あらすじ(ネタバレあり)
第3話の舞台はネオチャイナ。ガンダムファイト第13回大会参加中のドモン・カッシュ(ネオジャパン代表)は、行方不明の兄を探す旅の途中でこの地を訪れます。ところが各地の村では、ネオチャイナ代表機であるドラゴンガンダムが謎の盗賊集団「黒龍団」に乗っ取られ、強盗行為に使われていましたdengekionline.comja.wikipedia.org。ドモンはドラゴンガンダム強奪事件を追い、ある村で黒龍団の手下たちと小競り合いになります。彼らを退けたドモンでしたが、翌朝その村に現れた少林寺の僧侶恵雲と瑞山から驚くべき依頼を受けます。「ドラゴンガンダムを倒し、その搭乗者であるサイ・サイシーを抹殺してほしい」と迫られたのですgundam.dancing-doll.com。サイ・サイシーは少林寺の高僧の一人息子であり(僧たちにとっては息子同然に育てた存在)、祖国の代表でありながら盗賊に身を落とした“寺の面汚し”だと僧たちは信じ込み、けじめをつけるため命を絶とうとしていましたgundam.dancing-doll.comg-gundam.net。ドモンは一度は依頼を拒みますが、同行者のレイン・ミカムラが人質に取られかけたため渋々承諾し、ドラゴンガンダムとの対決の地・五台山へ向かうことになりますbongore-asterisk.hatenablog.jp。
旅の途中、ドモンは道端で眠っていた一人の少年と出会います。この少年は自らを「竹林(チクリン)」と名乗り、行きがかり上ドモンと同行することになりましたg-gundam.net。旅慣れた様子の竹林は天真爛漫でマイペース。道中の村では「料理人と皿洗いをするから」と宿に掛け合い、ちゃっかりドモンと宿泊代をタダにしてしまう腕前で、ドモンを少々呆れさせます。しかしその夜、宿泊先の村が黒龍団に襲撃され、ドラゴンガンダムと彼らの竜型の小型メカが祭りで賑わう村を蹂躙。ドモンと少年は必死に応戦しますが、混乱の中でドモンは自分の愛機のコアランダー(シャイニングガンダムの母艦カー)が黒龍団に奪われてしまいましたgundam.dancing-doll.com。コアランダーを失ったドモンは馬を駆って少年と共に黒龍団の本拠地へ向かいます。そのアジトはなんと中国の史跡・万里の長城の一角にありましたgundam.dancing-doll.com。
長城跡に根城を構える黒龍団のアジトにたどり着いた二人は、まず様子を探ることに。すると竹林と名乗る少年は「自分が様子を見てくる」と単身アジトへ忍び込みます。ところが次の瞬間、少年は黒龍団の構成員たちを引き連れて戻ってきてしまい、ドモンは不意を突かれて捕縛されてしまいましたgundam.dancing-doll.com。ドモンは縄で縛られ吊るされる拷問を受けますが、その場に現れた黒龍団の頭領・**飛龍(フェイロン)**をサイ・サイシー本人だと勘違いし、「ガンダムファイトで勝負しろ!」と挑みます。しかし盗賊に紳士的ルールなど通用せず、要求は一笑に付されてドモンは牢に放り込まれてしまいますgundam.dancing-doll.com。一方その頃、少年はいつの間にか黒龍団の厨房に入り込み、料理人として働き始めていました…。
牢の中で絶体絶命のドモンでしたが、そこへ先ほどの少年がひょっこり現れます。実は少年の裏切りは演技であり、ドモンを囮にして自分がアジト内部に潜入する作戦だったのですgundam.dancing-doll.com。少年はドモンを縄から解放すると、「全部作戦だから」とニヤリ。そしてドモンに脱出の手助けをする代わりに、わざと「日本人のガキが脱走したぞ!」と大声で触れ回り、アジト内に騒ぎを起こしますgundam.dancing-doll.com。看守たちがドモン捜索に奔走する中、少年はひそかにドラゴンガンダムの格納庫へ向かいました。そこでは頭領の飛龍自らがドラゴンガンダムを起動させようとしていましたが、少年は飛龍に襲いかかり得意の脚技で一撃!油断していた盗賊頭は昏倒し、ドラゴンガンダムは本来の持ち主の手に取り戻されますbongore-asterisk.hatenablog.jp。時を同じくして、ドモンも自身のコアランダーを発見し奪還に成功。黒龍団の残党たちを相手に無双状態で叩きのめし、寄せ集め盗賊団はあっという間に壊滅しましたbongore-asterisk.hatenablog.jp。
アジト崩壊後、少年はドラゴンガンダムに乗り込み、ドモンの前に立ちはだかります。捕縛劇や脱出劇ですっかり振り回されたドモンも負けじとシャイニングガンダムを召喚しました。実はレインが密かにシャイニングガンダムを長城近くの岩陰へ運んで隠してくれていたのですgundam.dancing-doll.com(レインの有能ぶりにドモンも感謝!)。ここにドモン対謎の少年のガンダムファイトが正式に開幕します。おなじみ眼帯の審判おじさんによる「ガンダムファイト、レディー・ゴー!」の掛け声と共に、シャイニングガンダム対ドラゴンガンダムの激闘が始まりました。
最初は互角の鍔迫り合いとなった両雄ですが、中盤、ドラゴンガンダムが奇妙な戦法を仕掛けます。「フェイロン・フラッグ(飛龍旗)」と呼ばれる複数の旗状ビーム棒を地面に突き立て、無数の残像でシャイニングガンダムを幻惑したのですg-gundam.net。ドモンは眩い幻影に翻弄されますが、すぐに冷静さを取り戻し目を閉じて相手の気配を探りました。そして「今だ!」と感じた地点に渾身のシャイニングフィンガーを叩き込み、見事ドラゴンガンダムの頭部を鷲掴みにしますgundam.dancing-doll.com。頭部(コクピット)破壊はガンダムファイト国際条約で即失格敗北を意味するため、ドモンは勝利を確信しました。ところが――彼が握り潰したのは幻影のドラゴンガンダムだったのです。なんと本物のドラゴンガンダムは上空に隠れており、ドモンの死角を取って急襲してきましたgundam.dancing-doll.com!少年もまたドモンに負けじと、ドラゴンガンダムの武器である弁天刀(三日月刀状の刃)を閃かせシャイニングガンダムの首を狙いますja.wikipedia.org。間一髪、ドモンは咄嗟に機体を後退させ大ダメージは避けましたが、この攻防でお互いのガンダムは頭部に深刻な損傷を受けてしまいました。勝敗を決することができず、**勝負は痛み分け(引き分け)**に終わりますja.wikipedia.org。
