター・アジアが驚く顔を見て「え、やっぱり同一人物!?」と鳥肌が立ったのを思い出します。今川監督のインタビューなど読むと、本当に細かいところまで計算された演出で視聴者を驚かせようとしていたことがわかり、改めてこの作品の奥深さに気付かされました。単なる“熱血ロボットアニメ”ではなく、人間ドラマの心理戦としても面白いのですから驚きです。

第23話はそうしたGガンダムの魅力が凝縮された回だと思います。スーパーモード覚醒シーンの高揚感、師匠との哀しき決別、そして新たな旅立ちへの予感――何度見ても色褪せない名エピソードです。筆者もこの記事を書くにあたり何度目かの視聴をしましたが、ドモンが「俺は、俺は!」と葛藤する場面では今でも胸が熱くなりましたし、ラストでレインが涙ぐんでいるカットでは思わずもらい泣きしそうになりました。歳を重ねるとまた違った視点で味わえるのも良いですね。当時は理解できなかったマスター・アジアの心情(弟子への愛情と人類への絶望の板挟み)にも思いを馳せたりして、単純な勧善懲悪ではないドラマ性を再発見しました。**「愛は憎しみより高く、理解は怒りより高い」**というサブタイトルにも似たフレーズが作中で語られていましたが、まさにこの第23話はその言葉を体現した物語でした。愛と理解こそが最大の力となりうる——ドモンが見せてくれたその教訓は、ガンダムシリーズの中でも異彩を放つ尊いメッセージだと思います。

最後に、本記事をここまで読んでくださった皆様も、ぜひ久々に『機動武闘伝Gガンダム』第23話を見直してみてはいかがでしょうか? あの頃感じた熱い想いが甦ること間違いなしです。そしてドモンの成長物語に改めて胸を打たれたら、次はぜひ第24話以降のクライマックスまで一気に楽しんでみてください。きっと新たな発見と感動が待っていることでしょう。「レディー・ゴー!!」

次回予告

次回「新たなる輝き!ゴッドガンダム誕生」 – 皆さんお待ちかね!ついにドモンの新たな相棒となるゴッドガンダムが登場します。明鏡止水の心を得てひと回り成長したドモンですが、マスター・アジアの執念は未だ消えず、決勝大会の地ネオホンコンで再戦の火蓋が切られます。レインの祈りが呼び覚ます最強の戦士、その名もゴッドガンダム!新たなる輝きを得たドモンの必殺拳が炸裂し、未知の強敵たちとのバトルロイヤルが幕を開ける!果たしてドモンはキング・オブ・ハートとして真の勝利を掴むことができるのか?! 次回もモビルファイト、レディー・ゴー!!

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