1. あらすじ(ネタバレあり)
ドモン・カッシュとレイン・ミカムラは、デビルガンダムを追う極秘任務のためネオメキシコに滞在中でしたg-gundam.netg-gundam.net。ドモンは幼馴染のレインと共に、失踪した兄キョウジの手がかりを求めて現地の人々に聞き込みをしていました。しかし突如、謎の人物に襲撃され、毒矢を受けたドモンは倒れてしまいますg-gundam.net。襲撃者の正体はネオメキシコ代表ガンダムファイター、チコ・ロドリゲスでした。彼は妹ジーナを救うためガンダムファイトを放棄し、祖国軍から追われていたのですbongore-asterisk.hatenablog.jp。チコはドモンを追手と誤解して襲ったのでした。
毒で痺れたドモンは、チコの妹ジーナに命を救われますg-gundam.net。目覚めたドモンは自分を助けてくれた兄妹に次第に同情し、彼らを助けたいと思うようになりますg-gundam.net。一方、チコはこれまで国家の追っ手や挑戦者を暗殺してまで逃亡生活を続けておりja.wikipedia.org、遂にはネオアメリカ代表チボデー・クロケットすら抹殺しようとしたことで事態が悪化。ネオメキシコ軍も本格的に彼を追い詰めるようになっていましたja.wikipedia.orgbongore-asterisk.hatenablog.jp。
やがてジーナが自分を重荷に思って失踪し、それを追ってチコは軍に包囲されてしまいますja.wikipedia.org。ジーナから「自分を置いて逃げて」と懇願されたチコは、ついに腹を括り、ドモンに正式なガンダムファイトを申し入れますja.wikipedia.org。海辺に隠してあったテキーラガンダムを起動させ、ドモンのシャイニングガンダムとの一騎打ちに挑むのでしたgundam.wiki.cre.jp。
戦いは瞬く間に決着します。戦闘開始直後、ドモンのシャイニングガンダムはテキーラガンダムの両腕を切断し、続けて必殺のシャイニングフィンガーで頭部を粉砕gundam.wiki.cre.jp。テキーラガンダムは大破し、海中へ沈みました。公式には頭部爆発によってチコは戦死したとみなされ、ネオメキシコ代表は予選敗退扱いとなりますgundam.wiki.cre.jp。しかしそれはドモンの機転による偽装死でした。実際にはチコは密かに脱出し、命からがらジーナと再会しますja.wikipedia.org。兄妹はドモンたちの計らいで追っ手を欺き、残された時間を共に過ごすため小舟で旅立っていきましたja.wikipedia.org。チコの最期を見届けたネオメキシコ軍のゴンザレス委員長は「彼は国のために名誉ある戦いをした」と称え、追撃を断念しますja.wikipedia.org。
2. 登場キャラクター(チボデー再登場も含む)
- ドモン・カッシュ – ネオジャパン代表の主人公。第13回ガンダムファイトに参加しつつ、デビルガンダムと兄キョウジを追う旅をしていますg-gundam.net。本話でも使命に忠実で当初はチコを追手として容赦なく挑発しますが、ジーナを助ける姿に心を動かされ、人情味を見せました。結果的にチコを救うため、彼の“死”を偽装する機転を利かせていますja.wikipedia.org。「運命をそのまま受け入れるつもりか!立ち向かわなくてどうする!」というセリフに象徴されるように、苦境でも戦い抜く姿勢を貫きましたkeikei0079.com。
- レイン・ミカムラ – ドモンの幼馴染でサポート役の女性。医大生出身でもあり、毒に倒れたドモンの治療やジーナの診察も行いましたdatenoba.exblog.jp。ドモンとは目的を巡って意見が分かれ、チコたちを見逃そうと進言するも拒まれますdatenoba.exblog.jp。それでも最後は協力し、チコ救出作戦に加担しました。エンディングでは「…男達は勝手過ぎる!!!」と涙ながらに吐き捨て、ドモンとチコの芝居に苦笑する場面も印象的ですdatenoba.exblog.jp。