激しい戦いを終えた後、ドモンは思わぬ真実を知ることになります。目の前のドラゴンガンダムから現れたパイロットは、なんとあの旅の少年でした。「それじゃあ、お前が!?」と驚くドモンに、少年はにんまり笑って「大当たり~!おいらが本物のサイ・サイシーだ!」と名乗りを上げますbongore-asterisk.hatenablog.jp。そう、竹林と名乗っていた少年の正体こそネオチャイナ代表ガンダムファイター、サイ・サイシーその人だったのですg-gundam.net。サイはドラゴンガンダムが自分から離れて地球に降下してしまった際のハプニングでガンダムを盗まれ、一時は盗賊団に悪用される羽目になりましたが、策略の末に無事ガンダムを奪還できたのでしたbongore-asterisk.hatenablog.jp。駆け付けた恵雲と瑞山も事情を理解し、サイに対する誤解が解けます。恵雲たちは愛弟子を疑ったことを深く詫び、サイも「心配かけたね!」と笑って許しました。そして「今度はちゃんと修行するんだぞ」と諭す師匠たちに見送られ、サイ・サイシーは再び2人の下で鍛錬を積むことを約束しますbongore-asterisk.hatenablog.jp。ドモンとレインも、明るく去っていくサイの背中に微笑みながら手を振りました。短い間にすっかり打ち解けたドモンとサイは、引き分けを演じた戦友として互いの健闘を称え合い、次の再戦を誓うのでした。
登場キャラクター
- ドモン・カッシュ – 本作の主人公。ネオジャパン代表ガンダムファイターであり、愛機はシャイニングガンダム。使命である“デビルガンダム(DG)”捜索のため世界各地を巡っています。第3話では偶然立ち寄ったネオチャイナで黒龍団事件に巻き込まれ、モビルファイター同士の公式戦だけでなく、生身でも盗賊相手に大立ち回りを演じました。サイ・サイシー奪還作戦ではまんまと囮に利用されてしまい散々な目に遭いましたが、最終的には彼を実力を認め、「俺に唯一引き分けを仕掛けた男だ」と一目置いていますja.wikipedia.org。正義感と闘争心あふれる熱血漢でありながら、人情にも厚く、今回も誤解が解けた後はサイと笑顔で別れる度量を見せました。
- レイン・ミカムラ – ドモンの幼なじみであり旅のパートナーを務めるメカニック担当の女性。第3話では冒頭でドモンと行動を共にし、恵雲たちに人質に取られかけるも持ち前の冷静さで切り抜けます。その後、自らの判断でシャイニングガンダムを密かに指定ポイントへ運び、ドモンがすぐ戦えるよう手配する活躍を見せましたgundam.dancing-doll.com。今回はモブ的立ち位置でしたが、彼女の的確なサポートがなければドモンはガンダムファイトに臨めなかったでしょう。優秀な技術者でありながらドモンを陰で支える健気さが光ります。
- サイ・サイシー – 今話より本格登場するネオチャイナ代表の少年ガンダムファイター。16歳という年少ながら武術の達人であり、伝統拳法・少林寺拳法の継承者ですja.wikipedia.orgja.wikipedia.org。陽気で人懐っこい性格ですがイタズラ好きなお調子者でもあり、ドモンを「兄貴」と呼んで慕いつつも手玉に取るしたたかさも持ち合わせていますja.wikipedia.org。劇中では盗賊からガンダムを取り戻すためにドモンを利用するというトリッキーな作戦を展開し、最後まで正体を伏せたまま行動しました。その機転のおかげでドラゴンガンダム奪還には成功しますが、ドモンには牢屋&拷問というとばっちりを食わせており、後に「もう少し加減してくれ」と苦笑を買う羽目に…。しかしサイ自身も命がけで作戦を遂行し、ドモンとの真剣勝負では互いに一歩も引かず引き分けに持ち込むという大健闘を見せましたja.wikipedia.org。無邪気さの奥に隠れた高い潜在能力と「勝つためには手段を選ばない」大胆さで、今後ドモンの強力な盟友となっていきます。なお趣味は料理で、今回はその腕前を発揮して旅先の宿でチャーハンをふるまうシーンもありました(CV:山口勝平。快活な少年役で知られる人気声優で、サイ・サイシーのやんちゃな魅力を存分に表現しています。「キャラも声も最高!」との声も多いですbobusann.exblog.jp)。
- 恵雲(けいうん) – ネオチャイナ少林寺の老師僧。太めの体躯と熊のような髭面が特徴。サイ・サイシーの父であるサイ・ロンパイの古くからの友人で、幼いサイを託され父親代わりに育ててきた人物ですg-gundam.net。武術に秀でる一方、ドラゴンガンダムのメカニック兼通信オペレーターも務めるなど技術面も担っていますg-gundam.net。サイには厳格な保護者として接しており、修行をサボる彼を叱ることもしばしばですが、本心では深く愛している様子が公式設定からうかがえますg-gundam.net。第3話ではサイが盗賊になったと誤解し激昂、“寺の名誉”を守るため瑞山と共にドモンに抹殺を依頼するという強硬手段に出ました。しかし真相判明後は頑なな態度を崩し、サイに謝罪しています。
- 瑞山(ずいせん) – 少林寺の僧侶で、恵雲の同志。細身で長身、白い口髭が特徴です。恵雲と同じくサイの父の友人であり、恵雲と二人がかりで幼いサイを育てた保護者ですg-gundam.net。恵雲が武術担当なら瑞山は戦略家タイプで知略に長け、サイの作戦立案にも関わる参謀役ですg-gundam.net。とはいえサイにはしょっちゅう振り回されて手を焼いており、今回も彼の真意を見抜けず暴走してしまいました。黒龍団壊滅後はサイの身を案じ、本来の使命であるガンダムファイト優勝=少林寺再興に向け改めて修行し直そうと諭していました。
- 飛龍(フェイロン) – 黒龍団の首領を務める大男。地元ネオチャイナで悪名高い盗賊団を率いており、偶然地球に落下してきたドラゴンガンダムを強奪して戦力にしていましたja.wikipedia.org。自らドラゴンガンダムに乗り込み各地で暴れまわるなど大胆不敵ですが、ガンダムファイターではないため腕前は本物には及びません。第3話ではサイ・サイシーに不意を突かれて蹴り倒され、あえなくガンダムを奪い返されてしまいました。その後ドモン&サイによって黒龍団もろとも成敗され、彼の野望は潰えます(CV:稲葉実)。なお“飛龍”は中国語で「飛ぶドラゴン」の意で、サイの祖父サイ・フェイロン(飛龍)と同じ読みの名ですが、特に血縁や関係はなく単なる偶然と思われます。
- ストーカー(眼帯口ひげのおじさん) – 毎回冒頭に登場する謎の覆面紳士。片目に黒い眼帯、口元に立派な口髭という風貌で、第1話から各話冒頭でガンダムファイトの簡単なルール説明と煽り役を務めています。第3話でも冒頭に登場し、「今日のカードはネオチャイナのドラゴンガンダムだが、どんなファイターが乗り込むのかは…」といった解説を披露しましたjiyuunomegamihou.web.fc2.com。劇中で名前は明かされませんが、ファンからは「レディーゴーおじさん」などと呼ばれ親しまれていますgundam.dancing-doll.com。ユーモラスかつ怪しげな存在感で物語を盛り上げる名物キャラです。
登場モビルファイター
- シャイニングガンダム(ネオジャパン) – ドモンの搭乗モビルファイター。近接格闘戦用に開発された機体で、モビルトレースシステムによりファイターの動きを忠実にトレースします。ドモンの高い格闘能力を反映し、圧倒的な機動力と打撃力を誇ります。頭部には“スーパーモード”発動時に開くシャイニングヘッド、右手には必殺技シャイニングフィンガー発動用の発光機構を備え、敵の頭部(コクピット)を掴んで内部から破壊する荒技で幾多の強敵を葬ってきましたgundam.dancing-doll.com。第3話では終盤に登場し、レインが隠しておいた岩場からドモンの元へ飛来。ドラゴンガンダムとのファイトではシャイニングフィンガーでドラゴンガンダムの頭部を捕らえますが、それは陽動で本物を取り逃がし、逆襲を許してしまいます。結果的に両機頭部が損壊し痛み分けとなりましたが、この機体がなければドモンは恵雲たちの要求を呑まざるを得なかったため、間一髪で駆けつけた頼もしい相棒でした。なおコアランダーと合体することで移動形態にもなるなど多機能ですが、今回はコアランダーが盗まれたため徒歩(?)で出撃しています。
- ドラゴンガンダム(ネオチャイナ) – サイ・サイシーの搭乗モビルファイター。中国を象徴する「龍」をモチーフにデザインされており、両腕が龍の頭部型のドラゴン・クローになっているのが最大の特徴ですbobusann.exblog.jp。このクローは胴体と繋がったワイヤーで自在に伸縮し、離れた相手を捕縛したり攻撃したりできます。さらに口から超高熱火炎を噴射可能で、劇中でも村を襲撃した際に火炎放射で建物を焼き払っていましたg-gundam.netg-gundam.net。接近戦ではクロー先端部の鋭い牙で敵装甲を噛み砕くこともできますg-gundam.net。また、サイ・サイシーの少林寺拳法の技を再現すべく造られた機体であるため、敏捷な動きで攪乱したり奇襲を仕掛ける戦法を得意としますg-gundam.net。第3話のファイトではフェイロン・フラッグ(飛龍旗)と呼ばれる特殊武装を使用しました。複数の長い棒状武器を地面に突き刺し、旗のように発生するエネルギー膜で結界を張ることで相手の視界を遮りつつ、自身の残像を周囲に映し出すトリッキーな技ですg-gundam.net。この幻惑攻撃により一時ドモンを翻弄しましたが、最後はシャイニングガンダムの猛反撃に遭い頭部を損傷。決着はつかなかったものの、本領を発揮したドラゴンガンダムはネオジャパンの機体に勝るとも劣らない実力を見せつけましたja.wikipedia.org。ちなみに必殺武器である弁天刀は、龍の尾に見立てた背部パーツに格納された長刀で、劇中ではドラゴンガンダムが飛翔しながらこの刀でシャイニングガンダムの首を狙う離れ業を見せていますja.wikipedia.org。
- 黒龍団の小型機 – 黒龍団がドラゴンガンダム強奪前から所持していた簡易機動兵器。正式名称は不明ですが、村襲撃時に登場したそれは中国の龍を模した車両型メカでした。細長い龍の頭部と胴体を持ち、地上を高速移動して建物を破壊する様子が描かれています。火器も備えているらしく、ドラゴンガンダムと共に村を蹂躙していましたgundam.dancing-doll.com。おそらく旧型の作業用機械か改造車両と思われますが、第3話限りの登場です。ドモンたちとの戦闘ではシャイニングガンダム登場前に撃退されました。
- コアランダー – シャイニングガンダムのコックピット兼用の小型戦闘マシン。戦闘時にはガンダム背部にドッキングし、非戦闘時には高速ホバーカーとして機能します。第3話ではドモンの移動手段として登場しましたが、宿泊先襲撃のドサクサで黒龍団団員に奪われてしまいましたbongore-asterisk.hatenablog.jp。ドモンは敵を蹴り飛ばしたはいいものの、その敵が偶然コアランダーの上に落ちてしまい、そのまま乗り逃げされるという間抜けなミス…。後にアジト潜入時に奪還しますが、油断大敵でした(ドモン自身も「しまった!」と頭を抱えていました)。コアランダーはシリーズを通じてドモンの足として活躍しますが、盗難されたのは後にも先にもこの時くらいでしょう。