- チコ・ロドリゲス – ネオメキシコ代表のガンダムファイター。22歳ja.wikipedia.org。妹ジーナの「地球で暮らしたい」という願いを叶えるためだけにファイターとなり、祖国を捨てて地球に降り立った異色の人物ですja.wikipedia.org。しかし大会では戦わず逃亡を続け、追っ手を消すため手段を選ばぬダーティーファイトに走っていましたja.wikipedia.org。毒針の使い手で、ドモンや挑戦者たちを暗殺しようとする冷徹さを見せますja.wikipedia.org。妹思いのあまり暴走していた彼も、ジーナの叱咤とドモンの真っ直ぐな言葉に心を打たれますja.wikipedia.org。最後はガンダムファイターとしての誇りを取り戻し、ドモンに決闘を挑みました。死を偽装して逃亡生活に終止符を打った後、晴れて妹との穏やかな時間を手に入れますja.wikipedia.org。後半のバトルロイヤルでは“ガンダム連合”の一員として再登場し、ドモンたちに加勢する姿も描かれましたja.wikipedia.org。
ジーナ・ロドリゲス – チコの妹。18歳ja.wikipedia.org。コロニー型ウイルスという不治の病に侵され、余命1年と宣告された儚い少女ですja.wikipedia.org。幼い頃から「いつか兄と二人で地球の海を見る」ことを夢見て育ちました。冒頭の回想シーンでは、少年時代のチコに「大きくなったら絶対に、お前を連れて地球の海に帰るんだ…二人で!」と約束され、目を輝かせる姿が描かれますdatenoba.exblog.jp。病身の自分のために人殺しまで犯す兄を止めようとし、ドモンへのとどめを必死に制止しましたja.wikipedia.org。自らが兄の重荷になることを恐れ、一時は家を去りますが、それが逆にチコの覚悟を決める契機となりますja.wikipedia.org。最終的にドモンたちの計らいで兄と静かな余生を過ごせるようになり、号泣する彼女の姿は本話随一の感動シーンとなりました。*なお、漫画版『超級!機動武闘伝Gガンダム』ではジーナの病は医学の進歩でネオジャパンで治療可能という設定に改変されていますja.wikipedia.org。
- チボデー・クロケット – ネオアメリカ代表のガンダムファイター。過去のエピソードでドモンに敗れた彼ですが、本話で再登場し、チコを追う展開に関与します。ファイト放棄中のチコに闘いを挑むため現地に来ていましたが、チコに暗殺されかけてしまいja.wikipedia.org、結果として騒ぎを大きくする一因となりました。物語終盤では死亡扱いとなったチコの“名誉ある戦い”に立ち会いますja.wikipedia.org。自身は一切活躍できず、不完全燃焼のまま帰国する羽目になりますがdatenoba.exblog.jp、その悔しげな姿がかえってコミカルに描かれています(完全なアウェー気分でトボトボ帰るチボデーの様子はファンの笑いを誘いました)。なお、チボデーのサポートクルーであるバニーも本話に登場し、ドレス姿でドモンを尾行するなど脇役ながら存在感を放ちましたdatenoba.exblog.jp。
- ゴンザレス – ネオメキシコのガンダムファイト委員長。チコが戦わず逃亡したことを国家への反逆とみなし、彼を執拗に追っていましたja.wikipedia.org。チボデーとも協力してチコ逮捕を図りますが、ドモンとの戦いでチコが“戦死”すると、彼を「国のために名誉ある戦いをした英雄」と称え、幕引きを図りますja.wikipedia.org。愛国心ゆえに厳格だった彼も、結果的にはチコの最期を美談として処理しており、皮肉ながら温情ある判断を下しました。
- ストーカー(語り部) – 毎回お馴染みの謎の覆面語り部。本話冒頭でも宇宙コロニーから地球を見つめる幼いチコとジーナ兄妹の姿を背景に、「果たして二人は夢見る海へ辿り着けるのか…すべてはドモン・カッシュとの出会いが鍵を握っているようです…」といった趣旨の語りを披露しますdatenoba.exblog.jp。彼の芝居がかったナレーションが物語に臨場感を与え、視聴者の胸を高ぶらせました。
3. 登場モビルファイター
- シャイニングガンダム – ネオジャパン代表機。ドモンが搭乗する本作前半の主役ガンダムです。頭部の紋章とゴールドの手甲が特徴で、必殺技「シャイニングフィンガー」を有します。劇中ではチコのテキーラガンダムとの決闘に臨み、圧倒的な力の差で瞬く間に勝利しましたgundam.wiki.cre.jp。序盤から両腕を切断し、最後はシャイニングフィンガーで頭部を粉砕するという強烈なパフォーマンスで、チコを敗北に追い込んでいますgundam.wiki.cre.jp。エース機らしい貫禄で、本話の戦闘シーンを締めくくりました。