技・演出
【必殺技&戦法】 第3話で注目すべき必殺技は、なんといってもサイ・サイシーの幻惑戦法です。彼が操るドラゴンガンダムは中国拳法の使い手らしくトリickyな武器を備えており、劇中終盤で放った**「フェイロン・フラッグ」は視聴者にも強い印象を残しました。地面に複数の棒状武器を突き立てると、それぞれから緑色の旗のような光が広がり、周囲一帯が眩い光に包まれます。ドモンのシャイニングガンダムは光に紛れた多数の幻影に囲まれ、敵の位置を見失ってしまいましたgundam.dancing-doll.com。この技は公式設定によれば「結界を張り敵を攻撃する」ものとされ、サイの祖父にちなんで“飛龍(フェイロン)の旗”と名付けられていますg-gundam.net。劇中では必殺技名のコールこそありませんでしたが、視覚効果といい奇抜な戦法といい、「いかにもGガンダムらしい!」と視聴者を唸らせました。残像に惑わされまいと目を閉じて気配を探るドモンの描写も熱く、敵の気を読んで反撃するという武術的な駆け引きが光る演出です。ドモンは気配を察知し「そこだ!」とシャイニングフィンガー**を炸裂させましたが、それすらサイの策の内。幻を掴ませて虚を突くという一枚上手の戦法には、さすがのドモンも驚きを隠せませんでした。
他にも、ドラゴンガンダムのドラゴン・クローによる攻撃も見逃せません。両腕が龍の頭になっている独特の意匠は、伸縮自在というロマンあふれる機能を備えていますg-gundam.net。劇中序盤、黒龍団が村を襲った際には、このクローを遠方から伸ばして建物を薙ぎ倒すシーンがありました。まるで中国の伝説の龍がそのままモビルファイターになったかのようなダイナミックな描写で、設計者の遊び心が感じられます(**「龍のデザインを腕に使うなんてセンスがいい!」**という感想もbobusann.exblog.jp)。また、クローから噴射される高熱火炎も強力で、祭りの夜空を焦がす炎として描かれていました。火を噴くドラゴンというお約束をしっかり押さえている点に、メカデザインの妙があります。
対するドモン側も負けていません。シャイニングガンダムの代名詞シャイニングフィンガー(石破天驚拳)は今回も炸裂しました。モビルトレーススーツで同調したドモンの右手が緑色に発光し、巨大なガンダムの手にもそのエネルギーが集中。「俺のこの手が真っ赤に燃える!」の名乗り(※シャイニングの場合は緑色ですが)でお馴染み、相手の頭部を掴み砕くド迫力の必殺技です。第3話では残像を見切ったドモンがドラゴンガンダムの頭部を鷲掴みにし、勝利寸前まで追い込みましたgundam.dancing-doll.com。結果的にこれは囮でしたが、シャイニングフィンガーの一撃必殺ぶりは黒龍団の面々も恐れおののいた様子。ちなみに頭部を破壊された者は失格というファイト規約がありますがg-gundam.net、この時はドラゴンガンダムの頭部が完全に破壊される前に決着が中断したため引き分け扱いとなったようです。お互いの頭を狙い合うギリギリの攻防は手に汗握る名演出でした。
【演出面の見どころ】 第3話はシリーズ序盤ということもあり、演出的にもサービス精神旺盛です。まず冒頭、恒例の眼帯口ひげの謎おじさん(ファイトアナウンサー)のナレーションからスタートします。各話共通の映像を使い回しているコミカルさも相まって、視聴者に「お約束の始まりだ!」と安心感を与えてくれますgundam.dancing-doll.com。そして本編に入ると、中国らしさ満点のロケーションが連続します。竹林が生い茂る山道、赤提灯が揺れる夜祭りの村、そしてクライマックスの万里の長城!これら舞台を存分に活かしたカメラワークも素晴らしく、例えば万里の長城上で対峙する2機のガンダムのカットでは、月明かりに照らされた長城の上を疾走しながら拳を交える姿が映され、そのシルエットのかっこよさに痺れます。作画も気合十分で、シャイニングガンダムとドラゴンガンダムの機体描写は重量感と俊敏さが両立しており、特にドラゴンガンダムの蛇のようにうねる腕の動きはセルアニメとは思えぬ滑らかさでした。
また本エピソードは緩急の付け方も巧みです。中盤まではサイ・サイシー(竹林少年)のコミカルな行動で笑いを誘い、後半は一転してシリアスな騙し合いとバトルでぐいぐい引き込みます。特にドモンが黒龍団に捕まりボコボコに殴られるシーンはショッキングで、「主人公なのにこんな序盤で大ピンチ!?」とハラハラしました。しかしすぐ後にサイの計略が明かされ、ドモンが「お前のせいで酷い目に遭ったんだぞ…」と怒りつつも憎みきれない表情を見せるなど、シリアスとコミカルの按配が絶妙ですbongore-asterisk.hatenablog.jp。牢の中でサイが「全部作戦さ」と種明かしするやり取りもテンポよく、視聴者としては「やられた!」と痛快な気持ちになりました。
音楽面では、サイ・サイシー登場に合わせて中国風のBGMが効果的に使われています。祭りの場面では二胡の調べが流れ、長城での決戦ではお馴染みの熱いバトルテーマに民族楽器のアレンジが加わっていました。こうした国ごとの音楽演出もGガンダムの醍醐味で、第3話はその先駆けと言えるでしょう。
総じて、第3話「倒せ!魔神のドラゴンガンダム」はメカアクション、ドラマ、笑いのバランスが非常に良く取れた演出が光ります。サイ・サイシーの登場回として、彼のキャラクター性(軽妙さと底知れぬ強さ)を余すところなく描き出した巧みな構成であり、視聴後は爽快感すら覚える名エピソードとなりました。
名シーン・名セリフ
「それじゃあ、お前が!?」
「大当たりぃ! おいらが本物の、サイ・サイシーだ!」bongore-asterisk.hatenablog.jp
本作屈指の名場面として語られるのが、サイ・サイシーの正体明かしのシーンです。少年竹林の裏切りからの大どんでん返し、そしてドラゴンガンダムのパイロットスーツを着たサイが得意げに名乗りを上げる瞬間は、多くのファンにとって鳥肌モノでした。「やっぱりお前がサイ・サイシーか!」と視聴者は分かっていても、ドモンと一緒に改めて驚かされる演出がニクいところです。この台詞回しも山口勝平さんのハマり具合が抜群で、少年らしい得意満面な調子が痛快でした。
他にも第3話には印象深いシーンが満載です。たとえばドモンとサイが初めて共闘した場面。宿の村が黒龍団に襲われた際、サイ(竹林少年)は一緒になって必死に逃げ延びます。ドモンは「危ない、下がってろ!」と少年を庇いながら戦いますが、少年は意外にも身軽で、二人で阿吽の呼吸の連携を見せるのです。結果的にドモンはミスでコアランダーを奪われてしまうものの、炎に包まれた夜の村を背にドモンと少年が肩を並べて立つシーンは、後の共闘を予感させる胸アツな瞬間でした(当時は少年=サイとは知らないドモンですが、妙に息が合っていたのが微笑ましい)。
拷問シーンも忘れがたいポイントでしょう。吊るされたドモンが盗賊たちに殴られる痛々しい描写は、シリーズでも異色のハードさです。しかしドモンは屈せず「ガンダムファイトで勝負しろ、卑怯者!」と啖呵を切ります。飛龍がせせら笑って取り合わない様子は悔しいですが、ドモンの闘争心とガンダムファイターの矜持が垣間見える名台詞でした。結果的にこのシーンはサイの策にハマってしまった形ですが、ドモンの不屈さと正々堂々さが際立ちます。
戦闘決着直後のドモンとサイの会話も胸に沁みます。引き分けに終わった後、サイは「ドモンの兄貴、強いねぇ!またやろうよ!」と満面の笑みで語りかけます。ドモンも悔しそうにしつつ「お前こそ…なかなかやる」と認める表情を見せました。勝負はつかなかったものの、お互い実力を認め合った瞬間です。ここで交わした笑顔と握手(演出上は言葉少なでしたが、雰囲気として)は、のちのシャッフル同盟結成への伏線とも言える名シーンでした。ドモンにとって同世代の仲間と言える存在ができた最初の瞬間であり、視聴者としても「良かったねドモン!仲間が増えたね!」と嬉しくなるワンシーンです。
そして忘れてはならないのが万里の長城での決闘シーンそのもの。特にフェイロン・フラッグからの攻防は、第3話随一の見どころでした。幻惑を破ったドモンがシャイニングフィンガーを炸裂させ、「掴んだ!」と思った直後にそれが偽物と判明する流れはスリリングの一言。「見切った…と思ったら、それすら策の内!」という二段構えの展開に、当時TVの前で「やられた!」と叫んだファンも多いでしょう。ドモンが掴んだ偽ドラゴンガンダムの頭部がぼろっと砕け散り、本物が背後上空から襲いかかるカットのカッコ良さはシリーズ屈指です。その後、土煙の中でシャイニングガンダムの首に弁天刀が突き付けられ、ドラゴンガンダムの頭部もまたドモンの手中にある…という相討ち的な静止画演出も渋い名シーンでした。お互い動けば相手も死ぬ、という緊張感がビリビリ伝わり、「勝負ありか!?」と固唾を飲む間に時間切れという演出は憎いほど巧みです。このように第3話は一瞬一瞬がドラマチックに切り取られており、まさに名場面の宝庫と言えるでしょう。
裏話・制作トリビア
◆シリーズ初の“異色ガンダム”作品と時代背景
『機動武闘伝Gガンダム』は宇宙世紀シリーズから大胆に舵を切った最初のガンダムスピンオフ作品です。放送開始は1994年4月、ちょうどアーケード格闘ゲームブーム華やかなりし頃でもあり、本作企画時には「ロボットアニメに格闘ゲーム要素を入れてほしい」というスポンサー(バンダイ)からの強い要請があったといいますja.wikipedia.org。その結果生まれたのが「国家代表同士のモビルファイターが1対1で戦うトーナメント戦」というユニークな設定でした。第3話までの流れを見ると、毎回異なる国のガンダムファイターが登場しドモンと対決するという**“今週のライバル”**的構成になっており、これは当時流行していた対戦格闘ゲームのキャラクター選択(各国代表の格闘家が登場する)を彷彿とさせます。実際、本作総監督の今川泰宏氏自身「僕はカンフー映画直撃世代で、ブルース・リーやジャッキー・チェンが大好き」と公言しておりsunrise-world.net、格闘技や武侠映画のエッセンスをガンダムに取り入れた意図が語られています。特にお気に入りはリー・リンチェイ(ジェット・リー)主演の映画『少林寺』だそうで、中国武術への憧れから「ガンダムにも色んな武器を持たせたい」とアイデアを盛り込んだといいますsunrise-world.netsunrise-world.net。ドラゴンガンダムのフェイロン・フラッグや弁天刀といったギミックは、そうした今川監督の趣味が色濃く反映された部分と言えるでしょう。
◆サイ・サイシーというキャラクター
制作裏話として興味深いのは、サイ・サイシーのキャラクター造形です。彼は孫悟空やカンフーヒーローの系譜を継ぐ存在とも言われます。小柄で敏捷、如意棒のように伸びる龍爪、火を噴く龍とともに戦う姿は、中国の英雄譚や『西遊記』の猿猴を彷彿とさせます。公式設定ではサイ・サイシーは16歳・身長132cmとかなり小柄でja.wikipedia.org、これは歴代ガンダム主要キャラの中でも異例です。しかしその小さな身体に高い戦闘能力と大きな夢を秘めているギャップが魅力であり、制作側も「年少ながら伸びしろと潜在能力は随一」と位置付けていますw.atwiki.jp。声を演じた山口勝平さんは、当時からやんちゃな少年役に定評があり、サイ・サイシー役でもその明るいエネルギーが存分に発揮されました。関智一さん(ドモン役)によれば、山口さんは面倒見が良くムードメーカー的存在だったそうで、アフレコ現場でもサイ同様に周囲を明るくしていたとか(30周年記念インタビューより)。サイ・サイシーのキャラ人気は高く、近年のアンケートでも山口勝平さんの演じた好きなキャラ上位に挙げられるほどです。