- テキーラガンダム – ネオメキシコ代表機g-gundam.net。GF13-049NM。名前はメキシコの蒸留酒「テキーラ」に由来し、海外向けには「スパイクガンダム」と改名されていますgundam.wiki.cre.jp。ソンブレロを被ったような頭部形状に、両腕と右肩がサボテンのような外観をしているユニークなデザインが特徴ですgundam.wiki.cre.jp。水中戦を得意としており、頭部のフィン(ファン)で渦巻きを発生させ敵機を水中に引きずり込む戦法を想定していますg-gundam.net。主武装はビームトライデント(三叉槍)で、左肩後部に2本マウントされた棒から三叉のビーム刃を発振しますgundam.wiki.cre.jp。さらに右肩のサボテン状アーマーから無数のニードル状ミサイルを放つサボテンニードルなど、見た目に反して多彩な武装を備えていましたgundam.wiki.cre.jp。しかしチコが戦いを避け隠れていたため、本来の実力を発揮する場はほとんどありませんでした。軍の水陸両用MSペスカトーレによる妨害を受けつつ出撃したものの、シャイニングガンダム相手には歯が立たず一瞬で大破していますgundam.wiki.cre.jp。なお、その後テキーラガンダムは頭部を破壊されたまま海中に放棄されましたgundam.wiki.cre.jp。
- ペスカトーレ – ネオメキシコ軍が保有する水陸両用モビルスーツ(型式番号P-143S)。スペイン語(イタリア語)で「漁師」という意味の名を持ち、テキーラガンダム捕獲のため出動しましたgundam.wiki.cre.jp。緑色の量産機で、物語中盤で海中から現れチコの脱走を阻もうとします。劇中では詳細な戦闘描写は少ないものの、名前通り“逃げたガンダムを釣り上げる”ような役割で登場しました。結果的にドモンとチコの決闘の引き立て役に留まりますが、そのユニークなネーミングセンスと存在はファンの記憶に残る隠れキャラと言えます。
4. 技・演出
シャイニングガンダムの必殺技 – ドモンの切り札「シャイニングフィンガー」は本話でも健在です。敵機を掴んだ右手から黄金のエネルギーを放出し、「この手が光って唸る!お前を倒せと輝き叫ぶ!」の決めゼリフと共に相手の頭部を粉砕する必殺技gundam.wiki.cre.jp。テキーラガンダム戦では、まさにこの技が決め手となり、一撃で勝敗が決しました。開始から十数秒足らずで勝負をつける様子は痛快であり、序盤の苦戦(毒矢による不意打ち)を払拭する爽快なシーンとなっています。
テキーラガンダムの戦法 – 本来チコが使うはずだった秘技として、頭部フィンから発生させる渦で敵を拘束する**「テキーラ・ボルテックス」**が設定されていますgundam.wiki.cre.jp。水中戦を想定した戦法で、水中に引きずり込んでからトドメを刺すという独自のスタイルを持ちますg-gundam.net。しかし劇中ではチコが徹底的に逃亡を図っていたため、この戦法が存分に披露されることはありませんでした。決闘の場面でも渦巻きを起こす間もなく瞬殺されてしまい、ある意味“幻の必殺技”となっています。逆に言えば、ドモンの実力がいかに図抜けていたかを示す演出でもありました。
演出面の見どころ – 第7話はシリーズ序盤の単発回ながら、ドラマ性が非常に強いエピソードです。特筆すべきは冒頭と中盤に挟まれる回想シーンと語りの演出でしょう。冒頭では宇宙コロニーの窓から青く輝く地球を眺める幼いチコとジーナが描かれ、モノローグ風のナレーションが重なりますdatenoba.exblog.jp。未来世紀という世界観の中で、故郷を捨てた者たちの郷愁と希望を象徴する美しい場面です。「海は強い生命力がある」「君たちが大きくなる頃には元の豊かな海に戻っている」という老人と子供の会話も印象的で、荒廃した地球環境に一筋の希望を示していますdatenoba.exblog.jp。しかしその希望が叶わぬまま理不尽に引き裂かれる運命――という対比が、その後の兄妹の悲劇に繋がっていきます。