◆中国文化描写と少林寺拳法の実際
第3話ではネオチャイナの文化が存分に描かれています。万里の長城や少林寺といった歴史遺産、龍や中華料理、祭囃子などステレオタイプな中国要素がこれでもかと詰め込まれています。制作当時はこれら典型的な表現がむしろ親しみやすさに繋がり、視聴者にも「中国と言えばこれ!」という分かりやすいアピールとなっていました。少林寺の僧侶たちが必殺仕事人的な勘違いで暗殺を企てる展開もフィクションならではですが、中国武術界の厳しい師弟関係や名誉を重んじる気風をオーバーにデフォルメしたとも言えます。実際の少林寺拳法(作中でサイが称する武術)は、もともとは中国少林寺の拳法を源流としつつ日本で体系化された武道で、護身術的な徒手格闘技です。当然ながら実際の少林拳法にフェイロンフラッグや火炎放射はありませんが(笑)、アニメ的誇張によって「拳法VS拳法の異種格闘戦」をロボットで表現したのが本作の醍醐味でしょう。サイ・サイシーは古い伝統の継承者でありながら、ガンダムファイトという新しい舞台で戦う若者です。これは地球に残された伝統文化と宇宙コロニーの最先端技術との融合を象徴しており、作品世界のテーマ「旧来の価値観と新時代の戦い」を体現しているとも考えられます。余談ですが、サイのガンダムファイト参加理由は「衰退した少林寺の再興」のためと設定されておりja.wikipedia.org、彼の戦いは単なる自己都合ではなく故郷の文化を守る使命でもあります。この辺りの背景は劇中後半で語られますが、第3話の時点でも恵雲たちとのやり取りから垣間見ることができます。彼ら僧侶があれほどまでにサイの行いに神経を尖らせたのも、「少林寺の名を汚したくない」という必死さゆえでしたgundam.dancing-doll.com。
◆黒龍団とフィクションならではの演出
黒龍団という盗賊集団は、一種の噛ませ犬的存在として配置されています。彼らはガンダムファイトとは無関係の地元ならず者ですが、だからこそ正規ファイターのサイ・サイシーやドモンの引き立て役になりました。飛龍自身は悪党然とした台詞を残しており、例えばドラゴンガンダム奪取時の「『ふはは…ついにガンダムがワシのものに! さあ今こそ立て黒龍団!燃やして!壊して!奪い尽くせェ!』」という高笑いは勧善懲悪の時代劇を彷彿とさせますjiyuunomegamihou.web.fc2.com。これも監督の今川氏が愛する香港映画や功夫映画のノリを取り入れたもので、ある種ベタな悪役像が逆に心地よい効果を生んでいます。「魔神のドラゴンガンダム」とサブタイトルで呼ばれたように、盗賊に操られたガンダムはまさに“魔神”と化して村を襲いましたが、それを成敗するのが本物のファイターであるという勧善懲悪のカタルシスが爽快です。黒龍団そのものは一話限りで壊滅しますが、彼らのおかげでサイ・サイシーの株が上がり、ドモンとの友情も芽生えました。縁の下の力持ち(?)として良い仕事をした敵役だったと言えるでしょう。
◆制作スタッフと豆知識
第3話の脚本を担当したのは五武冬史氏、絵コンテは西森章氏、作画監督は西村誠芳氏でしたja.wikipedia.org。五武氏はGガンダムのメインライター陣の一人で、第1話や第49話(最終回)も手掛けている人物です。実は「五武冬史」というペンネームは今川監督の遊び心から来ており、“五指に入る武闘家=ガンダムファイター”の意味とも囁かれます(五と武で**G(ガンダム)**を連想させるという説も)。絵コンテ・演出の西森章氏はサンライズ作品で場面転換の妙に定評があり、本話でもコミカルからシリアスへのスムーズな転換が見事でした。また、今回登場した万里の長城や中華街風の村の美術背景も非常に凝っています。背景スタッフは中国の風景画を参考に色彩設計したようで、夕焼けの竹林や提灯の灯りなど色使いが美しくノスタルジックです。アクション作画については、ドラゴンガンダムのデザインを担当した大河原邦男氏も「腕が龍というのは描くのが大変だったのでは」と後年述懐していますが、動画マンたちは見事に動かしてみせました。このあたり、サンライズの職人技には頭が下がります。
以上、裏話を交えつつ振り返ると、第3話は制作側の意気込みが強く感じられる回でした。新キャラであるサイ・サイシーとドラゴンガンダムの魅力を最大限引き出しつつ、当時のカンフーブームや異種格闘技戦のトレンドをガンダムに融合させた意欲作と言えるでしょう。
解説・考察
★サイ・サイシー登場回のテーマ
第3話のテーマを一言で表すなら「真のガンダムファイターの証明」ではないでしょうか。物語序盤、少林寺の恵雲・瑞山は「サイ・サイシーは国と寺の恥晒し」と決めつけ、命すら奪おうとしました。しかし終盤で明らかになったのは、サイ・サイシーこそ誇り高き本物のガンダムファイターであり、盗賊行為などしていなかったという事実です。彼は誤解と陰謀を乗り越え、自らの手でガンダムを取り戻し、公式ルールに則った決闘でドモンと渡り合いました。「疑われた名誉を自らの拳で晴らす」という構図は熱い王道であり、本エピソードの軸になっています。サイ自身、第3話冒頭では単なる快活な旅少年に見えますが、ラストでは立派な戦士として認められました。これは名誉の回復と自己証明の物語とも読めます。誤解されたまま逃げるのではなく、正々堂々戦って潔白と実力を示す——それこそガンダムファイターの矜持であり、サイ・サイシーというキャラクターの芯の強さです。