また、チコとドモンが崖から飛び降りてガンダムに乗り込むシーンは迫力満点です。ネオメキシコの断崖からそれぞれの機体へダイブするカットは、本作ならではのダイナミックな演出と言えます。実はこの描写、メキシコ・アカプルコの名物「ラ・ケブラダの崖飛び込みショー」のオマージュではないかと指摘されていますkeikei0079.com。夕陽を背に崖下の海へ飛び降りるパフォーマンスは実在の観光名所で有名ですが、劇中でのドモンとチコのジャンプもまさにその雰囲気。製作スタッフがメキシコの観光地のイメージを凝縮して舞台を描いたことが推測され、細部に遊び心が感じられますkeikei0079.comkeikei0079.com。
細かな演出の工夫 – 本話ではモブキャラの芝居やカメラワークにも注目です。ドモンが市場で聞き込みをする場面では、地元民たちが余所者に関わりたがらず素っ気なく振る舞う描写がありますdatenoba.exblog.jp。ネオメキシコは人の出入りに厳しく、巻き込まれたくない空気感がひしひしと伝わり、舞台背景の治安や雰囲気を巧みに表現していますdatenoba.exblog.jp。また、チコがドモンを不意打ちする際、観光客に紛れて背後から忍び寄るカット割りはスリリングで、「いつ誰が襲ってくるか分からない」という緊張感が演出されていました。ドモンが毒に倒れた後、意識朦朧とする主観視点でチコに引きずられていくシーンも挿入され、視聴者も主人公と共に拉致される感覚を味わえます。こうした細部の演出が物語の没入感を高め、ただのロボット格闘アニメに留まらないヒューマンドラマとしての魅力を引き立てています。
5. 名シーン・名セリフ
- 子供の約束と美しい地球:宇宙コロニーに暮らす幼い兄妹(チコとジーナ)が、窓越しに美しい地球を眺める冒頭シーンは涙腺を刺激する名場面です。ギターを爪弾く老漁師が「ちょうど今見えてきた辺りが、じいちゃん達が暮らしていたネオメキシコの海だよ」と優しく語りかけ、少年チコが「行ってみたいなぁ…僕、決めた!大きくなったら爺ちゃんみたいに漁師になるんだ!ジーナ、お前も連れて行ってやるよ」と宣言します。ジーナが「本当?本当に連れて行ってくれる?」と訊ね、チコが力強く「兄ちゃんに任せとけ!大きくなったら絶対に、お前を連れて地球の海に帰るんだ…二人で!」と約束するのですdatenoba.exblog.jp。無邪気な笑顔で「うん!」と頷くジーナ。しかし直後に語り部のナレーションが入ることで、この約束が簡単には果たされない運命を示唆します。**「海は死んじゃいないさ。お前達が大きくなる頃にはきっと元に戻る」**という老人の言葉とともに広がる碧い地球の映像は、ファンの間でも屈指の名シーンとして語り継がれています。
- ドモンの叱咤「立ち向かわなくてどうする!」:クライマックス直前、チコが軍に囲まれ逃げ場を失った際、ドモンが投げかけた言葉が胸を打ちます。ジーナを人質に取られ、自暴自棄になりかけたチコに対し、ドモンは激昂して叫びます。「運命をそのまま受け入れるつもりか!立ち向かわなくてどうする!」keikei0079.com。逃げ続けてきたチコに真正面からぶつけられたこのセリフは、本作全体のテーマとも言える「どんな苦境でも戦い抜け」というメッセージを端的に示しています。普段は寡黙なドモンが熱く語る珍しいシーンでもあり、多くのファンの心に刻まれた名セリフです。これを聞いたチコの表情が決意に変わっていく演出も相まって、思わず拳を握り締めて応援したくなる瞬間でした。
- 「お前にガンダムファイトを申し入れる!」:チコが覚悟を決め、ドモンとの決闘を受け入れる場面も印象深いです。毒に冒されながらも立ち上がったドモンが「俺はネオジャパンのガンダムファイター、ドモン・カッシュだ!」と名乗り、「チコ・ロドリゲス!お前にガンダムファイト申し入れる!」と宣言するシーンdatenoba.exblog.jp。普通なら挑戦を叩きつける決まり文句ですが、この時ばかりは命懸けで兄妹を守ろうとするチコへのエールのようにも聞こえます。チコは「その必要は無い!」と一度は拒絶するものの、直後に妹のため戦う決意を固めますdatenoba.exblog.jp。倒れる寸前のドモンが気力で絞り出すように言い放つこのセリフは、シリーズ序盤の名場面としてファンの間で語り草です。