★キャラクター描写の妙
サイ・サイシーのキャラ描写について掘り下げると、彼は対照的な二面性を持つように描かれています。一つは子供らしい天真爛漫さ。年相応にイタズラ好きでお調子者で、ドモンをからかったり、美味しい話に飛びついたりする無邪気さがあります。例えば宿屋で「ボクたち料理手伝います!」とちゃっかりただ飯にありつくシーンは、腹ぺこ少年らしく愛嬌たっぷりでした。同時にもう一つの面は、驚くほどの胆力と知略です。サイはわずか16歳にして自ら盗賊団に潜入し、凶悪な大人達を出し抜くという離れ業をやってのけましたja.wikipedia.org。牢のドモンに「全て作戦」と明かす場面など、視聴者も「この子、そこまで考えて!?」と舌を巻いたことでしょう。戦闘でも、ドモン相手に真っ向勝負するだけでなく幻惑戦法で翻弄するクレバーさを見せています。この飄々とした表の顔と聡明で勇敢な裏の顔のギャップこそ、サイ・サイシー最大の魅力です。製作陣は彼を単なる明るいマスコット少年にはせず、芯に熱さと知性を宿した“将来有望な戦士”として描きました。ドモンも当初は子供扱いしていた節がありますが、戦いの後には完全に一目置いていましたja.wikipedia.org。年少だからと侮れない頼もしさを表現した点で、シリーズ全体でも屈指のキャラ立て成功例と言えるでしょう。
★国別エピソードの中での位置付け
Gガンダム序盤は各国の代表ファイターとの出会いが続きますが、第3話はその中でも特に重要な位置を占めます。なぜならサイ・サイシーがドモンの仲間(シャッフル同盟)となるメイン5人のうちの一人であり、初めて「引き分け」に終わったライバルだからですja.wikipedia.org。第1話のミケロ(ネオイタリア)、第2話のチボデー(ネオアメリカ)戦はドモンの完勝でした。しかしこの第3話で初めてドモンは苦戦を強いられ、結果を出せませんでした。つまりドモンにとってサイは「今までにない強敵」となったわけです。これにより視聴者も「他にもドモンと互角に渡り合えるファイターがいるのか!」と大会の熾烈さを実感しますし、物語的にもドモン一強ではない群像劇の様相が帯びてきます。さらにサイ・サイシーは年齢も境遇もドモンと大きく異なるキャラです。家族(父と祖父)の悲願である少林寺再興を背負い、幼い頃から師匠たちに守られ修行してきたという背景は、師匠に反発し単身で戦うドモンとは対照的ですg-gundam.netg-gundam.net。こうした対比構造によって、お互いのキャラクターが浮き彫りになっています。ドモンが「孤高の狼」タイプなら、サイは「守られ育った天才少年」タイプと言えるでしょう。しかし戦いと交流を経て、ドモンは人の支え合いを学び、サイは自立していく…という今後の成長が示唆され、第3話はそのプロローグとして機能しています。ドモンに仲間意識が芽生え始めたのもこの回が初めてで、彼の人間的成長の第一歩とも位置付けられます。
★中国文化のステレオタイプと温かみ
劇中で描かれるネオチャイナの風俗は、かなりデフォルメされた**“ザ・中華”的描写です。少林寺の僧侶、龍の飾り、爆竹と提灯、麻雀牌のマーク(シャッフル同盟のクラブエースの紋章は中華牌から)など、一歩間違えばクリシェの羅列になりかねない要素を、本作はあえて真正面から取り入れています。これは監督の今川氏がインタビューで語っているように、香港・中国のカンフー映画愛が大きいでしょうsunrise-world.net。往年のカンフー映画では、師匠と弟子、少林寺と悪党など典型的な構図がよく描かれましたが、第3話はまさにそれを踏襲しています。少林寺側の勘違いや盗賊団のコミカルな悪役ぶりも、古き良きカンフー映画のノリです。ステレオタイプであっても、それを愛情とリスペクトを持って描写する**ことで独特の温かみが生まれている点に注目です。例えば恵雲&瑞山の二人は頑固で融通が利かない老人ですが、サイへの愛情は本物であり、最後は彼の健闘を素直に称えています。その様子は、どこか昔気質の頑固親父が息子の成長を認めるような微笑ましさがありました。また万里の長城での決闘というロケーションも、「ザ・観光名所」でありながらガンダムファイトならではの説得力で見せてくれました。地球がリングという発想から、世界遺産すらバトルフィールドにしてしまう大胆さはGガンダムの醍醐味です。現実にはあり得ない光景でも、「ガンダムファイトだから」と受け入れさせる作品の底力が感じられます。
★少林寺拳法とガンダムファイト
少林寺拳法について、作品内の扱いと実際の違いも考察してみましょう。劇中では「少林寺拳法=中国伝統の拳法」というニュアンスですが、実際には日本で開発された武道です(中国少林寺由来の流派という建前はあります)。もっと言えば、リアルな少林拳の戦いは徒手格闘であり、巨大ロボット戦ではありません。しかしGガンダムは「格闘技戦争」という大胆設定のもと、少林拳の精神や技をロボットバトルに投影しています。シャッフル同盟の他のメンバーもボクシング(チボデー)や忍術(シュバルツ)、相撲やプロレス的肉弾戦(アルゴ)など人間の格闘技をガンダムで表現しています。サイ・サイシーの場合、彼の拳法の型はドラゴンガンダムの動きに反映され(モビルトレースシステムによって)、彼が宙返りすればガンダムも宙返りし、彼が蹴りを放てばガンダムの龍爪も敵を蹴り飛ばすという具合です。これはある意味「武術の巨大ロボット化」という離れ業で、リアルさ云々よりも発想の面白さが勝ります。実際、第3話でサイが飛龍を蹴り倒すシーン(生身で敵パイロットを撃破)は少林寺拳法というよりカンフー映画的アクションですが、視聴者の溜飲を下げる痛快シーンでした。要するにGガンダム世界では**「格闘技=最強の兵器」**というロジックが貫かれており、少林寺拳法もその一つとして脚色されているのです。作中の解釈では、宇宙世紀の兵器戦争が廃れて格闘技戦争になったのは、戦いの本質が「人間の魂と肉体」に帰結したからという暗喩も感じられます。そう考えると、伝統武術の継承者サイ・サイシーが21世紀の未来でもその拳で世界を相手に戦うという図式は、ある種痛烈な風刺でもあり、同時に熱いロマンでもあります。