- 「男達は勝手すぎる!!!」:エピローグで、芝居とはいえチコを死んだことにして事態を収めたドモンとチコに対し、レインが怒りを露わにするコミカルなシーンです。公式にはチコ戦死の扱いとなり、町では「英雄チコ」の葬送ムード。チコ本人は生き延びて妹と去っていくという結末に、レインは安堵しつつも複雑な心境を爆発させます。「…男達は勝手過ぎる!!!」と憤る彼女の叫びdatenoba.exblog.jpは、劇中唯一の女性レギュラーとしての率直な感情と言えます。ドモンたち男性陣の身勝手な茶番を叱りつけるようでいて、最終的には何も言わずジーナのもとを去るレインの優しさも滲む名シーンでした。この直後、チコの生存を知らないジーナが泣き崩れる姿を背景に流れるBGMが涙を誘い、視聴者の心に余韻を残します。
- その他の印象的な場面:チコが道端の露店でギターを爺さんに見せて陽動しつつ、背後からドモンに毒針を撃ち込むシーンの緊張感も秀逸でした。白昼堂々、大通りでドモンを拉致しようとする大胆不敵さにハラハラさせられます。また、追いつめられたチコが妹を守ろうと「妹に免じて命だけは助けてやる、俺達の前から消えろ!」とドモンを威嚇する場面datenoba.exblog.jp、それに対しドモンが「ダメだ!潔く勝負しろ!」と真正面から返す応酬datenoba.exblog.jpなど、二人の意地と意地がぶつかるやり取りも見応えがありました。短い中にも緩急の効いたドラマが凝縮されており、第7話は名シーンの宝庫と言えるでしょう。
6. 裏話・制作トリビア
- OP映像の完成:本話オンエア回より、オープニングアニメーションがついに完成版に差し替えられましたdatenoba.exblog.jp。実は第1話放送時点では制作スケジュールの問題でOP映像が途中までしか作り込まれておらず、簡易版でお茶を濁していた経緯があります(前番組『Vガンダム』終了から準備期間が極端に短かったためとも言われます)。それが第7話でようやく正式なOPに差し替わり、映像もパワーアップ。datenoba.exblog.jpチボデーやサイ・サイシー、ジョルジュ、アルゴらライバルたちも次々と登場し、後々登場する“まだ見ぬ強豪”たち(球体状のガンダム、鳥型ガンダム、象のようなガンダム、白馬に乗った漆黒のガンダムetc.)の姿も描かれる賑やかな映像になりましたdatenoba.exblog.jp。当時リアルタイムで視聴していたファンにとっては「あの黒いガンダムは何者だ?!」とワクワクが止まらない演出で、シリーズの盛り上がりを感じさせるターニングポイントでした。
- 制作体制と演出の工夫:総監督の今川泰宏氏は本作の制作当時について「常に急ぎ足の進行で、細部まで練り込む余裕がなかった」と回想していますg-gundam.net。しかしその制約の中でもスタッフは工夫を凝らし、本話のようにドラマ性に富んだ物語を作り上げました。脚本は桶谷顕氏、絵コンテは河本昇悟氏、演出は西村誠芳氏という布陣ja.wikipedia.org。セリフ回し一つにしても、「ジーナのためなら手段を選ばないチコ」と「己の信念を曲げないドモン」という対比が際立つよう丁寧に練られています。また、作画面でもジーナの儚げな表情やチコの憔悴した顔つきなど細かな表現が光り、ドラマを支えました。戦闘シーン自体は短いものの、そのぶんキャラクターの内面描写に力点を置いた演出となっており、シリーズ構成上のメリハリが効いています。
- 国別ガンダムのネーミング:本作ならではのトリビアとして、各国のガンダムの個性的すぎるネーミングがよく話題に上ります。ネオメキシコのテキーラガンダムもその一つで、名前の由来はテキーラ酒から取られていますgundam.wiki.cre.jp。放送当時はあまり深刻に捉えられませんでしたが、酒の名前を冠したロボットというのはなかなか攻めたネーミングです(子供向けアニメで「テキーラ」は大丈夫なのかとツッコまれたりもしました)。案の定、米国など海外展開の際には**「スパイクガンダム」**と改名されており(スパイク=サボテンの棘の意)gundam.wiki.cre.jp、ローカライズの苦労がうかがえます。他にもネオネパール代表のマンダラガンダム(宗教画のマンダラ由来)やネオスペイン代表マタドールガンダム(闘牛士由来)など、各国のステレオタイプをこれでもかと取り入れた機体名が登場します。90年代という時代背景もあり、現在であれば物議を醸しそうなデザインや名前も多々ありますが、それも含めて本作の “おおらかさ” と言えるでしょう。当時の制作スタッフの遊び心と勢いが感じられるトリビアとして、ファンに愛されています。
- 漫画版での改変:本話のエピソードは漫画版(島本和彦監修・今川監督協力のコミックボンボン連載『超級!機動武闘伝Gガンダム』)において大きくアレンジされています。漫画版ではチコが正式にチボデー・クロケットとガンダムファイトで激突し、互角に近い善戦を繰り広げましたja.wikipedia.org。戦いを通じてチコの“海を愛する心”に心打たれたネオメキシコ政府は、彼の罪を不問に付すという展開になりますja.wikipedia.org。さらにジーナの病気もテレビ版とは異なり、ネオジャパンの最新医療で治療可能と設定されましたja.wikipedia.org。つまりジーナは助かり、チコも罪を許されて晴れて自由の身になるという、アニメ本編より救いの多い結末になっています。この改変については、当時の漫画連載が主に子供読者向けだったこともあり、後味の良いハッピーエンドにしたのではないかと考えられます。いずれにせよ、同じ物語でも媒体によって展開が異なるのは興味深いポイントであり、ファンとしては両方をチェックして比較する楽しみがあります。
- その他の小ネタ:ネオメキシコの軍用MS「ペスカトーレ」の名前は前述の通りスペイン語で漁師ですが、実はイタリア料理のペスカトーレ(漁師風パスタ)にも掛けた洒落との説があります(メキシコなのになぜイタリア語?というツッコミ所も一部で話題に…gundam.wiki.cre.jp)。また、劇中チコが弾いていたギターはビウエラと呼ばれるメキシコの伝統楽器風のデザインが取り入れられており、芸が細かいです。さらに、序盤の市場シーンでドモンが掲げていたキョウジの写真に写る風景はネオホンコンの街並みで、第1話に登場した場所と一致しています(細かな使い回しですがスタッフの遊び心でしょう)。こうした小ネタ探しも含め、第7話は細部まで作り込まれていることが伺えます。
7. 解説・考察
ネオメキシコの舞台設定 – 本作の世界では、人類はスペースコロニーに移住し、一部の人々(貧困層など)が荒廃した地球に取り残されたという背景がありますg-gundam.net。ネオメキシコもその一つで、劇中では「魚も全然獲れなくなった」「海は死んでいないが今は荒れてしまった」と語られておりdatenoba.exblog.jp、地球環境の悪化が示唆されています。にもかかわらず、コロニー育ちのチコとジーナにとって地球の海は憧れの象徴でした。これは皮肉にも、宇宙に逃れた人類が地球の自然の尊さに渇望していることを表しています。ネオメキシコの描写にはリゾートホテルが立ち並ぶ海岸都市や、乾いた荒野といった相反するイメージが入り混じっておりkeikei0079.com、豊かな観光地と荒廃した漁村のコントラストが感じ取れます。また、治安の悪さを示すように多数の武装警官が登場し(これも現実のメキシコのイメージを反映しているのでしょう)、コロニーの平和さとは対照的な地球の日常が垣間見えますkeikei0079.com。こうした舞台設定は、一見痛快な格闘アニメの中に社会風刺を忍ばせており、視聴当時は気づかなくても大人になって見返すと唸らされる部分です。