★ドモンとサイ、師弟関係の対比
第3話でクローズアップされたのは、師匠と弟子の関係性でもあります。サイには恵雲・瑞山という育ての親的師匠がおり、一方ドモンにも東方不敗マスター・アジアという偉大な師匠がいます(第1話で名前が出ました)。しかしドモンは師匠とはぐれ単独で行動しており、対してサイは常に師たちに見守られている。この対比は、両者の精神面に影響を及ぼしています。ドモンはどこか孤独と焦燥を抱えたストイックな戦士ですが、サイは天真爛漫で仲間思いのムードメーカーです。これは育った環境の違い(厳格な父と優しい母の違い?)にも通じるでしょう。もっとも、サイも当初は師匠たちへの思いが希薄で、不真面目な面がありましたja.wikipedia.org。彼が本格的に少林寺再興へ情熱を燃やすのは、父の遺した手紙を読む中盤以降です。しかし第3話で一度破門されかけた(殺されかけた)経験は、サイにとって自らの信念を問われるターニングポイントになったはずです。結果的に恵雲たちは誤解に気づきサイを許しましたが、サイからすれば「もう二度と師匠たちに疑われるような隙は見せまい」と決意したのではないでしょうか。実際、以降のサイは修行にも身を入れるようになります。師弟の絆が試され強まったエピソードとして、第3話はサイの内面的成長の契機になったと考えられます。一方ドモンはこの時点では師匠不在ですが、サイと彼の師匠たちを見て何か思うところがあったかもしれません。後にマスター・アジアと再会した際、ドモンが師への尊敬と反発で揺れ動く展開がありますが、サイの存在はドモンに師匠との向き合い方を考えさせる材料になった可能性があります。仲間でありライバル同士が互いの境遇から学び合う関係性も、本作の深みを与えるポイントです。
総合すると、第3話は**「真の友情と実力は戦いを通じてこそ分かり合える」**というGガンダムの根幹テーマが色濃く出た回でした。初対面では駆け引きだらけだったドモンとサイですが、最終的に拳を交えることで心を通わせています。まさに「拳で語る」熱い男たちのドラマが描かれ、ファンの心を掴んだのです。
筆者コメント(あとがき)
アニメ『Gガンダム』第3話、いやぁ何度見返しても面白いですね!子供の頃にリアルタイム視聴していたときは、ドモンがお坊さんに「殺してくれ」と頼まれるシーンに衝撃を受け、「ガンダムでそんな物騒な!?」とドキドキしたのを覚えています。しかしドモンがサイを殺すどころか、最後は熱い握手を交わす展開にホッとしたものです。あの頃はサイ・サイシーの作戦の巧妙さなんて分からず、「なんかドモンが可哀想…でもサイって奴も憎めないなぁ」くらいの感想でした。それが大人になって見返してみると、サイのしたたかさもドモンの器量も分かってきて、より物語に深みが増したように感じます。
特に好きなのは、サイが牢の中のドモンに悪びれず「全部作戦だよ」と言うところ。普通なら「ごめんドモン兄貴!」とか謝りそうなものですが、サイは全然悪気なくケロッとしてるんですよね。ドモンも「お前なぁ…」と呆れつつ怒鳴り返したりしない。ここ、二人の相性の良さが出ている気がします。お調子者と生真面目、一見合わなそうでいて実はバランスが取れているコンビなんですよね。以降のシリーズでもドモンとサイのやりとりは微笑ましく、大好きな掛け合いの一つでした。
演出的にも第3話はトップクラスに楽しい回でした。中国拳法モチーフのガンダムが出てくるなんて当時は斬新すぎて、「腕が伸びるガンダム!?しかも火を吹く!?」と友達同士で盛り上がったものです。今見ると確かにツッコミどころも満載なんですが(黒龍団の皆さんもう少し警備ちゃんとして…とか)、そんな細かいことは吹き飛ぶ勢いと熱さがありますね。**「シャイニングフィンガー vs フェイロンフラッグ」**なんて、字面だけでワクワクしてしまいます。メカ好きとしては、万里の長城の上でガンダム同士が戦う画に痺れました。背景美術の緻密さと、ロボットアクションの融合が素晴らしく、当時プラモデルを並べて友達と「万里の長城ごっこ」までしたほどです(長城のジオラマなんて無いので教科書を積んで代用しましたが…笑)。
サイ・サイシーは今でもシリーズ屈指の人気キャラですが、その初登場回にこれだけのエピソードを持ってきたスタッフの力の入れように脱帽です。今川監督のインタビューを読むと本当にカンフー映画愛が伝わってきて、「なるほど、だからあんなに露骨にカンフーテイストだったのか!」と膝を打ちましたsunrise-world.net。当時は分からなかったけど、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』に“悪の組織の島で武術トーナメント”なんて設定があったり、ジャッキー映画で師匠が弟子を半殺しにしようとする場面(『酔拳』とか)があったり…第3話はいろんなオマージュの塊だったんですね。それをガンダムでやっちゃう遊び心、最高です。
さて、これでドモンの仲間候補がチボデーに続きサイと2人揃いました。物語はいよいよ次の舞台へ――。
次回予告
次回、第4話「いざ勝負!真紅のバラの貴公子」。華麗なるネオフランス代表ジョルジュ・ド・サンドが登場し、ドモンと対決! エレガントなガンダムファイトの行方はいかに!?お楽しみに。ガンダムファイト、レディー・ゴー!
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