逃亡者チコの心情 – ガンダムファイターでありながら戦わず、国家の威信より妹の命を優先して逃げ続けたチコの心情は、本作の他の登場人物と一線を画します。多くのファイター達がそれぞれの夢や大義を胸に戦っているのに対し、チコは「妹と静かに余生を送りたい」という極めて私的な動機で行動しています。彼にとってガンダムファイトは目的ではなく、地球に降りるための手段でしかありませんでしたdatenoba.exblog.jp。そのため、ファイトそのものには全く執着がなく、むしろ妹を危険に晒す厄介事として忌避しています。この点、「国家の威信のためではなく個人の意思で戦っている」という本作のファイターたちの特徴をさらに極端にした存在と言えますblog.goo.ne.jp。チコは妹の命を第一に考えるあまり、殺人すら辞さない非情さを身につけてしまいましたja.wikipedia.org。しかしそれは本来の彼の望む姿ではなく、内心では後ろめたさや葛藤もあったはずです。ジーナに止められた際にハッと理性を取り戻す描写ja.wikipedia.orgや、ドモンに説得される中で徐々に表情が軟化していく様子から、チコの内面の揺れ動きが読み取れます。彼は決して卑劣な悪人ではなく、愛する者のために道を違えてしまった “悲劇の青年” なのです。ラストでドモンに「避けては通れない道だ。チコもガンダムファイターならわかっているはずだ」と言われた時、チコが静かに頷いて決闘に赴く姿には、彼なりのけじめを感じましたdatenoba.exblog.jpdatenoba.exblog.jp。命を賭してでも妹との未来を守ろうとしたチコの選択と、その胸中に去来した覚悟と諦念…彼の心情を思うと非常に切なく、深い余韻を残します。
他のファイターとの差異 – チコのエピソードは、第1〜6話までに登場した他国代表たちとの対比が際立っています。ドモンと対戦した主要ファイター(チボデー、サイ・サイシー、ジョルジュ、アルゴ)はいずれも国家や家族の名誉、自身の夢の実現など明確な目標を持って戦いに臨んでいました。しかしチコには国家への忠誠も名誉欲もなく、純粋に身内のためだけに戦う(あるいは戦わない)というスタンスを取っています。この点で最も近いのは実はドモン自身でしょう。ドモンもまた表向きはネオジャパンのために戦っていますが、その実態は父の救出と兄への復讐という私情が大きな原動力ですg-gundam.net。ガンダムファイトという大舞台を利用して自分の目的を果たそうとしている意味で、チコとドモンは似た者同士とも言えます。ただ、ドモンはその目的のため真正面から戦い抜く 「王道」 を選び、チコは戦いそのものを避ける 「邪道」 に走ったという対照があります。さらにチコの場合、自国に追われる立場になってしまった点で特殊です。ネオロシア代表のアルゴ・ガルスキーも囚人という立場で監視下に置かれていましたが、彼は祖国のために戦わないわけではありません(不服従の姿勢は見せつつも、試合を放棄したりはしない)。チコは公然と試合放棄し国家権力から逃亡している点で、他のどのファイターとも異質でした。この異端のファイターがドモンと出会い、最後にはリングに戻ってきたことは物語上重要な意味があります。すなわち、ガンダムファイトとは単なる国威発揚のイベントではなく、戦士たち個人の生き様を懸けたドラマなのだということ。本話を通じて視聴者は改めてそれを感じ取ることになります。結果としてチコは公式には「戦死」という形で大会を去りましたが、皮肉にもその“死”が彼を英雄に祭り上げましたja.wikipedia.org。彼は望まずして国家の威信の捨て石にされたとも言えますが、真実を知るドモンたちと視聴者には、チコの選択と生き様が強く心に刻まれています。
チボデーとの関係性 – 今回チコを巡ってはチボデー・クロケットも物語に絡みました。チボデーは以前ドモンに敗れた悔しさも新たに、今度はチコを倒してポイントを稼ごうと意気込んでいたのでしょう。しかし皮肉にも、チコは戦いから逃げていたために直接対決の機会すら得られませんでした。むしろチコに暗殺されかけるという不名誉な結果に終わりja.wikipedia.org、彼にとっては踏んだり蹴ったりです。チボデーから見れば、チコはガンダムファイター失格の卑怯者でしょう。実際、「ファイトせず他のファイターを消しまくる作戦はネオロシアのやり方(アルゴの囚人設定)に近いが、ネオメキシコはプライドが高いから許可しないだろう」などと劇中で語られておりblog.livedoor.jp、チコの行為は大会ルール的にもアウトでした。ただ、一方でチボデーは拳ひとつで夢を掴んだ叩き上げの闘士であり、国家の威信云々より自分の栄光のため戦う人物です。そういう意味ではチコの自分本位さにもある程度理解を示す可能性はあります。実際、終盤でチコの“死”が発表された際、チボデーは勝敗に一切絡めず疎外感を味わっていますがdatenoba.exblog.jp、彼がチコに対しどんな感情を抱いたのかは描かれません。しかし、ガンダム連合として再登場したチコとチボデーが最終決戦で肩を並べるシーンを想像すると胸が熱くなります。互いに一度は命を狙った間柄が、デビルガンダム打倒という共通の目的で共闘する……本編で詳細は描かれませんでしたが、水面下でチボデーがチコを赦し和解したからこその共闘だったのかもしれません。このように、本話での絡み自体は僅かでも、シリーズ全体を通したキャラクター関係に奥行きを与えている点も見逃せません。
8. 筆者コメント(あとがき)
第7話「来るなら来い!必死の逃亡者」は、子供の頃に視聴した当時と大人になってからの印象が大きく変わったエピソードの一つです。幼い頃は「テキーラガンダム弱っ!シャイニングガンダムつえー!」と単純にドモン無双を楽しんでいました。しかし歳を重ねてから見返すと、チコとジーナ兄妹の切ないドラマに胸が締め付けられ、全く別物のように感じられました。特に冒頭の宇宙から地球を見つめるシーンで既に涙腺が危なくなり、ドモンがチコに「運命に立ち向かえ!」と叱咤する場面では思わず「頑張れ!」と声が出そうになりました。
本話はガンダムファイトという派手な設定の裏で、人知れず繰り広げられる小さな人間ドラマにスポットを当てています。優勝すればコロニーの主導権が得られるという巨大な舞台からドロップアウトし、愛する妹のためだけに命を燃やした一人の青年の物語。それをドモンというもう一人の熱い男が救う展開は、王道でありながらも心に響くものがありました。ドモンもまた家族のために戦っている身ですから、チコに自分を重ねる部分もあったのではないでしょうか。だからこそ彼を見捨てず、最後まで助けようと奔走したのだと思います。結果としてチコは“死んだこと”になりましたが、彼にとってはジーナと穏やかに過ごせるなら本望でしょう。エンディングで小舟に乗って旅立つ兄妹の姿を想像すると、寂しさの中にも一筋の救いが感じられてホッとしました。
演出的にも、今回は戦闘シーンよりドラマ部分がメインでしたが、筆者としては大満足です。メカアクションは短時間ながらキレが良く、その分チコの逃亡劇や心理描写に尺を割いた構成が素晴らしかったです。あえて苦言を呈するなら、チコがなぜガンダムファイトに参加しないと地球に来られなかったのか(普通に旅行などできない世界なのか)の説明が弱かった点でしょうかbongore-asterisk.hatenablog.jp。しかしそれを補って余りある熱い展開とキャラクター描写があったので、個人的には気になりませんでした。
懐かしさという点では、テキーラガンダムのぶっ飛んだデザインにも触れないわけにはいきません。当時リアルタイムで見ていて「サボテン腕にソンブレロって…」と衝撃を受けた記憶があります。ガンダム=かっこいいロボットという固定観念を良い意味で壊してくれた機体であり、未だプラモデル化されていないのが惜しまれる人気機種(?)です。ネット上では度々ネタにされますが、筆者はその愛嬌ある姿が結構お気に入りです。ぜひいつか公式HG化してほしい…などと思いつつ、今回の考察記事を締めくくろうと思います。
9. 次回予告
〈皆さんお待ちかねっ!ネオカナダのファイター、アンドリュー・グラハムとの戦いで、ドモンはレインを人質に取られてしまいます。彼女を救い出すためロッキー山脈へ向かうドモン!しかし、その前にアルゴのボルトガンダムが立ちはだかるのです!〉datenoba.exblog.jp
次回、第8話「仇は討つ!復讐の宇宙刑事」では、宇宙刑事ことネオカナダ代表グラハムの復讐劇が幕を開けます。ロッキー山脈を舞台に、レイン救出に燃えるドモンと、因縁深きネオロシア代表アルゴ・ガルスキーのボルトガンダムとの三つ巴の戦い!果たしてドモンは仲間を救い出せるのか? そして明かされるグラハムとアルゴの過去とは――
*〈機動武闘伝Gガンダム!「仇は討つ!復讐の宇宙刑事」*に、レディー・ゴーッ!!〉datenoba.exblog.jp(お楽しみに!)
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